CNIの経済問題担当理事によると、現在の動向は2014年のリセッションで見られたのと同じ足取りをたどっている。
フォードがブラジルから撤退するという今回の発表、さらに、それ以前にも数年前から冶金業界や石油化学業界など他業種が利用する投入財の生産チェーンにいる企業が同様にブラジルから撤退する判断を下したことに関して、全国工業連合会(CNI)のレナット・ダ・フォンセッカ経済問題担当理事は、2014年の前回のリセッションで始まった脱工業化の第2波だと受け止めている。同理事によると、国内に多国籍企業を引き留める方策は、税制優遇政策の導入ではないという。問題の解決策は、税制改革と、エネルギー分野と輸出向けのインフラに対する徹底した投資を通じて導き出されるものだ。
日本のソニーは、アマゾナス州マナウス市の工場で2021年3月末をもって製造を終了すると2020年9月に発表し、同様にブラジル国内製造から撤退すると判断した。同じく日本のミツトヨも、2020年10月にサンパウロ州スザノ市の計測機器工場を閉鎖した。一方、スイス資本の製薬グループ、ロッシュは、2024年までに医薬品の生産を終了すると発表済みだ。
「本社の判断基準は常に、より大きな利益を生み出すはずの国を探し出すことだ。ブラジルは、法的安定性に対して高いコストを要求する国だ。ブラジルは、離陸することがない。成長するが早いか失速する国だ。その結果、ブラジルの国内需要ですら、長期的には彼らをここに繋ぎとめておくことができないのだ」とフォンセッカ氏は状況を分析する。
輸出
CNIのフォンセッカ氏によれば、ブラジルは5年間で2度のリセッションを経験し、その結果として国内市場が活力を失い、企業は問題に対処するための余力を保てず輸出障壁が一層高くなった。「ブラジルで事業を展開する企業には輸出が必要だ。それができないなら、投資を回収し、輸入により国内市場に対処することになる」と指摘。さらに、「ブラジルは大きな貿易の流れから遠く離れた状況にあり、グローバルな生産チェーンに参加するのに必要な機敏さを備えていなかった」という。
フォンセッカ氏は加えて、過去のリセッションにおいて冶金業界、中でもアルミニウム業界、さらに石油化学業界が、エネルギーとガスの価格が高いことと官公庁の煩雑な手続きを考慮すると国内生産が高コストになっていると主張、これを理由にブラジルから撤退したことに、改めて言及した。
サンパウロ州に限定しても、2015年に製造業では4,451か所の工場が閉鎖された。2016年の年明けに、金属工業では、イートン、マクシオン、ランドンが、同じ週にいずれもサンパウロ州グァルーリョス市の工場を閉鎖すると発表した。その年の自動車部品工場の連鎖的な閉鎖は、過去数か月に自動車業界の発表を受けエコーとなって反響している。
その上で同氏は、「諸外国との競争が激しくなっている。過去数年でも、資源業界と造船業界向けの設備メーカー、アルミニウム業界、石油化学業界、繊維業界で次々と工場を閉鎖する動きが確認されてきた。自動車業界はまだ、ラテンアメリカ向けに輸出するというアドバンテージを持っていたが、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックでその市場も多くが縮小した」と説明した。
また同氏は、多国籍企業の経営を繋ぎとめるための解決策は税制上の優遇措置を付与することではなく、むしろ、税制改革と、エネルギー分野及び輸出向けのインフラ分野への投資だと強調した。
最後に、「税制改革は、より長大な生産チェーンを持つ業界に貢献する。その生産チェーンの起点、例えば資源業界と農畜産業界は、競争力を備えている。他方、最先端工業はより多くの雇用を創出し、経済的に他業種を牽引していく力を持つ」と指摘した。(2021年1月17日付けエスタード紙)