ブラジル中央銀行は、2016年10月から14.25%であった政策誘導金利(Selic)を逐次切り下げてきており、今では5.5%まで低下、また今日開催される中銀の通貨政策委員会(Copom)でも0.5%切下げて5.0%になると予想されている。
2016年から政策誘導金利(Selic)は8.75%も切り下げられているが、この期間の9種類の個人向けクレジットの内6種類の金利は、8.75%切り下げられたSelic金利以上切り下げられている。
Selicの8.75%以上の金利切り下げられたクレジットとして、一般消費者は突発的な支出を余儀なくされる場合に使用される金利が天文学的な特別小切手税と呼ばれる口座借越残金利並びに一般消費者向けの給与口座連動型でないクレジット金利がSelic以上に引き下げられている。
また公務員向け給与口座連動型クレジット金利並びに一般消費者向け給与口座連動型クレジット金利、自動車以外の耐久消費財購入向けクレジット金利、運転資金向けクレジットカード金利がSelic金利以上に引き下げられている。
しかし年金・恩給口座連動型クレジット金利並びに自動車購入向けクレジット金利は、8.75%引き下げられたSelic金利を下回る下げ幅に留まった。また分割返済のクレジットカード借越残金利は逆に上昇している。
2016年~2019年の特別小切手金利は22.8%減少の208.1%、前記同様に運転資金向けクレジット金利は175.6%減少の345.4%、一方分割返済のクレジットカード借越残金利は22.4%増加の195.1%を記録している。
また一般消費者向けの給与口座連動型でないクレジット金利は17.4%減少の212.6%、公務員向け給与口座連動型クレジット金利は8.4%減少の25.7%、年金・恩給口座連動型クレジット金利は7.1%減少の24.3%、一般消費者向け給与口座連動型クレジット金利は9.0%減少の38.2%、自動車購入向けクレジット金利は、5.2%減少の22.7%、自動車以外の耐久消費財購入向けクレジット金利は22.0%減少の55.2%となっている。
Selic金利低下に伴って商業銀行は、貸出資金調達向け金利低下で銀行金利は切下げ可能となる一方で、債権回収が不能になった場合に備え、各期の利益から債権の額に応じて積み立てておく貸倒引当金や債権回収不能に陥るクレジットの延滞などスプレッド金利に繋がるコストがなかなか下がらないとブラジル銀行協会連盟(Febraban )チーフエコノミストのルーべンス・サンデンベルグ氏は指摘している。
また商業銀行では、これらのスプレッド金利に繋がる要因以外にもアドミニストレーションコスト、中銀向け強制預託金、純益に対する課税、支店の窓口業務や現金自動預け払い機(ATM)の維持費なども銀行金利の引下を阻害する要因となっている。
中銀ではクレジットコスト削減のために、強制預託金の規制簡素化、全てのクレジットカード使用可能な現金自動預け払い機(ATM)の統一化、小売業者に対する現金払い並びに分割払い、クレジットカードや一般的に特別小切手税と呼ばれる口座借越残クレジット向け金利自由化などを継続して検討している。
Insper社ファイナンス・ラボラトリーのMichael Viriato氏コーディネーターは、ブラジルの商業銀行の金利は非常に高く、金利低下を加速するためには「オープンバンキング」が不可欠と指摘している。
アマゾンやグーグルといったグローバル・プラットフォーム企業が、次々と金融サービス事業に参入し始め、既存の金融機関にとって新たな競合相手となりつつある。
競争環境の変化に直面している伝統的金融業の商業銀行では、オープンA P I( Application Programing Interface)の実装を進め、画期的な金融サービスを提供する第三者企業と連携して「オープンバンキング」での活路を余儀なくされている。
オープンバンキング時代に金融機関に求められるのは、自社の持つ機能やデータを基にした魅力あるプラットフォームの構築を目指し、サードパーティーとともに顧客に対して、付加価値の高いサービス・商品を生み出すエコシステムを形成していくことであり、顧客にとっても更なる銀行金利の低下に繋がる。(2019年10月30日付けヴァロール紙)