2026年までの平均成長率ランキングでIMFがブラジルを190か国中ワースト25と分析

第3期ルーラ政権(2023-26年)におけるブラジルのGDP成長率は、世界190か国の成長率ランキングでワースト25にとどまると国際通貨基金(IMF)が予想している。ただし、GDPの名目額で見ればブラジルは、世界10大経済国に復帰する見込みだ。

ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(PT:労働者党)のの在任期間となる2023年から2026年にかけてIMFは、ブラジルが+6.45%の成長を達成すると予想する。ただしこれは、世界平均の+13%を下回るだけでなく、ラテンアメリカの平均である+9%、新興国の平均である+17%も下回る。それでもジャイール・ボルソナロ前大統領(PL:自由党)の時代に記録した+5.73%(ワースト81)を上回る。ワースト・ランキングでは、順位が下がるほど、相対的な成長率は大きくなる。

レアル計画の導入後で見ると、第3期ルーラ政権で想定される成長率は、2015年から2018年(ワースト12)ほどは悪化しない模様だ。この期間はジウマ・ロウセフ大統領(PT)が第2期を務め、同大統領の弾劾後は部分的にミシェル・テーメル(Michel Temer)大統領(MDB:ブラジル民主運動)が政権を担当、この間にリセッションを経験した。

第2期ルーラ政権(2007-2010年)のブラジルはワースト64で、新興国の平均を上回る成長を達成した。当時のブラジルは名目GDPの規模で見ても世界7位の経済国だった。その後、ジウマ政権/テーメル政権で9位に転落、ボルソナロ政意見ではトップ10から陥落して11位に転落した。第3期ルーラ政権についてIMFは、2026年には8位に浮上すると予想している。これは、フェルナンド・エンリッケ・カルドーゾ大統領(PSDB:ブラジル民主社会党)の1998年当時と並ぶ。

ガラパゴス・キャピタルの国際問題担当チーフエコノミストのジャイメ・ヴァルディヴィア氏は、「ブラジルは非常に厳しい状況に直面する」と話す。同氏によるとブラジルは、年間+1%を大きく上回る成長を支えるだけの広範囲な需要があると信頼するに足る根拠は乏しいという。「+1%から+2%の間というのが、妥当なマージンだ」という。

同氏によるとブラジルは、様々な理由から成長率が緩やかなものになる。第1に、世界的なパフォーマンスも脆弱なこと。「新興国とブラジルのア貿易相手国の多くで経済成長率が低迷する」とヴァルディヴィア氏は言う。

加えて同氏は、4、5年前と比較して金利が世界的に高金利で推移していると話す。「2008年以降、米国と欧州連合(EU)のような重要地域で金利がほぼゼロ近辺だった。現在、先進国は経済のバランスを模索する必要のある場所になっている」と同氏は指摘する。

これと同時に新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは各国政府にとって社会的問題となっており、積極的な財政拡大プロセスを後押ししている。「現在の世界はより複雑な状況にあり、他方で、バランスを回復する必要にも迫られている」という。

ヴァルディヴィア氏は、ブラジルの経済成長率が低迷すると見る一方で、中国がブラジルのプラス成長を支えるのに十分な役割を果たすとも予想している。ただしブラジルの成長に対する国内の需要は明確ではない。農畜産業は引き続き、工業と同様に重要な位置を占める。「だが、新しい財政の枠組みに関する議論と税制改革に対する議論が進行中。こうした大きな負荷を抱えたまま成長するのは極めて困難だ」と同氏は言う。

ボルサ・ファミリア(Bolsa Família:家族手当)やマイホーム普及計画(ミーニャ・カーザ・ミーニャ・ヴィダ)のような、過去のPT政権で成功した計画も継続すべきだが、「それはブラジルのような国の予算の制約の範囲内でのことだ」とヴァルディヴィア氏は指摘する。「ブラジルは関係国と比べても債務が大きい。このため、債務の安定に向け、今後数年の新しい財政の枠組みを国会で可決させることが重要だ」という。

オックスフォード・エコノミクスのラテンアメリカ担当チーフエコノミスト、マルコス・カザリン氏は、今後数年で平均+3%に近い成長サイクルがブラジルにあるとしても、「そこに入り込んでいるわけではない」と指摘する。

カザリン氏はブラジルの国民1人当たりGDPを、米国と日本、英国などの先進孤高グループと比較している。これは、ブラジルのGDPが人口の規模により「誇張される」ことを回避する方法である。この国民1人当たりGDPの比率が上昇すれば先進国以上にブラジルが急速に成長していることを意味し、低下すればこれらの先進国と比較してブラジルはより貧しくなっていることを意味する。

カザリン氏は、「第1期のルーラ大統領は、過去にないほどの富をブラジルにもたらした」と話す。従来なら先進国の労働者1人でまかなっていた生産でブラジルは4人の労働者を必要としていたものを、わずか3人にまで縮小したという。

その「キャッチアップ」は、対外部門が影響していると同氏は言う。交易条件(輸出価格と輸入価格の関係)が大幅に改善したと同氏は指摘。「コモディティー・ブームは極めて重要だった」という。

ブラジルの国民1人当たりGDPは2014年にピークを記録した後に「垂直落下」を記録して、2019年前後にようやく安定したとカザリン氏は話す。そして2020年から2022年にかけての直近のコモディティー・ブームでも、ブラジル経済の収縮は非常に緩やかだったという。

さらにカザリン氏は今後4年間のブラジル経済に関して、GDP成長率が平均で+2.5%前後という「成長サイクルの波」が来ると予想している。同氏によるとこれは、国内経済の需要ソースの変化を反映したものだという。

「対外部門がブラジルの今後数年の成長の原動力になるとは限らない。公共部門が大規模な契約主体となり、給与政策もより寛大なものになるだろう。所得はこれまで以上に上昇し、公共部門と民間部門が恩恵を受けるだろう」という。

しかしながらこの成長は、インフレ圧力を強めるものでもあるとカザリン氏は指摘する。「+3%に低下するどころか、インフレは+4%前後で安定している」という。そしてこれが金利の水準にも影響する。「マクロ経済のバランスが悪化することは間違いに会い」と同氏は受け止めており、実質金利画より高くなり長期の投資に「扉を閉ざす」と指摘した。

シティのラテンアメリカ担当チーフエコノミスト、エルネスト・レヴィラ氏は、今後4年間のブラジルの経済成長について、世界経済の回復及び内需の回復のように、対外部門と対内部門がほぼ同等の重要性を持つと受け止めている。

同氏は、これがまさにブラジルの直面する課題だ、と指摘する。「成長を改善するには、対外部門が恵まれている必要があるが、同様に、国内経済に対して良好な政策を導入できるだけの能力も必要だ」という。

シティは、2026年までにブラジルが平均で年間+1.5%を記録すると予想。「ブラジルにとって、そしてブラジルが抱えている課題を解消するには、低いと言わざるを得ない水準だ」とレヴィラ氏は指摘する。他のラテンアメリカ諸国と同様にブラジルも、依然として、潜在成長率が低いという問題を抱えているのだ。

カザリン氏は、「人口動態が労働市場の成長に貢献せず、投資に対して十分な貯蓄能力もない。景気循環的な改善があったとしても、構造的にそこまで成長することは不可能であり、結局のところ、それは一過性のものにとどまる」という。(2023年5月15日付けバロール紙)

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