新型コロナウイルスのパンデミック並びに石油の国際コモディティ価格の下落に伴って、エタノール価格下落でサトウキビ栽培に妙味がなくなり、多くのサトウキビ栽培農家は大豆、トウモロコシ並びにピーナッツ栽培への転作を開始している。
石油の国際コモディティ価格の下落に伴うエタノール価格の下落で、長年に亘って所有地535ヘクタールでサトウキビ栽培を行ってきたFernando Escaroupa氏は、60ヘクタールでの大豆栽培の転作を決めている。
またサンパウロ州ジャブチカバル市に所有する120ヘクタールの耕作地でサトウキビ栽培から大豆栽培に切り替えるためにFernando Escaroupa氏は準備を整えている。
来年初めに収穫予定のサトウキビよりも収益性が高い大豆栽培への転作は不安要素ではあるが、他のサトウキビ栽培農家も転作を考慮しているとEscaroupa氏は指摘している。パンデミック危機開始から石油の国際コモディティ価格は、既に40%下落の1バレル当たり30ドルに下がった影響で、石油価格に連動しているエタノール価格も大幅に下落して、サトウキビ栽培農家の収益を圧迫している。
ジャブチカバル市から200キロメートル離れたモンテ・アプラジーヴェル管内で、7年間に亘ってサトウキビ並びに大豆を栽培しているUeslei Cavatão氏は、サトウキビ栽培から穀物栽培に比重を移している。
「500ヘクタールでサトウキビを栽培していた時もあったが、今では300ヘクタールでサトウキビ、400ヘクタールで大豆を栽培している」とCavatão氏は説明。Cavatão一家は伝統的なオレンジ栽培農家であったが、エタノールブームの到来でサトウキビを栽培向けに農地を貸し出していた。しかしサトウキビを供給しているモレーノ・エタノール工場は昨年企業更生法で申請、Cavatão一家に黄色の危険信号点灯となっていた。
「ピーナッツの国際コモディティ価格は魅力的であり、サンパウロ州内のピーナッツ栽培農家は、ロシアやサウジアラビアに輸出。今年はコロナウイルのパンデミックの影響で6月の祭り(フェスタ・ジュニーナ)は行われない」とサンパウロ州西部地域でピーナッツ栽培を行っているJuliano Goulart Maset氏は説明している。
「サトウキビ栽培から穀物への転作を考慮している農家は多いが、一挙にサトウキビ栽培から穀物に転作するのは危険が大きい。サトウキビは多年草で、1回植え付ければ5年~6年は継続して収穫が可能であり、その間の収益は保証されている」とMB Agro社のJosé Carlos Hausknecht共同経営者は指摘している。
今年2月まで砂糖の国際コモディティ価格は、過去数年間で最高の15セントで推移していたために、輸出向けに砂糖を生産。またエタノール価格も好調に推移していたが、今年3月から価格が下落、今では僅か10セントに下落しているとHausknecht氏は説明している。
ブラジル国内には砂糖並びにエタノール生産工場は350工場を擁している。そのうち中西部地域、南東部地域並びに南部地域は267工場が集中しているが、エタノールだけ生産している80カ所の工場は窮地に陥っている。
サンパウロ州砂糖キビ加工業者連合(Unica)は、ブラジル国内の砂糖・エタノール生産工場のうち104工場は民事更生法を申請しており、そのうち81カ所は中西部地域以南の砂糖・エタノール生産工場の申請となっている。
2005年以降の同地域では95生産工場が閉鎖に追い込まれていた。新型コロナウイルのパンデミックの影響で運転資金の調達ができず、負債増加で多くの工場は同じ道を辿る可能性が上昇している。
2000年代初めのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルヴァ政権時に石油に代わる燃料としてエタノール生産を奨励した影響で、中西部地域では大豆栽培からサトウキビ栽培に切り替えた経緯があったが、今回のパンデミック危機でサトウキビ栽培から大豆栽培への転作が発生している。








