島内憲大使のポルトガル語による講演会「世界経済・金融危機と日伯関係について」が2009年5月13日午後6時からサンパウロ州工業連盟(FIESP)に会場一杯の100人近くが詰めかけて開催、サンパウロ州工業連盟(FIESP),サンパウロ工業センター(CIESP)、文協、県連、レアル銀行並びにブラジル日本商工会議所が協賛した。
初めに島内大使は昨年の日本移民100周年記念イベントに皇太子殿下が参加され、ブラジル各地で大歓迎されて成功裏に終わったことに対してブラジル国民に感謝の意を述べ、また日系社会がブラジル社会に融合しており、日系人の方々には大きな誇りを感じており、日本からポテンシャルの大きなブラジルへの注目が格段に増加してきて、安定した政治や堅固なマクロ経済などは新興国の中でも一段と輝いており、日本を含む世界中がブラジルに注目している。
1960年代と70年代の日伯関係は日本からウジミナス、アルブラス、セニブラなど大型投資が相次いだ「ブラジルの奇跡」の一大ブームであったが、その後の20年間は失われた時代となったが、BRICs諸国の一国のブラジルは世界から再び注目されており、ここ数年は日本から官民問わずに訪問者数が鰻登りに増加して、ブラジルへの投資が急上昇してきている。
昨年の日本からのブラジルへの投資は前年比8倍以上の41億ドルに達して海外投資の10%に相当、また両国間の貿易は45%以上増加、80年代から90年代中頃までの冷え込んだ投資を忘れさせるほどブラジルへの投資が増加してきており、日本からブラジルへの投資は米国を抜いて6位に上昇、また長期投資の視点では長年続いてきた米国や東アジアへの投資から方向転換して、中国、インド、ロシアに次いで4位と大いに注目を浴びてきている。
日本は世界金融危機にも関わらず、最先端技術と資本があり、ブラジルは豊富な天然資源と日本の技術の活用で近隣諸国はいうに及ばず、世界でも経済大国への仲間入りが可能であり、地上デジタル放送の日本方式の採用で、高画質イメージのエンターテイメント、教育や社会関連プログラムのデジタルテレビ放送を開始、また日伯の官民協力で南米への日伯方式の拡大を進めて、ペルーでの日伯方式採用が決定、更に巨大なマーケットの南米全域へ拡大することで、日本とブラジルの電気・電子工業部門の成長に扉を開くことに結びつく。
また今後の両国の大きな共同プロジェクトとして、リオ州とサンパウロ州を結ぶ高速鉄道に、開設以来45年間無事故の新幹線の導入であり、他の国の高速鉄道よりも2倍の輸送能力、最も騒音が少なくて二酸化炭素の排出量も最も少ない。
この新幹線は最先端技術、安全性、輸送能力、環境面全てにおいて、最もブラジルに適したシステムであり、サンパウロ-リオ間の地形を考慮しても新幹線の優位性は動かないと強調した。
リーマン・ブラザーズ破綻後のブラジルの日本進出企業も世界金融危機の影響を大いに受けているが、多くの日本企業は健全な金融システム、ダメージが少なく大きな内需や堅固なブラジル経済の早期回復を予想している。
豊富な鉱物資源や農産物のコモディティ価格は大幅に下落しているが、今後は長期的に需要拡大で上昇する傾向にあり、ブラジル経済を更に押上げるが、日本はブラジル経済の早期回復とポテンシャルに注目して、今後も日本からの大型投資が継続すると見込んでいる。
今回の金融危機で日本は欧米や東アジアに集中していた投資から、ポテンシャルのある新興国や他の地域とのパートナー関係の構築の必要性を学んだはずであり、安定した政治・経済や北米やヨーロッパへの基地となりうる地理的位置のブラジルが大いに注目されだし、またアフリカとはポルトガル語圏のアンゴラやモサンビークとの良好な関係があり、日伯はこれらの国との新しいプロジェクトのパートナー関係の構築が可能となる。
4月に麻生太郎首相は「この危機をチャンスに変えることができた国が将来、大きな繁栄をつかめることが出来る」と述べ、日本の経済成長の新戦略として、日本主導の低炭素革命、1950年代後半から始まった日本経済の成長で3種の神器と呼ばれたのはテレビ、冷蔵庫並びに洗濯機であったが、低炭素社会の21世紀には太陽光発電、環境対応自動車、低消費電力家電が3種の神器になる。
また日本は世界に類を見ない素晴しい歴史やカルチャーがあり、海外からの旅行者の誘致、ソフトパワーと呼ばれるアニメ、漫画やコスプレのポップカルチャーなどではブラジル人が非常に関心を持っており、日伯の新しい協力関係の構築が出来る。
ブラジルは太陽光発電が可能な無限の国土、低消費電力家電は環境に優しくて経済成長に伴う消費電力の増加に対応でき、また日本では戦後のベビーブームの世代の年金入りが急増してきたために、ブラジルへの観光旅行の増加が期待できる。
30万人以上のブラジル人が日本に住んでいるが、世界金融危機の影響で大いに我慢を強いられているが、日本政府は日本で働いているブラジル人の援助のために、就労、職業訓練、住居、子弟教育、日本語習得などで幅広くサポートしており、最近では帰国旅費支援などを積極的に行なっている。
私はブラジルに赴任して2年半を過ぎたが、日本とブラジルは両国のカルチャーの統合、人的交流など理想のパートナーとし疑う余地がなく、日伯経済協力関係はもとより、国連の安全保障理事会改革案の支持国であり、常任理事国入りを一緒に目指しており、また日本とブラジルは色々な面で補足関係にあり、世界金融危機は両国関係強化では追い風となっている。
また日伯は新しいパートナー関係構築にとって最も良い局面に差し掛かっており、移民100周年は両国関係強化を更に促進しているが、今年は日本移民のアマゾン入植80周年で色々な記念行事が予定されており、皆さんの参加を心より歓迎、更なる両国関係の将来が世界に類を見ないほど輝いていることを確信していると強調して講演を終了、参加者から大きな拍手が送られ、ブラジル日本商工会議所の田中信会頭、県連の与儀昭雄会長並びにFIESPの国際関係・貿易部のトマス・ザノット代表補佐から島内憲大使に記念プレートが贈呈された。
講演中の島内憲大使
左から記念プレートを贈呈するFIESP国際関係・貿易部のトマス・ザノット代表補佐/田中信会頭/県連の与儀昭雄会長/記念プレートを受取る島内憲大使
会場一杯の100人近い参加者
左から田中信会頭/大部一秋総領事/FIESP国際関係・貿易部のトマス・ザノット代表補佐/講演者の島内憲大使