潮流に逆らって、連邦貯蓄金庫は支店開設に拍車をかける(2021年7月23日付けエスタード紙)

FinTech(フィンテック)による金融サービスのデジタル化による競争激化による各商業銀行の収益率の低下で、民間銀行や公立銀行を問わずに、コスト削減のために先を争って銀行支店の閉鎖を余儀なくされている。

一方、大半の銀行は銀行サービスのデジタル化に伴って、不要でコスト高の銀行支店の閉鎖を実施している一方で、連邦貯蓄金庫は、銀行業界の潮流に逆らって、年末までに268支店の開設を計画している。

今週、連邦貯蓄金庫は、前回発表していた今年末までの250支店の開設から268支店の開設拡大を発表したが、全てのコンペチターの民間銀行は、銀行支店の閉鎖の拡大を発表している。

中銀の発表によると、民間銀行のブラデスコ銀行並びにサンタンデール銀行、公立銀行のブラジル銀行は、今年上半期の3行合わせた銀行支店の閉鎖は792支店に達している。

ブラジル最大手のイタウー-ウニバンコ銀行は、コスト削減のため2019年以降既に600支店を閉鎖した一方で、新たな銀行支店開設は僅か3支店に留まっている。

連邦貯蓄金庫は、2018年に20支店の閉鎖をしていたにも関わらず、銀行業界の潮流に逆らって、支店開設する要因には政治的な要素は含まれていないと否定している。また連邦貯蓄金庫の支店開設の焦点は、人口が4万人以上の都市であり、これに該当する規模の都市で、連邦貯蓄金庫の支店がないのは58市となっている。

公立銀行もフィンテックを擁するデジタル銀行の台頭で、コスト削減で生き残りをかけるために、銀行支店の閉鎖や希望退職制度導入による職員の削減を余儀なくされていた。

特に2018年の大統領選挙で最後まで熾烈な選挙戦を展開した労働者党(PT)の大票田である北部地域並びに北東部地域での公立銀行の大幅な支店閉鎖が予定されていた。

連邦貯蓄金庫の支店開設プランに対して、ブラジル銀行は今年6月までに389支店の閉鎖を実施したが、今年1月に発表した経営合理化計画を巡りボルソナロ大統領と対立していたブラジル銀行のアンドレ・ブランダン最高経営責任者(CEO)が3月18日に辞任していた経緯があった。

アンドレ・ブランダン最高経営責任者の辞任後、後任に指名された同行幹部のファウスト・リベイロCEOは、ボルソナロ大統領の連邦貯蓄金庫介入に関するコメントは避けている。

ドイツ系コンサルタント会社Roland Berger社は、ブラジルの5大銀行は、金融業界で生き残るためには、今後3年間で業界全体の30%に相当する5,000支店の閉鎖の必要性を指摘している。

連邦貯蓄金庫の支店開設拡大政策は“腑に落ちない”と“誤り”であり、“政治が絡んでいる以外考えにくい”とコメント。また今後の銀行のエフィシェンシー、ファイナンス結果を求める方向とは一致していないとゼツリオ・バルガス財団(FGV-SP)ファイナンス専門のRafael Schiozer教授は指摘している。

銀行支店開設の拡大計画は、既に9ヶ月前から前倒しで始まっており、ボルソナロ大統領の支持率低下とは無関係と説明。銀行のデジタルサービスは全ての国民が使いこなせる訳ではなく、貧困層向け給付金の支払や市役所への融資など連邦政府の肩代わりをする連邦貯蓄金庫のサービス提供拡大は不可欠であると連邦貯蓄金庫のファウスト・リベイロCEOは説明している。

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