2001年上期業種別部会長懇談会-化学部会(レポート)

当部会の上流部門である石油化学、合成樹脂部門から川下に位置する写真フィルム、文具へと業界毎に以下報告いたします。

I.2000年回顧

① 石油化学、合成樹脂分野

2000年の石油化学業界は、ブラジルのマクロ経済及び自動車を始めとする工業生産の好調を受けて合成樹脂、合成ゴム、合成繊維の3大業界の好調な需要 に支えられ前年比10%伸長した。一方で前年比50%増となったエチレン誘導品の輸入、パラキシレン及びその誘導品の輸入が国産品を大きく圧迫、とくに PET樹脂の安値輸入品が国内メーカーへの価格圧力となった。更に上流部門において深刻な影響を与えたのは国際原油価格の高騰であり、年初の25ドルから 10月には38ドル、年末に33ドル(年平均28ドル)と乱高下し、これに連れて国内ナフサ価格も8月に史上最高のUS$298/トン、年末には US$294/トンとやや下げたものの不安を残して終わった。このナフサ高でエチレン以下の誘導品はコストアップを強いられた一方、上述の輸入品攻勢、電 力料金の値上げなどで総じて採算は圧迫された。

PE,PP及びPVCなどの汎用樹脂 は価格面で厳しい展開を強いられながらも根強い需要に支えられ高稼働率を維持、PPは過去2年継続して落ち込んだ生産量が1998年のレベルを超える 167万台にまで復活してきた自動車向け、及びPSは輸出、国内とも好調であったAV機器中心に状況改善が著しかった家電並びに通信機器を中心とした電 気・電子業界向け及び輸出が増加した雑貨業界の好調に伴い基本的に好調に推移した。 PCも国際的にタイトバランスで市況も高位安定、フル生産フル販売で進展。 PETも清涼飲料・水向けから食用油へシェアーを拡大、前年比10%増を記録した。合成繊維業界も国内輸出とも好調に推移。ナイロン、ポリエステルなど合 成繊維が末端衣料品の旺盛な需要に支えられ繊維用中間原料であるカプロラクタム、エチレングリコールと共に好調だった。

タイヤ業界は①交換タイヤ 2500万本 ②新車用途 800万本強 ③輸出(生産量の20~30%) からなっているが交換タイヤは景気動向に左右されるが2000年は前年比7~8%増、輸出は切り下げ後の為替メリットもあり業界各社とも増加、新車生産量増と共に増えた新車用と合わせ物量面では好調だった。

一方、合成ゴム、天然ゴム(85%を輸入)、カーボンブラックなど原材料の70%が輸入であり原油価格の上昇、為替の切り下げの影響を受けコスト押し上げ要因となっており採算は年々悪化している。

 

② 接着剤・シール剤

合樹同様シール剤、接着剤市場も自動車、部品メーカーの増産、モデルチェンジがあり前年比約20%伸長し、加工部門での樹脂使用量が10%増となり、全 体でも前年比10~12%増となったプラスチック業界と合わせ好調業種となった。 また、部品の国産化に拍車が掛かり販売チャンスが増える傾向が出てきた年であった一方、一般消費者用では中国からの偽物に混乱させられた年でもあった。 製紙用、接着剤、塗料用と多岐に渡る分野で使用される松脂化学事業は使用される業界状況によって需要はまちまちながら、

①製紙、紙パルプとも価格が回復した事より当国製紙業界は略100%のフル稼動となり、ガムロジンも含めた製紙用薬品の需要も増加

②接着剤メーカーでも自動車の増産に合わせる形で内装に使われる接着剤の消費は増加となったものの、当地のガムロジン消費量全体では大きな増加は見られなかった。

2000年の冬が霜害に見られる通り寒かった事、松脂採集開始時期の9月、10月になっても気候が回復しなかった事より原料の不足、価格の高騰を招いた が、製品のガムロジンは最大の生産国である中国が年を通して安値を維持したためこれに追随せざるを得ず、原料高、製品安となった。

③ 金属工作油

自動車生産台数が前年比大幅アップ、ドル高を背景に部品の内製化に伴い、国内生産は10%以上のアップとなり関連する機械工業も20%強のアップと見ら れ、これらに加え鉄鋼も自動車向け、輸出向けが好調で粗鋼生産も前年比+10%程度となるなどこれら好調業種向け加工用油剤も15~20%の需要増となっ たと推定され、98~99年と減少してきた販売量に歯止めが掛かり97年のレベルに回復。ただし採算面では原油高による度重なる潤滑油の値上げ(前年比 60%強)、一般管理費増などで販売量には比例しない状況となっている。

 

④ 水処理剤

需要家は石油・石油化学、鉄鋼、紙パルプに代表される大手需要家が構成するA市場と繊維、機械、食品、化学品などで構成するB市場に大きく分類され 100億ドルと言われる薬品市場で夫々40%のシェアー構成となっている。2000年はA市場の業界の好調を反映し水処理薬剤も好調だった。

⑤ 写真フィルム

切り下げ直後の99年は危惧された需要の後退は起らなかったものの、2000年については5月、12月と前年並みあるいは良かったもののその他は前年割れと 不調であった。ブラジル経済がマクロで回復基調とされるのに対し消費者物価に代表される様に非耐久消費財は逆にマイナス基調であった事、更に消費者の購買 優先度が携帯電話などの電子電気機器に向かうあるいはガソリン代の値上げに食われるなどして娯楽用アイテムの写真フィルムの消費に回ってこなかった結果と 思われ、結果としては数量ベースでは前年を割り込んだと思われる。価格的にもスローマーケットを反映し5月に市場価格の5%値下げがあり、それを11月に 引き上げたもののこの間の為替安、インフレなどでほぼ相殺され、需要喚起のためのスポット的なプロモーション等により実質値下げが繰り返され総じて99年 比低価格で動いた年だった。

⑥ 文具

ボールペン、サインペン、 マーカーなど原材料にプラスチック、染料、インクなどを使用する化学業界川下の代表的な業界。ブラジル経済の回復に合わせ98、99年と順調に伸長(98 年比1.4倍)し、2000年も10月まではまずまずではあったがクリスマス商戦を迎えた11 月、12月は低調で7月の業界見本市で成約した契約の消化が進んでいない。これは写真フィルム同様マクロ経済の好調に対し個人消費の偏りによる処大きいた めと思われる。売上の20%強が輸入品であり下期の為替安で採算が悪化、ブラジルの実感物価水準との乖離が進み問題。

 

⑦ 農薬

99年末から続いた中・南部の干ばつは2000年7月まで長期に続き00/01の大豆、コーン生産並びに冬作に多大な影響及ぼしこれに7月8月の霜害が 追い討ちを掛ける形となり、これら地域での99年末からの流通在庫の消化が進まず、各社とも販売維持のため00/01シーズンに向けた販売でのサイトの長 期化、委託販売などの通常でない取り引きの増加、期日前決済奨励、販売奨励などの形での値引きなど市場の混乱が続いた状況で2000年を終えた。一方大規 模栽培のセラード、コストを掛けない東北伯などでは気候に恵まれ、大豊作となり、棉などを中心に農薬の出荷は好調であった。ブラジル全体では99 年を上回る収穫量となったため干ばつ、霜害で一時的に作物価格の上昇が見られたものの、東北伯などからの安価な作物により全体として作物価格は上がらず コーヒー、大豆などの国際商品相場の低迷も重なり農家の農薬選別に拍車を掛ける結果となった。拡大してきた棉の栽培面積も国内需要を賄い輸出に回せるレベ ルになり、大豆などの不耕機栽培技術などの技術革新も一巡した状況で新規市場の拡大が頭打ちとなってきているが、政府のインフレ政策の影響で作物価格が上 昇しない事もあり為替、一般管理費の上昇に伴うコスト増を製品価格に転嫁出来ない、容器回収義務など環境対策コストの上昇など業界は構造的な問題を抱え始 めたと言える。2000年のドルベースの業界売上は前年比7%増の 21.5億ドルとされているが実質は99年比マイナスと見られる。2000年も大手医薬会社の農薬部門売却、切り離しなどの再編、合従連衡の動きが激しく なっておりこの1年の間に当地でも上位10社の内6社が3社に集約され、この3社で市場の50%強を占める状況が出現している。これは農薬部門に限らず化 学品業界全体に言える事で三井化学、住友化学の合併が日本でも発表されている。

⑧ 化学品輸出入

有機製品(粗原料)、中間生産材などは好調だったが末端消費材に近い商品群は不振と、二極化した。また経済が回復してきたアジア向けなどへ商品が回され 運賃が高く市場価格が安い当国へ玉が回ってこない傾向が強かった。一般化学品では中国品などとの差別化が図りにくい事もあり価格競争力で劣勢となってい る。 また当地大手需要家である欧米マルチナショナルはGlobal Procurementと称して原材料の集中購買管理を強めており、当国内での販売交渉が閉ざされる傾向が強まっている。

 

II.2001年展望

2001 年のGDP伸び率が政府予測の通り4.5%程度で推移し大きな国内経済変動要因がないとすれば、原材料・素材産業としての化学/石油化学は昨年からの高稼 働率を少なくも本年中央まで維持出来ると判断され、マクロの工業生産が高位であれば生産財、中間生産財向けを中心に好調を維持出来ると思われる。一方、非 耐久消費財など小売商部門に近い業界では、消費者物価と卸売物価指数の乖離に見られる通り、為替、ナフサ、経費増などのコストアップ要因を最終価格に転嫁 することが難しい状況が続く事が予想され、採算面では引き続き厳しい環境となる可能性がある。また紙パルプなど輸出比率が相対的に高い企業は米国経済の変 調に伴い影響を受ける可能性高いがドル安、ユーロ高となり欧州向けに活路を見出せると思われ、化学部会全体を見れば2001年は生産増を含め好調を維持出 来ると思われる。なお、国内エチレンセンターCOPENEの支配権をめぐる競売が昨年末不成立に終わり、本年3月までの間に再度競売実施が予定されている が、カマサリコンビナートの資本再編のこの動きは他のエチレンセンターの資本再編にも及ぶ可能性を秘めており目が離せない。

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=30783