国内に製造拠点を持つ複数の自動車メーカーが、3月末に工場を閉鎖すると発表した。一時的に製造ラインを休止するものながら、国内における新型コロナウイルス(COVID-19)の流行状況と市場の需要に左右されるため、再開時期の見通しは立っていない。集団休暇を発表済みの自動車メーカー3社は、合わせておよそ5万人の従業員を抱える。
ゼネラルモーターズ(GM)の場合、サンパウロ州とリオ・グランデ・ド・スル州、サンタ・カタリーナ州にある国内5か所の工場が再開時期を未定のまま生産を停止、2020年から2024年にかけて100億レアルを想定していた投資も棚上げした。同社によると、COVID-19の感染拡大で生じた現在のような危機的状況に対処するため、現金預金を確保する必要があるためという。
またアルゼンチンのGM子会社も同様に工場を閉鎖する。3月30日から集団休暇を実施するブラジル国内の工場と合わせて、対象となる従業員は1万9,000人である。同社はこの集団休暇は市場の需要が原因だとしているが、同グループで最も長い歴史を持つ工場があるサンパウロ州サン・カエターノ・ド・スル市の金属労組によると、この集団休暇の主な理由は新型コロナウイルスの流行である。
メルセデス・ベンツも、サンパウロ州とミナス・ジェライス州に保有する工場と、サンパウロ州カンピーナス市の流通・物流センターの営業を停止する。この停止措置は当面、3月25日から4月20日を予定し、対象となる従業員はおよそ1万人である。
今回の措置について同社は、新型コロナウイルスの予防で必要な措置だとしており、稼働の再開は国内の状況次第だとしている。また3月16日には、フォルクスワーゲン(VW)がわずか10日間であるが、3月31日からサンパウロ州とパラナ州にある4か所の工場を対象に操業を停止すると発表した。同社の場合、ブラジル国内でおよそ1万5,000人を雇用している。
一部では解雇の動き
他の自動車メーカーも、今後数日内に工場の閉鎖を発表する見通しだ。一方で、CAOAチェリー・グループはエンジン生産事業を終了するとともに3月18日にサンパウロ州ジャカレイー工場で雇用していた59人を解雇した。この人数は、同工場の従業員の10%に相当する。
サン・ジョゼ・ドス・カンポス市金属労組のギラー・ボルバ理事によると、同社はこの措置の理由について製造台数が日産65台から40台に減少したためだと主張している。「新型コロナウイルスが急速に蔓延する状況下で、同社の説明には理論的根拠がない。同社は、雇用関係が失われれば民間の健康保険の適用もなくなる労働者を保護すべきだ」と同理事はCAOAチェリーの判断を非難した。これに対して同社は、コメントを避けた。
税制優遇措置
GMが凍結した100億レアルの投資は、コストを削減して黒字化できなければ同グループが工場を閉鎖すると2019年に同社のカルロス・ザーレンガ南米担当社長が表明して以降、従業員とディーラー、サプライヤー、リセラーらと長い交渉を経て妥結した後に発表されたものである。一連の騒動では、サンパウロ州政府が同州内に投資する企業を対象にした減税策を発表する事態に発展した。GMによるとこの投資は、主に新製品と工場の近代化を対象にしたもので、今後、具体的な期間については白紙のまま見直しが進められる。
今回の発表は、同社としては国内製造となる初のSUVであるトラッカー(Trucker)を公式に発表したのと同じ日に行われた。トラッカーは、8万2,000レアルから11万2,000レアルで販売される。マスコミとディーラー関係者、労働者らゲストの混雑を避けるためのストリーミング配信となった同モデルの紹介に際してザーレンガ社長は、このモデルを小型SUVセグメントのトップセラーに引き上げることを希望していると発言した。
同社は生産ラインの一時停止は市場の需要が原因だと主張しているが、工場のあるサン・カエターノ・ド・スル市金属労組のアパレシード・イナシオ・ダ・シルバ委員長は、新型コロナウイルスの国内感染が拡大して社会が混乱していることが製造ラインの停止に関係しているという考えを示した。
同委員長によると、例えばABCパウリスタ地区の工場はトラッカーを製造するため、今後2週にわたり土曜日に従業員が時間外労働で対応する必要があるという。シルバ委員長はさらに、労働者が同社から受け取った情報に基づくと、製造ラインの停止は4月12日まで続く。ただし、状況によっては「この措置が中止、あるいは延長されることになるという。(2020年3月19日付けエスタード紙)