2023年のGDP成長率に対する見通しの改善が利下げに直接つながるわけではないとSPEが指摘(2023年5月24日付けバロール紙)

2023年第1四半期のGDP成長率が良い意味で期待を裏切るものになる可能性があるものの、このことが中央銀行の利下げに直結しているわけではないと財務省の財務省経済政策局(SPE)が受け止めている。5月23日に発表したマクロ財政ブレティン(Boletim Macrofiscal)で、最新の見通しとともに明らかにした。

 

SPEの推算に基づくと、第1四半期に国内総生産(GDP)は、前期比+1.2%(季調済)の成長を達成した模様。

 

しかしSPEのラケル・ナダル・マクロ財政政策課長によると、ここ数日発表されていた指標がこの予測に組み込まれていないため、予測値には上振れ圧力がかかっているという。同課長が言及している指標には、いずれも3月に関連したものであるが、中央銀行経済活動指数(IBC-Br)と、ブラジル地理統計院(IBGE)が計測する月例サービス業調査(PMS)と月例工業調査(PIM)がある。なお、第1四半期の国民経済統計(GDP統計)は、IBGEが6月1日に発表する予定。

 

経済政策局のギリェルメ・メーロ局長は今回のブレティンについて、農作物の作柄と「予想を上回る雇用を創出した回復力のある労働市場」というポジティブな側面を強調。その上で、「この労働市場の回復力は労働市場の過熱を意味するものではなく、この回復のペースで労働市場が成長しているに過ぎないものだ」と付け加えた。

 

まさにこうした観点から同局長は、経済活動に対する良好な見通しが政策金利の利下げとは「両立しない」ものになっていると指摘する。現在、中銀通貨政策委員会(Copom)が設定しているブラジル経済基本金利(Selic)は、年利13.75%である。

 

同局長によると、政策金利の利下げを阻止する要素と言える給与またはサービスからくる「インフレ圧力」は存在しないという。それだけでなく、いくつかの観点からはインフレの「根強い圧力」と受け止められる部分も存在はするが、12カ月で見た拡大消費者物価指数(IPCA)では、卸売物価及びコア指標(ボラティリティーの大きな品目を除外した指標)で大幅な減速がみられるという。

 

さらに同局長は、「信用市場が、2023年のブラジル経済の減速を説明する中核的な要素だ」とし、まさに「金融政策の遅行効果」によるものだと指摘。その意味で、「インフレの減速効果は長期的に持続する可能性がある」という。

 

こうした認識を示しているものの、SPEは今回、2024年のインフレの見通しを上方修正した。2024年のIPCAについてSPEは、これまで+3.52%と予想していたものを+3.63%に引き上げた。ただし、この最新の予測でも金融機関を対象に中銀が週次で実施している経済動向調査「Relatório Focus」の最新レポートで示された市場の予測の平均(+4.13%)を下回る。

 

Selicの判断において中央銀行は現時点で、2024年のインフレ率がインフレ目標である+3%(許容範囲は±1.5ポイント)に収束させるよう、照準を合わせている。メーロ局長によると、IPCAの場合、実際に+3.63%に収まるならコア・インフレ率はインフレ目標の中間値である+3%になっている可能性が高いと受け止めている。

 

なお、4月までの12カ月間のIPCAは+4.13%であるが、これには2022年に導入されていた燃料減税の統計上の影響が含まれていることから、政府と民間部門は2023年末までIPCAが上昇していくと予想する。財務省自身、2023年のIPCAの予想は、+5.58%である。

 

また5月22日にSPEが発表した2024年のGDP成長率に関する見通しは、従来から変更を加えず+2.3%だった。

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