新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより社会的・経済的な危機が発生して以降、大手ショッピングセンターが契約の不履行を理由にテナントを相手取り立ち退きを求め提訴する動きを見せている。バロール紙が、サンパウロ州司法裁判所とリオデジャネイロ州司法裁判所の民事法廷でこうしたケースの訴訟を確認した。
アリアンセ・ソナエは既に、衣料小売チェーンのTNGを相手取り店舗のテナント料の支払いの遅れで提訴した外、旅行代理店CVCのフランチャイズも提訴している。
2月と3月の訴訟を調べたところ、サンパウロ州とリオデジャネイロ州の2州で検疫隔離措置が講じられた3月以降、この種の訴訟が急増している。アリアンセ・ソナエは2月末から、テナントを相手取り9件の訴訟を起こしており、ムルチプランも8件のテナント契約で同様の訴訟を起こしている。両社はともに業界の上場企業で、新規の訴訟件数が最も多かった。
これらの訴訟の半数以上が、ショッピングセンターの営業中止が命じられた3月第3週の検疫隔離措置導入後に集中する。ただし、テナント数を考慮すれば、訴訟に至ったケースはわずかである。
TNGの創業者であるチト・ベッサ・ジュニオル氏は、「この訴訟は業界全体にとってマイナスだ。既にアリアンセ・ソナエとは(サンパウロ市西部の)ウエスト・プラザからの立ち退きをめぐるこの訴訟について協議し、彼らは訴訟を一時凍結し、個別に交渉に応じると話していた。だが、業績が期待を下回ったことからこの店舗はいずれにしても閉鎖しなければならない」という。さらに、「実際のところ、今後数か月で店舗スペースの多くが歯抜けになり、新規開店計画を立てている小売会社も少ないことを考えれば、今の段階で訴訟に入ることはナンセンスだ」と付け加えた。
パンデミックが業界に与える深刻なリスクとしてテナント料問題を業界団体内部で協議し始めた2月末から、BRモールズは手形の決済や支払いの遅滞、契約の更新に関連して、サンパウロ州とリオデジャネイロ州で5件の訴訟を抱える。その大部分は、3月に入って法廷に持ち込まれた。
一方でテナント側も、件数としてはわずかであるが、テナント料の見直しを求めてショッピングセンターの運営会社を提訴する動きを見せている。そのひとつが、コンパニア・ド・テルノで、この数週間、テナント料など現在有効な契約で定められた義務をめぐり、BRモールズとムルチプランを提訴している。
また大手のチェーンでは、3月末にリオデジャネイロ州で、支払いの遅滞を理由に10%の罰金を求めCVCのフランチャイズが提訴されている。
3月にはブラジル・ショッピングセンター協会(Abrasce)とブラジル・ショッピング・テナント協会(Alshop)の代表者らが協議し、危機的状況下でより良い合意を求め双方が取るべき対応についての勧告を、テナント料や共益費の見直しに関するガイドラインとともに公表している。ただしこれは強制するものではなく、ショッピングセンターにはテナントとの交渉に独自の裁量が認められている。(2020年4月14日付けバロール・オンライン)