民間病院での帝王切開による分娩が大半を占めていた1990年代、産婦人科医のAline Ambrósioさんの電話番号は、通常分娩を専門とする産科医としてブラジルのいくつかの領事館に記載されていた。
ブラジルに来た外国人の妊婦にとって、不必要に帝王切開を受けることは考えられないことであり、通常分娩を行う産婦人科医を探すのに苦労していた経緯があった。
連邦政府による辛抱強い通常分娩に対する啓蒙運動などが功を奏して、ブラジル国内の不必要な帝王切開の比率が減少傾向を示しており、2022年の妊婦に対する帝王切開比率は57.7%まで低下している。
不必要な帝王切開の比率がブラジルを上回っているのは、ドミニカ共和国の58.0%とブラジルを0.3%上回って世界トップの帝王切開比率を記録、ブラジルに次いでエジプトは55.5%で3位、トルコは53.1%と依然として過半数を上回っている。
2018年の世界の平均帝王切開比率は21.1%、ヨーロッパは28.0%と世界平均を上回っていたが、アイスランド、フィンランド、スエーデン及びノルウエーのノルディック諸国、伊佐らえる及びオランダの平均帝王切開率は僅か15.0%~17.0%であった。一方南米及びカリブ海諸国の平均は42.8%、米国は32.0%であった。
ブラジルでは、陣痛の痛みを不安に思ったり、経膣分娩によって性生活に永続的な変化が残ることを心配したり、手術に関連したより高額な医療費を得たいと思われる医師らのアドバイスに従ったりすることで、計画的な帝王切開での出産を一も二もなく選択する女性がますます増加していた。ブラジルでは、帝王切開は手術の一種ではなく、出産方法の一つとみなされていた。
ブラジルの民間産院では帝王切開による出産が85%に達していた可能性があり、帝王切開術では、新生児が呼吸困難を起こすリスクが120%増加する上、母親の死亡リスクが3倍になる。この割合は、世界保健機関(WHO)が推奨する15%に比べてはるかに高かった。
連邦政府は、不必要な帝王切開の風潮に歯止めをかける目的で、産婦人科医らに対する規制を強化し、医学上の必要性が認められる場合でない限り、妊婦らを説得して帝王切開術を受けないようにさせることを求める新たな取り組みを行っていた。