ブラジルは世界経済回復を無駄にするリスクの可能性(2021年6月4日付けエスタード紙)

 先進諸国のCOVID-19対応ワクチン接種が進んで、世界経済の回復の兆しが表れているシナリオにも関わらず、連邦政府による政治混乱が障害となって、ブラジルの経済成長に支障をきたす可能性が否定できない。     

今年第1四半期のブラジルの国内総生産(GDP)伸び率は、前四半期比で予想を上回る1.2%増加を記録、今年のGDP伸び率は、5.0%に達する可能性が見込まれている。

今年4月のブラジルの公的債務残高は、3月のGDP比88.9%からGDP比約86.7%と2.2%減少を記録、今年4月の中銀、国庫庁並びに社会保障院(INSS)で構成される中央政府の財政プライマリー収支は、162億6,500万レアルの黒字を記録、また今年5月のブラジルの貿易収支は、92億9,100万ドルの黒字を計上、統計を取り始めた1989年以降の5月の貿易収支黒字を更新して、今年第2四半期のGDP伸び率に期待が持てる数字となっている。

更にサンパウロ州政府のジョアン・ドリア州知事は、今年10月31日までに18歳以上の成人全てに対して、COVID-19対応の1回目のワクチン接種で、経済活動の最も有害な足枷を外すと発表している。

また先進諸国や中国を中心に世界経済の回復に伴って、鉄鉱石や石油、農畜産物の国際コモディティ価格上昇は、ブラジルなどの輸出国にとっては追い風となっている。

Covid-19パンデミック対応のための緊急給付金の支給再開並びに過去最低に近い銀行金利などで、建設不動産業界では、今後の業界の活性化に対して楽天的な見方をしている。

緊急給付金の支給再開、低金利やCOVID-19ワクチン接種などポディティブなシナリオに対して、最も危険な障害としてインフレ上昇圧力が排除できない。

インフレはブラジル人の購買力を削ぐ一方で、企業経営者にとっては生産コスト上昇に繋がり、企業経営者は、生産コストを吸収するために最終消費者に価格転嫁すると経済サイクルの悪循環に陥る危険性をはらんでいる。

その他のリスクとして、パラナ河流域の5州の水力発電所の貯水ダムの水位低下で、今後数か月間以内に発生する可能性のある電力エネルギー危機は、エネルギー価格の上昇で可処分所得とビジネスコストの上昇、企業の投資減少、将来のインフレを生み出す可能性があり、短期的には経済成長を阻害する要因となる。

世界経済の回復に便乗するブラジル経済の回復は、ジャイール・ボルソナロ政権の政治のかじ取りに掛かっている。多くのブラジル国民は、連邦政府が再び大きなチャンスの一つを台無しにする可能性を憂慮している。

COVID-19パンデミック対応及びワクチン接種の遅れ、まじかに迫っているエネルギー危機、緊急援助対応、連邦政府のコパ・アメリカをホスト役対応など、ブラジル国民は、連邦政府による良くない選択に対して、楽観的になれない。

COVID-19パンデミック発生後に、ワクチン開発国から6億9,000万回分のワクチン売買契約を部分的にも受けていればCOVID-19による人的被害は比較できない程軽くすんでいたはず。

ワクチン契約をしていればブラジルは、予防接種キャンペーンの経験をすべて持ち、健康危機をコントロールし、相対的な所得水準を維持し、貧困の増加を避け、全てのブラジル国民にワクチンを接種した発展途上国の見本になり得ていたが、しかし実際には、ワクチン契約は連邦政府によって反故されていた経緯があった。

 

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