2020年4月13日 Valor Econômico
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が世界的に拡大する中、この10年にわたって輸入品の増加問題に直面して厳しい状況に立たされてきた化学品工業が、国内で一度は製造を停止した基幹化学品の製造再開を検討し始めている。政府と民間イニシアティブの間で既に協議も始まっており、供給がほぼ完全に国際的なサプライヤーに依存しているアグリケミカルと医薬品の原料は、官民の協議で策定された国内生産予定品のリストに編入済みだ。ブラジル化学工業協会(Abiquim)のシーロ・マリーノ(Ciro Marino)理事長によると、「ブラジル国内の化学業界は、今回の危機を脱した際には以前よりも規模が拡大しているだろう」と話す。
同理事長によると、一連の協議は国防省を通じて連邦政府の側から提案があったという。バイオセーフティに関する協議の中で、製造ラインが他国に移転された原材料と戦略製品を特定する提案の中でこの話題が活発化している。
例えば数年前からブラジルでは既に、国内で製造される医薬品に使用する医薬品有効成分(API)の大部分が、この業界を強力に発展させた中国とインドからの調達に移行したため国内製造を停止した。肥料分野でも同様に、原料のほぼ全量を、とりわけ中国から輸入している。石油公社のペトロブラス自身、国内製造では競争力を確保できないとして肥料工場を閉鎖した。
戦略的化学品には、国内で競争力を備えた生産を確立できるような政策で対処すべき品目があるとAbiquimは指摘する。またこの議論と並行して、連邦政府は、構造改革と天然ガス市場の開放をより迅速に推進して業界の再工業化と大規模投資への復帰に道を開く必要があると同協会は主張している
Abiquimのマリーノ会長によると、現在、国防省と経済省がAbiquimを含めた業界団体と、現時点で不足している原材料の代替原料の開発を協議しているという。こうした品目には、消毒用アルコールジェルに増粘剤として使用されるがCOVID-19のパンデミックにより需要が爆発的に増加たために市場で品不足になっているカルボマーも含まれる。この問題では、ダウとBASFという多国籍企業2社が既に代替ソリューションを開発している。アルコールジェルに代わる消毒剤も、議論の対象だ。
一連の議論は、衛生分野の危機的状況だけに限ったものではない。連邦政府は外にも、基幹産業と位置付ける業種の国外依存を懸念している。マリーノ会長は「現在の状況だけに目を向けているわけではない。同様に、回復後のことにも目を向けている」と言い、業界では既に、国内で感染がピークを過ぎて経済活動の回復期に入った際のプロトコルについても構想を始めているという。また官側では、国防省と経済省がこの問題を協議している。
生産チェーン全体に何らかの形で関与している化学品業界は、COVID-19のパンデミックから受ける影響がポジティブなものかネガティブなものか、二極化している。需要が急増しているのは、ケア製品や掃除用品、パッケージ、医薬品、食品、肥料などの原材料や中間投入財である。
反対に、自動車業界や土木建築業界のようにパンデミック対策の影響を受けている業種に関係する化学品メーカーは、むしろ事業が圧迫されている。「業界企業の事業範囲は非常に多様なため、業界企業が置かれている状況もさまざまだ」とマリーノ理事長は話す。結果として業界何には、設備稼働率を引き上げた化学品メーカーもあれば生産を一時的に見合わせざるを得なくなった工場を抱えるメーカーもある。
業界の設備稼働率は平均すると、パンデミック前の時点で70%、最新の公式データはまだ出ていないが、今後60日で50%まで低下して2月までの回復の足取りが劇的に中断する可能性もあるとAbiquimは受け止めている。
Abiquimによると、2020年1―2月の工業用化学品の国内生産は前年同期比+0.7%、国内販売は同+1.47%を記録した。同じ期間に輸入品は、数量ベースで+3.1%だった。他方、輸出は-15.4%で、国内見かけ消費量は-2.1%だった。