今日24日からボルソナロ大統領一行は北京詣を開始するが、ボルソナロ大統領は、今年3月に米国訪問時のトランプ大統領のリップサービスよりもブラジルにとって経済的に大きな成果を期待している。
昨年の大統領選挙キャンペーン中のボルソナロ候補は、「中国はブラジル国内の企業買収ではなく、中国はブラジルを買っている」と中国企業による基幹産業部門買収を警戒していた経緯があった。
しかしボルソナロ大統領は、大統領就任後に一転して中国企業に対して投資歓迎を謳っており、今年10 月の中国への公式訪問を前に、各州知事は既に先を争って中国企業の誘致合戦を展開している。
今年3月下旬に訪米中のジャイール・ボルソナロ大統領は、ワシントンのホワイトハウスで米国のドナルド・トランプ大統領と会談、トランプ大統領は、ブラジルの経済協力開発機構(OECD)への加盟の支持を表明した一方で、世界貿易機関(WTO)の協定違反に相当するブラジル製の自動車や電子機器を優遇するブラジルの優遇税制撤廃を要請していた。
「ブラジルのOECD加盟プロセスは至って正常であり、米国政府は正式にブラジルのOECD加盟に対する支持の表明したことはない」と説明している一方で、ボルソナロ大統領は、「ブラジル政府は米国政府の支持取り付けた」とトランプ大統領との親密な人間関係で、米国による正式なブラジルのOECD加盟支持を得たと取り違えた可能性があった。
今年7月末にドナルド・トランプ大統領は、米国はブラジルとの二国間貿易協定締結を目指して交渉を開始すると表明、6月末にメルコスールとヨーロッパ連合(EU)のFTA交渉が政治合意に達していた。ブラジルと米国との二国間貿易協定締結には障害の可能性に繋がるメルコスールを通したFTA協定締結は避けられないとトロイジョ経済省通商国際問題特別局長は説明していた。
しかし米国とブラジルとの二国間貿易協定開始は、トランプ大統領が再選に意欲を示している2020年の米国の大統領選挙前の可能性はないと見込まれており、また米国のブラジルのOECD加盟の支持表明も先送りされている。
米中貿易摩擦の影響で昨年のブラジルから中国への大豆輸出は20%増加、また今年7月に中国政府はブラジルの酪農製品輸出を許可、今回の北京詣もブラジルの牛肉輸出の拡大が期待されている。
今回のボルソナロ大統領の北京訪問は、過去数年間に亘って中国からの直接投資が停滞しているために、インフラ整備部門を含めた中国企業によるグリーンフィールド投資を含めた投資の再活性化に期待している。
2005年~2018年の中国企業によるブラジルへの投資は、米国並びにオーストラリア、英国、スイスに次いで5位、ドイツやカナダよりも多い投資がされていたとChina Global Investment Tracker社は指摘している。
中国資本のブラジル国内の電力エネルギー部門投資は、2017年まで驚異的な投資を進めていたが、2018年の中国企業によるブラジルへの投資は、不透明な大統領選挙並びにブラジル国内の経済停滞、中国資本による世界の直接投資は20%と大幅に減少の影響で縮小していた。
中国企業は、2005年から電力エネルギー部門を中心にブラジル国内の基幹産業部門に対して、ハイリスク・ハイリターンにも関わらず、積極的に企業買収などで総額570億ドルに達する投資を継続している。
しかし2005年以降の中国企業による投資をする際に法人を新しく設立して、設備や従業員の確保、チャネルの構築や顧客の確保を一から行うグリーンフィールド投資は、投資総額全体の僅か10%に相当する57億ドル前後に留まっている。
世界最大級の電力エネルギー会社の中国資本State Grid Corp of China社は、海外投資の50%相当をブラジル国内に投資、CPFL Energia社には520億レアルを投資している。
また中国の民間最大の電力エネルギー企業となっているChina Three Gorges(CTG)社は、世界投資の18%に相当する投資をブラジル国内の電力エネルギー部門に投資している。
2003年~2019年上半期までの米国のブラジルへの投資は、全体の33%に相当する816億ドルとトップを維持している一方で、中国企業のブラジルへの投資は32%に相当する797億ドルと米国企業と拮抗するほどの投資を行っている。(2019年10月24日付けエスタード紙)