伯日議員連盟(会長:パウロ・コバヤシ下院議員)主催の「日伯経済シンポジウム」が3月3日(木)午後 2 時半からブラジリアの下院会議場で開催された。
昨年9月に小泉総理の来伯、今年 5 月ルーラ大統領の訪日に向け将来の EPA 推進も照準に入れた日伯経済の活性化がこのシンポジウムの背景下にある。
双方の行政府、議会、経済界の有識者や国際政治・経済を専攻、将来の国運を担う学生も含め、 300 名が一同に集い活発な討論会が行われた。
シンポジウムは「ブラジルと日本: 21 世紀戦略的パートナーシップ」と題しパウロ・コバヤシ会長のグローバリゼイションの時代に相応しい伯日関係の構築を説いた開会宣言に始まり、堀村大使から 昨年の小泉総理来伯とルーラ大統領の訪日を契機に日伯経済の再活性化を強調、将来どうあるべきか政府、民間、議員が手を取り合い自由活発に討論を展開して ほしいと出席者全員に訴えた。
7 年振りに来伯した河村議員はブラジルの成長躍進振りに驚きを表明、小泉総理来伯時、新構想としての日・中南米新パートナーシップの構築にあたっては 60 ~ 70 年代の資源補完関係を超越した、新しい発想での議論展開が必要だと「ブラジルと日本の Win-Win 関係構築」を例に引出し、今や国家主導の時代は過ぎ去り民間が主役である事を強調、民間投資の拡大にあたってどのような環境整備が必要とされるのか忌憚の ない意見交換を要請した。本日の討論会の成果がそのままルーラ大統領訪日時に開催される日伯経済合同委員会へ反映される事に期待していると挨拶を結んだ。
開発商工大臣の代理で出席したイバン・ラマーリョ貿易促進局長は今年に入ってからもブラジル の輸出額は過去 12 ヶ月累計で 1000 億ドルを超えている現状に触れながら、かつて日本は第 3 位の投資国であった事を振り返り、これからの日伯間相互の投資・貿易拡大に期待した。
挨拶の直後、チズカ・ヤマサキ監督の GAIJIN 2 が DVD を使いスキップに披露された。
今回のシンポジウムは 3 つのテーマが設定され最初、相互補完パートナーシップ「ブラジルと日本の Win-Win 関係構築とは」と題し 80 年代前半カラジャス鉄鉱山開発プロジェクト向け融資をはじめアルブラス、ウジミナス案件を担当された JBIC の森田副総裁が発表した。 JBIC は ODA の一環である円借款の供与や日本企業のブラジルでの活動支援を通じ長年ブラジルとの関係強化に加え、昨今のブラジル向け融資の実績から森田副総裁の熱弁は 感動的であった。 2004 年 3 月末までの対ブラジル承諾累計額は 216 億ドルにのぼり、総貸付残高は 80 億ドルとなっており、ラテンアメリカで堂々第 1 位にランク、ブラジルをどれだけ重要視しているかが分かる。
経済協力関係において具体的な 4 大分野とは何かを個別に挙げた。先ず第一に資源を巡る戦略的な長期安定確保は最重要課題だとエネルギー・天然資源および食料の分野での協力関係を強調した。
第二に投資対象としてのインフラ整備を挙げ、ブラジル政府が進めている PPP に関心を示しながら日本企業がアジア諸国で行った民活インフラの実績を自信満々に披露した。経済発展のボトルネックとされブラジル政府が最大緊急課題とす るインフラ整備に単なる投資先と言う観点に留まらず、両国の利益に適うものと言明した。
第三にエタノールやバイオ・ディーゼルといった再生可能エネルギーや CDM 関連プロジェクトを挙げ、日本の Co2 削減には排出権の獲得にあたって CDM で大きな可能性を持つブラジルに日本側も協力し、そこから得られる排出権を購入することが考えられると説明、会場の聴衆者を沸かした。
最後に真の意味での Win-Win 構築の実現には第四の製造分野における協力関係が再活性化されなければならないと断言、貿易品目が一次産品からハイテク分野である航空機やソフトなど多岐 に渡る輸出実績を高く評価、日本企業が得意とする生産・品質管理、省エネ技術・ノウハウなどの移転を柱として協力する分野はまだまだ多々ある事を強調、グ ローバル戦略の中で製造・輸出拠点として位置付け、日本企業による投資促進を期待した。
続いてペトロブラス石油公団のラエルテ・ロッシャ・ピーレス財務企画マネージャーは 70 年代以降 90 年代までを 10 年毎に区分、日本との関係プロジェクトの紹介や主要な投・融資先、 JBIC/NEXI/ 主要総合商社 / 銀行や代表的な企業を挙げ、 2006 年には 230 万バーレルの増産で自給体制が整う報告や今後の投資プラン、フレートのイノベイション、天然ガス開発・インフラ拡大、再生エネルギープロジェクトなどビジ ネス・ストラテジーも披露した。
活発な質疑応答が展開され鉄鋼再編が加速化している現状 下 JBIC の支援の可能性を打診した事に対し、ウジミナスが 25 年前に比べ見違えるほど良くなっている事に満足の表情を見せながら、各種資源マーケットで原料の確保の重要性を説き、石油 / ガスだけに留まらず鉄鉱石 / 石炭の分野でも支援可能だと言明した。また CDM に対する JBIC の心意気を再確認する意味での質問があり、 2008~2012 年の目標年度に向かって 10 %を上回る削減を余儀なくされている日本はそのプライオリテーが高く、既に 32 社の企業が参加、排出権クレジットファンドの購入について準備周到だと説明。日伯間で CDM 認証機関の協定を結びたいと、現場を歩んだ実力派の森田副総裁は特に CDM プロジェクトへの熱い抱負を述べ会場を興奮の渦に巻いた。
その他、融資保証メカニズムにも触れ、政府に直接保証、政府に保証を戴く形式、石油公団ペトロブラスなど企業の信用で融資、ブラデスコや伯銀などの信用力で色々工夫しながら融資したいとも語った。
参加した学生からもドンドン質問が飛び出し「京都議定書が発効したがそれにより生産性が低下しないのか」、「日本の政府や民間企業は核エネルギー分野(平 和利用)で技術協力は出来るのか」等、当を得た質問には間髪いれず的確に答えた森田副総裁も、「ブラジルからの食品輸入の拡大に JBIC は協力出来るのか」との専門外の質問に対しては他のセッションに委ねたいと回答に苦慮する場面も。
熱い雰囲気の質疑応答を一旦打ち切り、アントニオ・ウエノ元下議が進行役を交替。
テーマ 2 である「貿易・投資の現状と今後の展望」は JETRO サンパウロの桜井所長が周到に準備したポ語のパワーポイントを使い得意のポルトニョールで発表、一躍会場の人気者となった。表やグラフを用い非常に簡潔な表現で誰でも解る説明が受けた。
質疑応答では大使館サイドが答えるべき質問にも、大使を正面にまず断りの前置きを忘れず、一人二役を快く上手にこなしていたのが印象的であった。業種別部 会長懇談会に出席している会員であれば、貿易部会の発表を通じ又「ブラジルに外国資本を如何に誘致するか」の提言はブラジル主要各紙が取材、一般に広く紹 介されたので発表の内容を今更述べるまでも無い。
ブラジル側からも BNDES 総裁の補佐官、ジウソン・シュワルッツ氏から PPP を含めた、まさに上述の通商促進と投資誘致について発表があった。
最後のテーマ 3 の投資環境整備に於いてはヒデカズ・タカヤマ下議(パラナ出身)が進行役を努め「日本の先端的技術投資を含め、戦略的拠点としての投資を倍増させるための 方策は何か」と題し、ブラジル三井物産の大前孝雄社長から具体的な商社マンとしての鋭い力作の発表があった。
対ブラジル外資直接投資の現状と将来の展望、海外からの直接投資増大のための課題、日伯関係の活性化など一つ一つ丁寧な説明の後、日伯経済交流促進委員長 として EPA 締結の重要性と緊急性を訴え、 5 月のルーラ大統領訪日は日伯 EPA 締結に向け検討を開始する又とない絶好の機会であり、官学民三位一体の共同研究会設置の合意を強く要望して発表を結んだ。
ブラジル側はレオナルド・モレツオン リオドッセ財務担当重役からグループの沿革や歴史また業容説明および資本構成などが発表された。
質疑応答と言うよりグアルリョス空港に於ける入国審査や手続きの簡素化に関する当局への要請が GIE (外国投資家グループ)との連携で進めつつある現状報告やスラブの価格が 92 年当時 U$220/ トンから 2004 年現在 U$550/ トンに暴騰したことも話題になった。
締め括りにひょっこり笑顔で現れたセヴェリーノ・カ ヴァウカンテ下院議長、政治家らしく約 100 年前の歴史を振り返り、サントス港に上陸した移民とその子孫が、様々な分野で重要な役割を果たし、どれだけブラジル国の発展に寄与、その功績の上に今日の 日伯関係があると賛辞を忘れない。続いて堀村大使が首脳同士の交流が始まる中、このシンポジウムの意義がどれだけ大きいものか、主催者の伯日議員連盟の関 係者に謝辞を述べながら、両国の経済活性化の構築がアジア経済圏と中・南米経済圏の中核を結びつけ且つ世界経済の活性化に繋がると総括した。下院の国際関 係委員長でバイヤ大学教授でもあるアロウド・セドゥラス氏が日本から学ぶべき点は非常に多く、やがてブラジルも G8 の仲間入りになる強い意思を表示。
最後にブラジル日本商工会議所の田中 信会頭から「在 伯 30 年間で伯日議員連盟主催のシンポジウムは画期的だ」と賞賛と満足を表明、夫々のテーマの要旨を簡潔に述べた後、日伯 EPA 締結の重要性を再び強調、シンポジウムの総括を締め括った。午後 7 時半に閉会。
日本側からは河村建夫(前文部科学大臣)日伯議員連盟事務局長・日伯 21 世紀協議会座長、堀村隆彦在ブラジル日本国特命全権大使、田中 信ブラジル日本商工会議所会頭、大前孝雄会議所専任理事・ブラジル三井物産社長、金岡正洋 会議所副会頭・ブラジル伊藤忠社長、浅賀健一会議所専任理事・ブラジル新日鉄社長、瀬山雅博会議所専任理事・ブラジルパナソニック社長、工藤 章前会議所 会頭(現在名誉会頭)・三菱商事中南米総代表、森田嘉彦 JBIC (日本国際協力銀行)副総裁、桜井悌司 JETRO サンパウロ所長ほか会議所会員企業 25 社の代表者に平田事務局長も参加。
日伯経済シンポジウム参加者名簿
3月3日(木)ブラジリアで開催
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人数
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企業名
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役職名
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参加者名(敬称略)
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| 1 | Libercon Business | 社長 | 田中 信 | Makoto Tanaka | |
| 2 | 伯国三菱商事会社 | Mitsubishi Corp. | 中南米総代表 | 工藤 章 | Akira Kudo |
| 3 | 同上 | 専務取締役 | 立入秀紀 | Hideki Tachiiri | |
| 4 | 丸紅ブラジル | Marubeni Brasil S.A | 社長 | 中村純一 | Junichi Nakamura |
| 5 | 三井ブラジル | Mitsui Brasileira | 社長 | 大前孝雄 | Takao Omae |
| 6 | 同上 | 副社長 | 藤下温雄 | Atsuo Fujishita | |
| 7 | 伊藤忠ブラジル | Itochu Brasil | 社長 | 金岡正洋 | Masahiro Kanaoka |
| 8 | 島津製作所 | Shimadzu do Brasil | 社長 | 三分一克則 | Katsunori Sambuichi |
| 9 | Trench Rossi e Watanabe | Socio | Mario Massanori Iwamizu | ||
| 10 | Arima & Kanegae Corretora | 社長 | 有馬庄英 | Shoei Arima | |
| 11 | 新日鉄 | Nippon Steel | 社長 | 浅賀健一 | Kenichi Asaka |
| 12 | ジェトロ サンパウロ | JETRO SP | 所長 | 桜井悌司 | Teiji Sakurai |
| 13 | パナソニック・ブラジル | Panasonic do Brasil | 社長 | 瀬山雅博 | Masahiro Seyama |
| 14 | 同上 | 副社長 | 篠原一宇 | Ichiu Shinohara | |
| 15 | ブラジル トヨタ | Toyota do Brasil | 戦略企画部長 | 柴田達也 | Tatsuya Shibata |
| 16 | 同上 | 広報部アシスタント | 鈴木智博 | Tomohiro Suzuki | |
| 17 | Primotech21 | 社長 | 三好康敦 | Yasutoshi Miyoshi | |
| 18 | モト ホンダ | Moto Honda | 取締役 | Paulo Takeuchi | |
| 19 | K. Toyama | 社長 | 遠山景孝 | Kagetaka Toyama | |
| 20 | 三菱重工 | CBC Industrias Pesadas | 社長 | 嶋末 繁 | Shigeru Shimasue |
| 21 | 三井住友銀行 | Banco Sumitomo Mitsui | 社長 | 三角岳明 | Takeaki Misumi |
| 22 | ヤクルト商工 | Yakult | 社長 | 貞方賢彦 | Masahiko Sadakata |
| 23 | 札幌ヤクルト販売 | Sapporo Yakult | 社長 | 松園直史 | Takashi Matsuzono |
| 24 | 松尚株式会社 | Matsusho | 取締役 | 釘本 大嗣 | Hirotsugu Kugimoto |
| 25 | Kenbridge Consultant | 社長 | 河野賢二 | Kenji Kawano | |
| 26 | Brasil Marca de Excelencia | Diretor e Editor | Dirceu Brizola | ||
| 27 | Price.w.houseCoopers | Diretor | Douglas Souza de Oliveira | ||
| 28 | 同上 | coordenadora | Carolina Kazuko Sakama | ||
| 29 | 同上 | Diretor | Marco Antonio Fujihara | ||
| 30 | Blue Tree | Diretora | Sumico V. Hirose | ||
| 31 | FELSBERG, PEDRETTI, MANNRICH E AIDAR | Socio | Roberio Sulz Gonsalves Junior | ||
| 32 | Tozzini, Freire, Teixeira e Silva Advogados | Socio | Antonio Felix de Araujo Cintra | ||
| 33 | ブラジル日本商工会議所 | Camara Japonesa | 事務局長 | 平田藤義 | Fujiyoshi Hirata |
ブラジル側は主催者のパウロ・コバヤシ下議、セベリーノ・カバウカンティ下院議長、イヴァン・ラマーリョ貿易促進局長、パネルデスカッションの進行役として パウロデウガード下議・伯日議員連盟副会長、アントニオ・ウエノ元下議・伯日議員連盟名誉会長、ヒデカズ・タカヤマ下議・伯日議員連盟事務局長、プレゼン テイターとしてラエルチ・ロッシャ・ピーレス ペトロブラス財務企画マネージャー、ジウソン・シュワルツ BNDES 総裁の補佐官・ USP 経済学部教授、レオナルド・モレツオン バーレ・ド・リオドッセ財務担当重役やその他議員など大勢。








