本日は、昼食会の貴重な時間をいただきありがとうございます。
私ことコサカ・ジルベルトは、現在60歳の日系ブラジル人でありますが、一念発起して、ブラジルにおいて日本語を次世代に伝えるために尽くすことを決心しました。私の人生も残すところあと三分の一と思われますが、私の意図するところに賛同してくださる方々が現れてくれれば本望に思います。
ブラジルで暮らす他の民族とは皮膚の色も容貌も異なるわが日系社会は、今や150万人にふくれあがりました。文化の中心となるものは言語だと私は信じています。私は毎日、白紙に漢字を書き綴っています。わがサンパウロ新聞は広告料や購読料で成り立っています。ここまでは、我々はどうにか生きながらえることが出来ました。
皆様もご存知の通り、サンパウロ新聞は、1946年に創刊されたときから、色々な困難にもかかわらず文化事業を行う部門を維持して来ています。第二世界大戦直後、ブラジル在住の日本人が意気消沈していたとき、私たちは「トビウオ」たちを招待し、サンパウロ市でその技を披露してもらいました、その後、第一回サンパウロ・ビエンナーレの際、日本の画家数名を招待しました。この61年間、当社は重要な文化行事を行うことにかけてトップであり、いずれも文化的に大きなインパクトを与えています。
移民百周年記念事業として、当社は非常に大胆な本の出版を手がけます。そのグラフィック・プロジェクトは日本の芸術家竹井正和氏にお願いしています。普通でありながら、ありふれていない日系女性についての本です。移民百周年にちなみこれらの百人の女性が、どのようにしてその深い苦しみ、コミュニケーション不足、食料不足、カルチャーショックを乗り越えたかを語ります。また、これらの艱難をどのようにして克服したか、その決意、勇気、度胸、そして生きるための手段としての工夫によって、人生を豊かにし、運命を変えていったその生き様を活字で残します。
また、サンパウロ大学名誉教授の杉尾憲一郎先生が地球の環境問題をテーマとして執筆された「地球環境」を一冊の本にするプロジェクトも進めています。25章からなる同書は、日本語、ポルトガル語両国語で発刊しようと考えています。
これら出版事業を行うに当り、欠かせないのがスポンサーです。私は皆様方の多くを訪問しておりますが、快く応対してくださりお礼申し上げます。今ここにお見えの方々の大部分は日本人です。心から自分の国の言語と文化を愛される方は、どうか今私が申し上げていることの大切さについて考えてください。支援なくしては、ブラジルで外来の文化を定着させることはできません。
繰り返してお願い申し上げます。当社の特別事業を行うためには、ぜひとも皆様のご協力が必要です。これがなければこれらの事業は実現できません。
もう一つ、非常に重要なプロジェクトがあります。それは児童を対象とした日本語教育のページです。これによって、日本語学校382校、生徒2万人、そして日本語教育に全身全霊を打ち込む教師1126人に大きく貢献することになります。
ここにおられる商工業界の皆様の中に当社と共に日本語及び日本文化に関する文化事業を支援していただける方がおられましたら、どうかご連絡下さい。
ご清聴ありがとうございました。きっとご協力が得られると信じております。
サンパウロ新聞社
代表取締役社長 高坂ジルベルト