中国を中心としたアジア・オセアニア地域向けブラジルの鉄鉱石輸出シェアは、過去25年間で30%から20%と大幅に減少した一方で、オーストラリアの鉄鉱石輸出は、20%から徐々にマーケットシェアを上げていき、今では50%以上を占めて寡占状態が続いている。
過去25年間のブラジルの世界向け鉄鉱石輸出のマーケットシェアは一時30%を占めていたにも拘らず、オーストラリアは生産拡大に伴って、鉄鉱石輸出ではブラジルからトップシェアを奪っており、ブラジルが今後数年間以内にトップシェアを奪還するのは不可能と見込まれている。
1997年のブラジル国内の鉄鉱石輸出企業として、Vale社, Caemiグループ傘下のMBR 社、 Samitri社並びに Belgo-Mineira 社傘下のSamarco社が名を連ねており、ブラジルのアジア・オセアニア地域への鉄鉱石のマーケットシェアは30%に達していた。
一方1997年当時のオーストラリアは、国内の Pilbara地域での鉄鉱石生産に留まっており、 Rio Tinto社並びに BHP社の2社が鉄鉱石の輸出をして、マーケットシェアは20%に留まっていたが、2016年以降は50%以上に達している。
2019年のブラジルの鉄鉱石輸出は、Vale社, CSN Mineração社並びに AngloAmerican 社の3社で3億4,000万トンを輸出したが、マーケットシェアは20%強であった.
世界最大の鉄鉱石ペレットを生産していたサマルコ社は、2015年に発生したミナス州マリアナ市で起きた同社の鉱山廃水ダムの堤防決壊事故による環境破壊の修復や各種の賠償金支払いを余儀なくされているが、2015年の鉄鉱石生産は2,800万トンを記録していた。
サマルコ社は2020年末に鉄鉱石生産を再開、現在の年間の鉄鉱石生産能力は800万トンに留まっているが、2026年には倍増、2029年には2,800万トンの生産を目指している。
ヴァーレ社は2019年1月25日に発生したヴァーレ社のミナス州ブルマジーニョ鉱山のフェイジョン1鉱滓用ダムの決壊事故では270人が犠牲となり、環境破壊問題でミナス州の同社の他の鉱山での操業停止を余儀なくされていた。
アジア・オセアニア地域の鉄鉱石の年間貿易量は16億トンに達しており、2019年のブラジルの鉄鉱石輸出は3億4,000万トン、オーストラリアは8億3,600万トンと World Steel Associationの統計に表れている。