自殺行為につながりかねない経済分野のCOVID-19対策(2020年4月3日付けバロール紙)

 対策は、オーバードーズで毒にならないよう、薬効が得られるように慎重に定義すべきである。 またその努力は、経済を止めるのではなく促進する方向に振り向けなければならない。会社の現金預金の急激な減少という状況に対し、対策は、一連の議論が訴訟に発展するのを避けるために信用供与を緩和し支払いを迅速化させることを含め、現金預金を再構築させるものであるべきだ。

 民事再生の可能性を拡大したり、差し止め命令による契約内容の修正を求める訴訟のハードルを引き下げたり、支払いを停止させるような他の措置を講じたりすることは、自分の足を撃つ行為になるだろう。

 企業の債権者もまた企業なのだという自明のことを、我々は思い出す必要がある。仮にあらゆる人が支払いを停止するなら、受け取る人はいなくなり、この危機はさらに長引く。現金預金が不足していることは事実であるが、不払いは、取引先も受け取ることができなくなるために状況をさらに悪化させる。

 これらの論争が司法に持ち込まれるなら、裁判所というリングの中で、ありとあらゆる人が同時に、契約内容の修正を求める被告と原告の2役を演じ、民事再生を求める債務者と債権者の2役を演じることになるだろう。

 では、どうするべきか?

 民事再生及び破産法は、企業経営者から熱狂的に受け入れられ、2008年のリセッションから今日に至るまで、集団で再交渉するメカニズムとして利用することを彼らは学んできた。だが研究によると、民事再生は中堅及び大手企業に対して機能はするが、景気の後退期に直接的な打撃を受ける小・零細企業の活用はわずかである。

 零細・小企業支援サービス機関(Sebrae)のデータによると、ブラジル国内には2017年の時点で640万の法人が存在した。 この内、99%は、年商が480万レアル以下の小・零細企業である。

 これらの企業は、国内の民間イニシアティブの正規雇用(1,610万人)の52%を雇用している。しかも、事業家ポータル(Portal do Empreendedor)によると、370万人の個人事業主がいる。

 法人の99%を占めるにもかかわらず、個人事業主と小・零細企業が民事再生制度を利用することは稀である。ブラジル法情報学協会(ABJ)がサンパウロ州を対象に実施した研究によると、これらの企業が民事再生の枠組みを利用するのはわずか20.4%にとどまる。これらの法人には法律で特別な手続きが認められているのに、である。またこの研究では、2010年1月から2017年6月にかけて、州全体でこの枠組みが利用されたのはわずか7回(分析は合計906件を対象に実施された)である。特筆すべき大失敗だ。

 民事再生が経済危機の処方薬で、99%の企業が小・零細企業であるなら、彼らがその制度の利用を主導すると考えるのが普通だ。そうなっていないのは、その手続きが複雑でコストが高すぎるからだ。それは、竜巻が入り江に到達して、小舟が最初に沈没するようなもので、むしろ指標からは、沿岸警備隊が中規模の船や遠洋航海船だけを救助し、地元の漁船や小さな船を彼らの運任せに放置していることを示している。

 では、プログラムはどうあるべきか? 議論すべきことは多々あるが、前提条件は次のようなものだ。すなわち、代償無しに支払いの停止あるいや猶予があってはならないということ。実業家には、割り当てられ事前に定められた割引を通じて、支払いの再開にインセンティブを与えるべきである。迅速に支払うほど、より大きな割引が適用される。個人事業主と小・零細企業に対して優先的に対処すべきである。そして、司法の管轄外で行われなければならない。

 ここで先の研究でABJが示した問題にも言及しておく。民事再生の「空走期間」が360日ということだ。この日数には、支払いが始まるまでの2年の免責期間は含めていない。更に悪いことに、債権者から承認された民事再生計画には、最大80%の債務の減免と、債務消化年数が20年に達するものまで存在する。

 民事再生は、本当の意味での債務の償還だ。 仮に我が国がこの道を選択するなら、3年間に及ぶ経済の停止にばかばかしい程度の支払いが付いてきて、展望を失うだろう。契約内容の修正を求める訴訟も、同様の命運が待っている。金額の減免が言い渡される可能性が極めて高い最終判決が出るまでに4年。そして、この係争中に多くが破産するだろう。

 結論は非常だ。契約内容の修正を求める訴訟を選択した場合、現金預金は再構築されず、支払いは不可能になる。そして一部の人が擁護するようにこの訴訟が一般化すれば、この危機の影響は半世紀にわたって尾を引き、ブラジル経済は救済されるどころか絞首刑に処されるだろう。

 従って、一部の法案が提案する方向に沿う形で破産法の改正だけに依って解決を目指すようなことは避けなければならない。その道は袋小路だ。解決策は司法の管轄外で、あくまで、訴訟は傍流にとどめて進められるべきである。国家の役割は、経済の車が息を吹き返し市場の歯車が再び回り始めるよう、外科的手法で短期的に、強力だが素早いひと押しを与えることだ。(2020年4月3日付けバロール紙)

 

マルセーロ・ゲデス・ヌーネス

弁護士でサンパウロ・カトリック大学(PUC-SP)法学部教授、ブラジル法情報学協会(ABJ)会長

 

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