2016年のミッシェル・テーメル政権時代に憲法改正の形で成立した歳出上限法では、「政府や各省庁の予算は、基本的に前年度の予算にインフレ率をかけた以上の拡大はできない」と定められている。
しかし2020年度の連邦予算基本法では、歳出上限法の活用で国庫庁の歳入増加並びに公共負債削減で2,026億レアルまでの義務的歳出となっているにも拘らず、義務的歳出総額は2,662億レアルに達する可能性があり、早急な義務的歳出の緩和政策導入が検討されている。
来年の義務的歳出予想総額2,662億レアルは、連邦政府のブラジル国内の貧困層対策の「ボルサファミリア」の予算である300億レアルの9倍に達する可能性が指摘されている。
来年度の連邦予算基本法では義務的歳出が予算全体の93%を占めるために、公共投資や補助金などの裁量的歳出総額は、359億レアルに留まると予想されている。
2016年の連邦公務員への給与支払や社会的費用などの総額は、2,578億7,000万レアルで全体の20.6%を占めていたが、2020年には全体の22.8%に相当する3,366億2,000万レアルと787億5,000万レアル増加が予想されている。
ロドリゴ・マイア下院議長は、各省庁の危機的な財政状況でシャットダウンを避けるためには、最高裁判所(STF)が禁じている新規採用の連邦公務員の解雇や勤務時間短縮やサラリーカットなどの導入を示唆している。
また2016年の社会保障院(INSS)の年金・恩給、障害年金などの支出は全体の40.7%に相当する5,079億レアルであったが、2020年には全体の46.1%に相当する6,827億レアルに達すると見込まれており、国会での早急な年金改革採決が不可欠となっている。
また最低サラリー以上の年金・恩給支払い調整はインフレ指数連動、サラリーボーナス並びに失業保険、勤労不可能な高齢者および障害者に対する最低賃金額を支給する継続扶助(Benefício de Prestação Continuada–BPC)などのインフレ指数連動で調整されている。
インフレ指数連動型支出比率は、連邦政府の財政プライマリー支出の67.7%に達するが、特に年金・恩給支出比率は44.7%で圧倒的な比率を占めて連邦政府の赤字拡大を牽引している。
パウロ・ゲーデス経済相は来年の予算編成に向けて義務的歳出削減を目指している一方で、歳出削減のためにはインフレ指数連動型支出に替わる調整方法の導入が必要となっている。
2020年の最低サラリーは今年の998レアルから1,039レアルに上昇、しかし今年と同じ最低サラリーに据置けば350億レアル~370億レアルの歳出削減に結び付く。(2019年9月17日付けエスタード紙)