ジェトロ・サンパウロセンター(澤田吉啓所長)、コンサルタント部会(都築慎一部会長)並びに日伯経済交流促進委員会(澤田吉啓委員長)共催による南米三カ国セミナーに会場一杯の56人が参加して2011年3月2日に開催、ジェトロ・ボゴタの清水文祐所長はフライト問題で不参加となったが、プレゼンテーションは商工会議所サイトに掲載。
初めにジェトロ・サンチアゴの竹下幸治郎所長は「チリ発南米事業展開 チリの特質どう生かす?」と題して、首都サンチアゴ市では超高層ビルの建設ラッシュでブラジルと比較して物価が割安、低インフレのもとで30年近くに亘り経済成長継続して、南米諸国では最も早く先進国入りが予想されていると説明した。
またチリは1970年代から外資に対して貿易や金融でのアクセス改善や民営化などで解放して国際化が進んで、輸出の増加や対外直接投資増加で国際化を進めており、レアルプランから国際化をすすめたブラジルにも大いに参考になる。
特に1990年代から構造改革、FTAの推進、力を付けたチリ企業の対外投資の増加、銅輸出シェアの比率低下と産業の多角化、輸入関税の低下、重点セクターは銅鋼業、建設業、果樹栽培、金融サービス業、養殖業、物流、アウトソーシング業、FTA締結国との輸出入は90%以上に達している。
海外投資家のチリへの直接投資比率は世界平均の2倍以上で特にサービス業ガ26.7%を占めて鉱業の25.7%を抜いてトップ、電気・ガス・水道、運輸・通信への直接投資も大きい。
チリの対外直接投資では1990年代はアルゼンチンが多かったが、今ではブラジル、ペルー、コロンビア、特に40%を占めるサービス業、28%の電力エネルギー、24%を占める工業部門となっており、昨年3月に就任したピニョラ政権は2018年までの先進国入りを目標に年平均60%のGDP伸び率を目指している。
チリ人気質としてラテン諸国気質とは大いに違って日本人気質に非常に似ているが、階級意識が強くて自己中心的で、他人への配慮意識が稀薄なところが特徴、鉱業やインフラ関連のサラリーが高くて平均を大幅に上回っている。
乗用車、テレビ販売では日本は韓国、中国企業と競合、自動車販売では日本と韓国メーカーが60%のシェアを確保、昨年のチリの自動車販売は29万台、しかし長年に亘って銅開発や資源の権益確保などに投資をしてきた日本の直接投資は韓国や中国を大幅に上回っている。
2007年にチリは日本とEPAを締結、10年以内に貿易の92%の関税を撤廃、ビジネス環境整備の改善、双方向の貿易額の増加、南米からチリ市場でのビジネスチャンスの分析として容易な会社設立、容易な企業運営、魅力的な資源・食糧関連産業、今後も継続する中国やインドの銅需要、しかし既存鉱山の老朽化で更なる深部での開発のための採掘コスト増加、並びに北部での水資源枯渇危機など問題も抱えている。
最後に竹下幸治郎所長はブラジルと違うチリの特徴として銅、優位性を持つ多様な食品産業、最下層の人口比率が低い、積極的なFTA締結、教育熱心で少ない汚職、しかし問題点としてファミリー企業が経済を牛耳っており、また非常に保守的でアントレプレナーシップにかけるところもあると結んで講演を終えた。
続いてジェトロ・リマの石田達也所長はペルーを言えば”マチュピチュ”と100人中100人が答え、ペルー・イコール・マチュピチュのイメージが世界中に浸透、ペルーを訪問する人の72%はマチュピチュ観光で目的であると説明した。
マチュピチュはケチュア語で”老いた峰”を意味し、米国のエール大学の考古学者ハイラム・ビンガム氏が1911年にインカの遺跡マチュピチュを発見して今年で100年、しかしペルーではすでに存在していたために、再発見から100年の今年は色々なイベントが企画されて更なる観光客が押し寄せるが、一方であまりに世界的に有名なためにマチュピチュを見て、すぐ帰国するという悲劇につながっていると説明した。
堅実に経済成長を続けている今年のペルーのGDP伸び率はチリと共に6%を予想されているが、ラテンアメリカで5%の伸び率が予想されているのはこの2国だけであり、ペルーの過去10年間のGDP累積成長率60.2%と2位のコロンビアの39.5%を大きく引き離し、ブラジルの29.9%の2倍の伸び率を記録している。
世銀の今年のビジネス環境調査でペルーは南米地域でトップ、世界では36位にランク、昨年の新車販売は12万台でチリの4割、しかし人口は2倍あるので経済成長と共に市場拡大が期待できる。
マチュピチュ以外のペルーの注目点として低所得者層に人気のある庶民の音楽である”クンビア”、”サーフィンパラダイス”並びに”平静の開国”を挙げ、クンビア界の女王歌手マリソルは日常生活を唄っており、昨年ヒットした唄の歌詞の中にクレジットカードがでてきており、低所得者層へのクレジットカード浸透してきていることの表れとなっている。
リマは年間降雨量が数ミリと低所得者の住宅には屋根がないのが普通であったが、経済の発展と共に住宅建設が年間12万軒増加、水道や冷蔵庫の普及もしてきており、10年前はボデガと呼ばれる屋台風の小売店が大半を占めていたが、最近は大型化してきて品揃えも増加、富裕層はスーパーで買い物、ウオールマートなどの欧米系のハイパーマーケットはペルーには進出していないが、チリの小売業界が進出している。
“サーフィンパラダイス”では世界のサーファーに有名でペルーの波は非常に大きく上級者向きであるが、同じ海岸には初級者向きの小さな波もあるために家族ずれで楽しめる。
ペルーは今まさに波に乗っている国であり、世界金融危機の波を乗り越え、また現在の中近東情勢も産油国であるために波にのまれることはなく、また今年の大統領選挙では有力候補者3人、だれが当選しても好調な経済の波に乗れるために国民は安心してあまり関心を持っていない。
また為替の変動は経済にとって好ましくないが、南米諸国でペルーの為替は最も安定して変動幅が少なく海外からの対内投資が順調に拡大してきて、今後も堅調な経済成長が継続する。
最後の”平静の開国”では年内に発行が予定されている日本とペルーのEPA、2009年発行の投資協定(BIT),租税条約交渉に向けた動き、アジア諸国とのFTA締結、日本のTPP参加への期待が大きくて確実に開国元年に向かっていると結んで講演を終え、活発な質疑応答も行われて素晴らしいセミナーとなった。
「チリ発南米事業展開 チリの特質どう生かす?」ジェトロ・サンチアゴの竹下幸治郎所長
「南米三カ国セミナー ペルー編」ジェトロ・リマの石田達也所長
「コロンビア 新しい国づくりを目指して」ジェトロ・ボゴタの清水文裕所長
「コロンビア 資料編 カーボン地図」ジェトロ・ボゴタの清水文裕所長
「コロンビア 資料編 石油開発」ジェトロ・ボゴタの清水文裕所長

左からジェトロ・サンチアゴの竹下幸治郎所長/ジェトロ・リマの石田達也所長/コンサルタント部会の都築慎一部会長/ジェトロ・サンパウロセンターの澤田吉啓所長

講演中のジェトロ・リマの石田達也所長

講演中のジェトロ・サンチアゴの竹下幸治郎所長

会場一杯の56人が参加した南米三カ国セミナー

左から挨拶を行うコンサルタント部会の都築慎一部会長/ジェトロ・サンパウロセンターの澤田吉啓所長/同センターの大岩玲取締役








