2021年11月9日並びに10日午前8時から10時まで、ブラジル全国工業連盟(CNI)と経団連は2021年度日伯経済合同委員会をオンラインで開催した。
司会は佐藤真吾企画部会長が務め、経団連の日本ブラジル経済委員会の安永竜夫委員長、ブラジル日本経済委員会のエドアルド・デ・サーレス・バルトロメオ(Eduardo de Salles Bartolomeo)委員長、エドゥアルド・サボイア駐日大使、山田彰日本国特命全権大使はそれぞれ開催挨拶を行った。
初めに特別セッション1はテーマ「日伯の経済情勢の概況」について、CNIのマリオ・セルジオ・テレスエグゼクティブマネージャーは、1995年以降のブラジルのGDP伸び率の推移、2014年~2017年の経済不況、為替の下落、連邦政府の公共財政支出制限法での回復、Selic金利の推移、Covid-19パンデミックの影響によるGDP伸び率の停滞も回復傾向、構造改革の第2ラウンド突入、今年の業種別GDP伸び率予想、製造業部門から政府への提案などについて説明した。
MUFG銀行の福元信義頭取は、「日伯間の経済状況見通し」について、過去15年間の世界及び日本のGDP伸び率の推移の比較、世界及び日本企業によるM&Aの推移、欧米企業によるブラジルにおける直接投資、日本企業によるブラジルの部門別投資、投資案件の大型傾向、日本CEOの意識調査、ブラジルの投資案件の注目分野、ユニコーン企業リスト、脱炭素エネルギー分野の今後などについて説明した。質疑応答では新電力法導入による効果。ブラジルの電力エネルギー部門への事業投資における注意点が挙げられた。
続いて特別セッション2のテーマ「インフラ・デジタル分野における日伯産業協力」では、初めに三井物産プロジェクト本部の中野行庸プロジェクト開発第三部長は、「Infrastructure & Digital」について、今年及び2030年のブラジルの電力エネルギー分野の構成及び発電能力、今後の天然ガス生産予想、自社10基のFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)によるプレソルト油田開発並びに世界トップの生産効率、人工知能によるFPSOメンテナンスをフローチャートで説明した。
Eve社のアンドレ・ステインCEOは、エンブラエル社傘下の都市交通システムソルーションを事業の柱とするEve社は、独立したプライベートオンデマンド航空プラットフォームで、ラテンアメリカ地域向けのVTOL (Vertical Take-Off and Landing:垂直離着陸機)投入による都市交通網の事業、パイロット操縦による垂直離着陸機(eVTOL)やドローン使用の空中輸送でのアーバン・エア・モビリティ(Urban air mobility)による都市交通システムは、今後の交通渋滞解消の切り札、新しいエコシステム導入によるローカルパートナーとのソルーション事業の内容、日本のアーバンモビリティ拡大の可能性、今後の市場動向などについて説明した。
NECラテンアメリカの田辺靖社長は、テーマ「Digital Infrastructure Empowering Transformation」で、ICTによるしたらしいデジタルインフラの可能性、1G~5Gモバイルネットワークへの発展、5Gによる新た強い社会価値、今後の5Gネットワークの普及予想、400本以上の海底ケーブルの設置、ブラジルとアフリカを結ぶ6200キロメートルの海底ケーブル設置計画、シドニー経由の南米とアジアを結ぶ海底ケーブル計画などについて説明した。
ROMI社のドーグラス・アルカンタラ部長は、自社の歴史として1930年創業、1941年に旋盤機、1956年にブラジル発の自動車生産、1957年のROMIファンデーション設立、1972年のプラスティック射出成型機、常にブラジルの最先端技術搭載の工作機械の制作、装置レンタルのソルーション事業のROMI MAASの紹介を行った。質疑応答では5Gが全ての産業とつながる時期は。天然ガス市場の開放と脱炭素化との対応などが挙げられた。
10日の委員会では、初めにIHI社の釜和明特別顧問は、9月16日開催の日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議オンライン会合について、2007年の第1回会合以来、両国の経済分野における実現可能な具体的優先課題につき討議、両国経済及び交流の活性化に向けた提言を行うことを目的に開催、昨年来の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年はオンラインでの会合を開催、テーマ「持続可能な将来に向けた日伯協力」で行われた日伯関係強化に向けた議論などを紹介した。
特別セッション3の環境・農業分野における日伯産業協力では、トヨタの中南米担当の井上雅弘CEOは、「カーボンフリー社会に向けた取組」として、ブラジルの電力エネルギー事情、自動車メーカーの脱炭素化に向けた取組、ブラジルにおけるカーボンニュートラル化への取組、同社の車のライフサイクル全てにおける脱炭素化への取組、各国の状況に対する対応、ブラジルの環境技術輸出への協力などについて説明した。
BRF社国際担当部門のGrazielle Parenti副社長は、「BDF社のサスナビリティ」と題して、食糧輸出で世界トップ企業の同社のESG取組、2030年の自社の電力エネルギー供給の50%は太陽光発電や風力発電を目標に掲げている。牛トレーサビリティ制度。イノベーション技術活用による食標品廃棄物削減及び活用、生産性向上、輸送ロディスティック改善、同社のCSR活動などを紹介した。
味の素の佐々木達哉副社長は、「ブラジルにおける味の素グループ概観」として、創業者の志、同社のビジョン、中南米の事業展開、ブラジル国内事業として4工場拠点、3000人の従業員、ブラジルにおける健康課題、減塩製品、アスリート向けKachimeshiプロジェクト、サスナビリティを目指した取組、アグリビジネスにおけるバイオサイクル事業、CO2削減への貢献、プラスティックパッケージ削減プロジェクトなどを紹介した。
Campos社環境部門のルイス・ぺレス・トレス社長補佐は、「ブラジルのアグロビジネスの挑戦」について、40年前までは生産性の低い食糧輸入国であったが、日本の技術協力で現在は世界3位の輸出国に転換、1970年代のエンブラッパ設立、1979年にセラード開発で同社設立、PRODECERプロジェクトによるブラジル農業の飛躍、品種改良や技術改良による生産性の向上、安全な食糧生産、今後の更なる農業部門のブラジル経済への寄与などについて説明した。
ブラジル日本商工会議所の村田俊典会頭は、「日本-メルコスールEPAプロモーション」について、初めに商工会議所の活動目的、304社の会員企業、そのうち193社の進出企業、約70%は製造業、2000年及び2020年の日伯貿易のランキング推移、EPAに関するビジネスディスカッションの経緯、日本・メルコスールEPAを巡る地域間協定、気候変動、Covid-19のインパクト、米中関係、ニューアライアンス・ブロック化、日・メルコスールの重要性、メリット、EPAアンケートによる各部会からの提言などについて説明した。
RAIZEN社のパウロ・ネーヴェス重役は、「エネルギーの将来の体系」について、同社のエコシステム、サトウキビ生産の再生可能エネルギー事業、サトウキビの茎、根並びに葉っぱの活用、エタノールプラント、化石燃料に替わる代替え燃料への移行、各国のCO2排出比較、日本企業とのパートナーシップ、日本市場開拓などについて説明した。
経団連の原一郎常任理事は、日本のEPA及びFTAの締結国、日本にとってメルコスールとのEPAは最優先、日本のブラジルからの輸入品目、食料安定供給確保並びにリスク、日本及びブラジルの最近の貿易協定状況、ブラジルから日本への非工業製品輸出及び日本のハイテク製品輸出の推移、日本とブラジルの貿易ランキング、ブラジルへの対内直接投資ランキング、日-メルコスールEPA締結によるビジネスチャンス、EPAロードマップについて説明した。
佐藤企画部会長は日‐メルコスールの共同声明取り纏めについて説明。閉会の辞ではエドアルド・デ・サーレス・バルトロメオ委員長及び安永委員長は、日伯関係の更なる強化、日伯の補完関係、Covid-19パンデミック終息による次回の対面形式での会合の希望を述べた。
PDF Promotion of Japan-Mercosur EPA (ブラジル日本商工会議所 村田俊典会頭)