IMF(国際通貨基金)の発表によると、ブラジルのCOVID-19パンデミック対応策としての大規模な金融・財政緩和措置は大幅な財政出動に繋がっており、新興国でブラジルを超えているのはアンゴラ、リビア並びにオマーンだけであり、ブラジルの信用格付けの引下げ要因になっている。
国際通貨基金(IMF)の調査によると、ブラジルの財政状況はアンゴラ、リビア、オマーンなどの経済規模の小さな後進国よりも良いが、メキシコ、トルコ、南アフリカなどブラジルの経済規模に匹敵する新興国は、ブラジルよりも安定した状況となっている。
国際通貨基金(IMF)では、2020年のCOVID-19パンデミック対応による新興国の財政支出比較では、新興国平均はGDP比10.7%に対して、リビアはGDP比102.9%と他国を圧倒する財政出動予想、2位はオマーンのGDP比18.7%、ブラジルは16.8%で3位、南アフリカ14.0%、インド13.1%、中国11.9%、アルジェリア11.5%、サウジアラビア10.6%、ポーランド10.5%、アラブ首長国連邦はGDP比9.5%が予想されている。
今年の債務残高の比較では、新興国平均はGDP比62.2%に対して、アンゴラはGDP比120.3%、ブラジル101.4%、スリランカ98.3%、インド89.3%、クロアチア87.7%、パキスタン87.2%、エジプト86.6%、オマーン81.5%、南アフリカ78.8%、ハンガリーはGDP比77.4%が予想されている。
Oxford Economics社ラテンアメリカ担当エコノミストのFelipe Camargo氏は、ブラジルのCOVID-19パンデミック対応の財政出動は新興国の中でトップで、今年の連邦政府の対内債務残高は20%前後上昇のGDP比100%前後になると予想されている。メキシコは11%、チリは11%、ペルー13%、コロンビア14%の増加に留まると予想されている。
しかしカマルゴ氏はブラジルの公共債務はレアル通貨が90%を占めているために、外貨による負債率が大きな他の新興国ほど資金調達が困難ではないと指摘している。ブラジルの外貨準備高はチリやコロンビアと比較して一桁違うために、国際金融市場のボラティリティに対応できるとGoldman Sachs銀行ラテンアメリカ担当のチーフエコノミストのAlberto Ramos氏は指摘している。
ブラジルの財政健全化に繋がる構造改革を承認する緊急性は、COVID-19パンデミックの前にすでに現実的な問題であったが、COVID-19パンデミックの発生で、構造改革の実現はより差し迫った問題となっている。構造改革はブラジルの公共負債の脆弱な状況に加えて、ブラジルはすでに他の新興国よりもはるかに少ない経済成長率に留まっているとラモス氏は指摘している
チリ及びブラジルのCOVID-19パンデミック対応の財政出動はGDP比9.0%を若干下回っていたが、他の新興国の臨時財政出動の平均3.0%を大幅に上回っている。2019年のブラジルの公的債務残高はGDP比89.5%であったが、チリはGDP比27.9%であった。
チリは再度の同程度のCOVID-19パンデミック対応の財政出動は可能となるが、ブラジルが再度COVID-19パンデミック対応の財政出動を実施すれば、今年末のブラジルの公的債務残高はGDP比で110%~115%に達する可能性がある。
一方、メキシコは、COVID-19パンデミック対応の財政出動は、GDP比1%未満の新興市場の中で最も控えめな経済支援パッケージの実施に留まったために、昨年のメキシコの公共負債残高のGDP比53.7%から今年はGDP比65.5%に緩やかな増加に留まるとIMFでは予想。一方、今年のメキシコのGDP伸び率はマイナス9.0%が予想されている。