今週の石油の国際コモディティ価格は、2019年5月以降初めて1バレル当たり70ドルを突破、今年末には80ドル突破の可能性が濃厚と予想されているにも関わらず、ペトロブラス石油公社は、5月1日の石油並びにディーゼル燃料価格の調整以降、40日間に亘って価格を据え置いている。
2019年5月以降初めて1バレル当たり70ドルを突破したにも拘らず、ペトロブラスが5月以降40日間に亘って、石油派生品の価格を据え置ている要因として、レアル通貨に対するドル安の為替の進行が石油価格上昇を相殺している。
COVID-19パンデミック直後の昨年3月の北海のブレント原油価格は、1バレル当たり20ドルまで下落していたが、欧米でのCOVID-19対応ワクチン接種拡大による経済回復で、今では1バレル当たり70ドルを突破している。
ペトロブラス石油公社は、3月9日からペトロブラスの製油所から出荷される石油派生品の卸売価格を値上げすると発表。当時のロベルト・カステロ・ブランコCEOは、燃料価格引き上げを巡りボルソナロ大統領との対立が表面化して、事実上の更迭され、ペトロブラスの最高経営責任者(CEO)にシルバ・エルナ元国防相を任命していた経緯があった。
今年5月1日の1バレル当たりの石油価格は67ドル、6月9日は71ドルで約6.0%上昇した一方で、レアル通貨に対するドルの為替はR$5.40からR$5.00に接近して、ドル下落が石油価格上昇を相殺する効果となっている。
「石油価格の上昇は、景気回復の期待に基づいている。米国でのワクチン接種は、北半球で人々の移動が盛んになる夏に向かって増加して石油の需要が拡大している。しかし、石油の価格は需給に左右され、石油輸出国機構(OPEC)の減産によって、人為的に制御されていることを覚えておく必要がある」と、ジェツリオ・ヴァルガス財団(FGV)のフェルナンダ・デルガド教授は指摘している。
サウジアラビアは、COVID-19パンデミックによる世界の石油需要減少に伴って1日平均100万バレル減産、またロシア、ナイジェリア並びにメキシコも減産して約1,000万バレル近くまで減産した一方で、イラン及びイラクは、COVID-19パンデミック前の水準まで増産すると発表している。
ペトロブラスのシルバ・エルナCEOは、就任後1か月後に今後の石油価格の見直し頻度は、ロベルト・カステロ・ブランコCEO時代の10日~15日よりも長くなると説明している。
レアル通貨が1ドルR$5.50前後の5月迄は、ペトロブラスの石油価格は国際石油価格よりも4.0%~5.0%誤差が生じていたが、レアル通貨が1ドルR$5.00で推移している現在の誤差は、1.0%~2.0%に縮小している。