部会長 : 林 恒清
(1)1999年の回顧 (建設業界)
1999年、1月早々の通貨切り下げの影響は大変大きく、その結果として建築主の設備投資計画の見直し、延期、中止が相次ぎ、建設工事受注は延びなかっ た。その上、公共料金、ガソリン、一部建築資材(セメント、生コンクリート等)の異常な値上りは採算面を圧迫し、受注、利益共に大変厳しい1年だった。次 に建築主を日系、通信関連、ローカルに大別して、総受注金額に対する各々の割合を98年と99年で較べてみると、日系:40%→26%、通信関連:26% →14%、ローカル:34%→60%と変化しており、日系と通信関連が激減し、その不足分をローカルで補っている状況となっている。その結果、各社共ロー カル物件に集中し、その競争は熾烈なものとなった。各社の99年の業績は8社平均で受注が当初計画値の76%、従業員数も92%となっており、こちらから も厳しい状況が窺える。(表 ―1参考)
<不動産業界>
商業ビルに 関しては、99年前半は、前年からの不調が続き、企業リストラの一環として、スペースの縮小、本社と工場の一体化等が相次ぎ入居率の確保に苦労を強いられ た。しかし、後半に入って多少の景気回復期待感に支えられ、入居希望の引合いが多くなり、全体としては前年並みの実績を残すことができた。しかし、新たな 問題として物件の立地条件に加え、ビルそのものが持つ設備機能の優劣による物件の人気度に大きな格差がみられてきた。
アパート販売に おいては、ポピュラーアパート(R$50.000~60.000)の売り上げが好調時には15件/月だったのが、1件/月まで落ち込んだ。その反面、中・ 高級アパート(R$350.000~400.000)が好調な売れ行きを見せたものの、全体としては、前年比30%程度の売り上げとなった。
(2)2000年の展望
<建設業界>
2000年に入っても、特に前半は大幅な受注増は見込めそうもない。それは、建設業はその性質上、市場の景気動向が半年から1年位遅れて影響してくるた めである。しかし、後半に入ればある程度の受注増は期待出来ると思われる。その要因として、昨年まで控えていた建築主の設備投資の再開、公共工事の増加、 通信関連分野での低価格競争から品質重視入札への見直し等が考えられる。以上のような状況から各社の2000年の受注予想は8社平均で99年当初計画値の 102%となっており、各社の意気込みが感じられる。(表 ― 1参考)
一方、採算面では引き続き厳しい状況が続くので、組織のスリム化、コスト削減、技術力のアップ、営業体制の強化等、一層の努力が必要となってくる。
<不動産業界>
商業ビルに関しては、99年後半よりテナント希望の情報量が増えてきており、本年のブラジル経済回復と共に順調に伸びるものと予想される。また現在の金 利状況が続けば、投資家の不動産投資も回復し、商業ビル、アパートの新築も増え、それに伴った仲介業務も多くなるだろう。オフィスビルにおいては、二極分 化が進むと思われる。立地条件が良く、通信インフラ、OA化、セキュリテイ等、いわゆるインテリジェント化が進んだ物件は、高い家賃設定にもかかわらず高 入居率を維持するが、老朽化した設備面での条件が劣る物件は立地の善し悪しにかかわらず、家賃の値引合戦にまきこまれ、厳しい局面を迎えよう。特に建築年 数が経過したビルについては、これに対応すべく、大規模改修、設備投資の実施が必要不可欠となってくる。
アパート販売においては、昨年に引き続きポピュラーアパートには期待が出来ない状況のため、中・高級アパートに注力することになる。そのため、市内の立地条件の良い場所に土地を購入し、品質の高いアパートを建設販売してゆくことになるだろう。
表 ― 1 各社業績 (1999年計画を100とした場合の比較)
受 注 | 従 業 員 | |||||
会 社 名 | 1999年計画 | 1999年実績 | 2000年計画 | 1999年計画 | 1999年実績 | 2000年計画 |
A | 100 | 67 | 85 | 100 | 85 | 80 |
B | 100 | 100 | 90 | 100 | 90 | |
C | 100 | 100 | 109 | 100 | 100 | |
D | 100 | 105 | 110 | 100 | 85 | |
E | 100 | 30 | 130 | 100 | 90 | |
F | 100 | 50 | 75 | 100 | 80 | |
G | 100 | 65 | 100 | 100 | 85 | |
H | 100 | 90 | 120 | 100 | 130 | |
8社平均 | 100 | 76 | 102 | 100 | 93 |