連邦政府内が環境問題で対立する中でSTFが穀物輸送鉄道の可否を判断へ(2023年5月29日付けバロール紙)

アマゾン熱帯雨林における様々な事業の認可に関して政府内が派閥に分かれて対立する中、連邦最高裁判所(STF)の大法廷は今週(5月第5週/6月第1週)、マット・グロッソ州シノップ市からパラー州ミリチトゥーバ市を結ぶ新しい鉄道線、穀物輸送鉄道(Ferrogrão:フェログラン)の建設の可否に関する判決を下す。本件の審理は、5月31日に予定されている。

 

アマゾン川河口に近いアマパ州沿岸部を対象にしたペトロブラス(Petrobras)による試掘井の掘削に反対する意見書を2週間前にブラジル環境・再生資源院(Ibama)が提出して以降、政府内では賛否の2派に分かれて対立していることが表面化している。

 

200億レアル以上の工費を見込む巨大鉄道プロジェクトを巡ってSTFでは、鉄道線の施設に向けてパラ州のジャマンシン国立公園の境界線変更を巡って争われている。この鉄道線は、現在のところ港湾と河川舟運が利用されるマット・グロッソ州内で生産された穀物のブラジル北部への集積ルートを、大きく変えるものになると期待されている。

 

社会主義及び自由党(PSOL)による訴訟を受けて、アレシャンドレ・デ・モラエス判事は、暫定令(MP)を通じた保護区域の境界線の変更は認められないという主張を受け入れた。2021年に同判事は、関連するすべての契約及び研究について凍結した。

 

穀物輸送鉄道に関するMPは2021年、ミシェル・テメル大統領(MDB:ブラジル民主運動)の時代に署名された。MPでは、連邦高速道路163号線(BR-163)の沿道に鉄道線を施設するため、ジャマンシン国立公園を通過する高速道路幅員を拡張することを規定している。鉄道線は総延長933kmで、この内、同国立公園を通過する部分は53kmである。

 

モラエス判事による差し止め命令が下された際、ジャイル・ボルソナロ大統領(PL:自由党)が率いる当時の連邦政府は、既に事業入札の実施に向けて準備を進めていた。当時、事業入札に不足していたのは連邦会計検査院(TCU)の承認だけだった。

 

最高裁の審理は、モラエス判事自身が担当判事となっている。5月31日に予定されている審理だが、翌週に延期される可能性もある。この訴訟は、この日に審理される最後のものであり、その前に、フェルナンド・コロル(Fernando Collor)元大統領/元上院議員に対する審理と、個人外使用する目的で麻薬を所持することの非犯罪化に対する審理が行われる。

 

歴史的に見てSTFは、「グリーン・ルール(pauta verde)」と呼ばれる対応に取り組んできた。STFに持ち込まれるこの種の問題に、環境保護を最大限に考慮して判決を下してきたのである。このため、穀物輸送鉄道に関連した訴訟が延期されたとしても、傾向としては、再開にそれほど時間がかからないと見られている。

 

この訴訟の当事者の複数の関係者が、担当判事が穀物輸送鉄道のケースで調停を選択する可能性もあると受け止めている。

 

5月26日に連邦総弁護庁(AGU)は、ジャマンシン国立公園の境界線を変更するMPの違憲性を支持する意見書をSTFに提出した。前ボルソナロ政権時代にAGUは、いかなる犠牲を払おうとも同鉄道線の建設計画を承認することに賛成すると意見を表明していた。

 

検察側は現在、国会が可決したMPの最終文書には、道路幅員の拡大でジャマンシン国立公園が縮小されることへの補償として、タパジョス(Tapajós)の環境保護区域(APA)の5万1,000ヘクタール以上を同国立公園に組み入れるという対応が欠けていたと主張している。

 

これに対して連邦政府の弁護団は、ジャマンシン国立公園へのAPAの編入は、想定されていたものの手続きの過程で削除されたと主張している。AGUは、当該の判断を下すには「それ以前に生態学的観点からこの編入が適切であると結論した研究が先に存在する必要がある」としている。

 

結論としてAGUは、「社会環境面を含む法的条件をすべて満たすよう研究結果がアップデートされることを含めて、穀物輸送鉄道に関連した行政手続きを定期的に適正化するのを再開すべく、STFの予防措置の部分的な撤回を求む」としている。

 

運輸省は、研究を承認するという判決が得られれば敗北には当たらないという立場をとる。というのも運輸省によると問題となっているデータは2013年の古いもので、「このような古いデータをもとに現在の影響を計測することは、例え鉄道線の施設を支持するデータであったとしても根拠とするには無理がある」という認識である。

 

他方、鉄道線の建設に反対してきた環境省は、引き続きその立場を維持する。先週の権限縮小を受けてマリーナ・シルバ環境大臣と先住民らは、これ以上の敗北を断固阻止すると、これまで以上に強硬な姿勢に転じている。また第3期ルーラ政権のAGUの顔ぶれは、環境保護主義者及び先住民保護主義者に同情的な立場を採用していると理解されている。

 

レナン・フィーリョ(Renan Filho)運輸大臣は、穀物輸送鉄道は環境問題を気に掛けないイメージがもたれていたボルソナロ政権との関連性の希薄化に努めている。同大臣はその上で、穀物輸送鉄道の研究はそのはるか昔、10年以上も前に当時のジウマ・ロウセフ大統領(PT)によって承認されたのだと指摘している。

 

同大臣は、「穀物輸送鉄道は、はるか昔の政権でスタートしたものであり、現在、重要なことはそれをいかに実現させるかという可能性を模索することだ。というのもブラジルでは年を追って農産物の生産量が拡大する中、日に日に、インフラへの投資の必要性が増しているのだ」と強調した。

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