2001年上期業種別部会長懇談会-貿易部会(レポート)

2000年回顧

総 括

2000年度貿易収支に対するブラジル政府の当初の見通しは、50億ドルの黒字であったが、これは年央には早くも疑問視されるようになった。 9月以 降、年末にかけ勢いを失った輸出に対し旺盛な輸入がそれを凌駕し、一気に赤字基調に転じた。 この間、黒字幅について政府見通しは当初の 50億ドルから44億ドル、その後28億ドルと漸減し、結局、赤字が確定した年末になり、やっと▲7億ドルの発表がなされた。 しかし結果的には赤字で終 わったものの、赤字幅としては 1995年以来の小幅なものに留まった。貿易収支の予測と結果がここまで大きく乖離した主な理由として次ぎが考えられる。

① 国内景気の回復
企業が国内市場を優先 旺盛な原料・中間財の輸入
② 国際商品相場の乱高下
原油価格の高騰農産物輸出の低迷
③ 稚拙な輸出政策    
④ 天候異変による農産物の輸入増大    

 

(単位:百万ドル)
貿易収支(1‐12月)
 
2000年
1999年
増減
%
輸出
55.086
48.011
7.075
14.7
輸入
55.777
49.210
6.567
13.3
貿易収支
691
1.199
508
 

 

(単位:百万ドル)
メルコスールとの貿易収支
 
輸出
輸入
貿易収支
 
対メルコスール
対アルゼンチン
対メルコスール
対アルゼンチン
対メルコスール
対アルゼンチン
1999年
6.777
5.363
6.721
5.814
56
451
2000年
7.732
6.232
7.796
6.843
64
611
増減率
14.1%
16.2%
16.0%
17.7%
214.3%
35.5%

 

対メルコスール向け輸出は堅調に 14.1%増を記録したが、一方、輸入も 16.0%伸びた。貿易収支は再び赤字に転じ $64百万の赤字となった。 アルゼンチンとの貿易は同国の政治・経済の動揺を勘案すれば堅調に伸びたと言えよう。

 

輸出

(単位:百万ドル)
2000年の輸出構成(1‐12月)
 
2000年
1999年
増減率(%)
一次産品
12.559
22.8%
11.828
24.6%
6.2%
工業製品
41.029
74.5%
35.311
73.5%
16.2%
半製品
8.499
15.4%
7.982
16.6%
6.5%
完成品
32.530
59.1%
27.329
56.9%
19.0%
その他
1.498
2.7%
872
1.8%
71.8%
合計
55.086
100%
48.011
100%
14.7%

 

輸出は対前年比14.7% 増加し、全分野で伸びた。とくに顕著な伸びを示したのは工業製品の完成品であり、中でも携帯電話を中心とする通信機器(115.2%増)、航空機 (72.3%増)、乗用車(55.3%増)など比較的付加価値の高い商品の増加が目立つ。 中でも航空機は単独で 31億ドルの輸出を記録した。 地域別には東欧、中近東を除き平均的に伸びているものの、中でも経済が好調であった米国とALADI諸国向けの伸びが大き い。

一方、ブラジルの代表的輸出品目の一つであるコーヒー豆はコーヒー版OPEC機 構構築を狙うブラジル政府が世界の主要生産国に呼びかけ、国際カルテルを結んだ。しかし結果的にこれを守ったのはブラジルだけとなり、ベトナム、インドネ シアなどの新興生産国に市場を奪われるだけの結果となった。このため、 1999年は 22億あった輸出が2000年は 15.6億ドルまで 6.4億ドル(▲29%)の落ち込みとなった。その他の農産物も国際商品相場の低迷により、苦戦を強いられたものが多かった。

 

(単位:百万ドル)
主要地域・国別輸出(2000年1-12月)
 
2000年
1999年
増減率(%)
構成比率(%)
2000年
1999年
E.U.
14.784
13.736
7.6
26.8
28.6
ALADI
12.902
10.560
22.2
23.4
22.0
メルコスール
7.733
6.778
14.1
14.0
14.1
その他ALADI
5.169
3.783
36.6
9.4
7.9
米国
13.366
10.849
23.2
24.3
22.6
アジア
6.324
5.732
10.3
11.5
11.9
日本
2.472
2.193
12.8
4.5
4.6
東欧
972
1.175
▲17.3
1.8
2.4
アフリカ
1.347
1.336
0.8
2.4
2.8
中近東
1.338
1.496
▲10.6
2.4
3.1
その他地域
4.053
3.127
29.6
7.4
6.6
合計
55.086
48.011
14.7
100.0
100.0

 

輸入

(単位:百万ドル)
2000年の輸入構成(1‐12月)
 
2000年
1999年
増減率(%)
資本財
13.589
24.4%
13.555
27.5%
0.3
原料中間資材
28.521
51.1%
24.042
48.9%
18.6
ナフサ
1.859
3.3%
1.115
2.3%
66.7
消費財
7.305
13.1%
7.356
14.9%
▲0.7
非耐久財
3.931
7.0%
4.174
8.5%
▲5.8
耐久財
3.374
6.0%
3.182
6.5%
6.0
燃料、潤滑油
6.362
11.4%
4.257
8.6%
49.4
原油
3.191
5.7%
2.170
4.4%
47.1
関連製品
3.171
5.7%
2.087
4.2%
51.9
合計
55.777
100%
49.210
100%
13.3

 

輸入も全分野で拡大したが、原油相場の高騰に伴いとくに原油、燃料、潤滑油等いずれも前年対比約 50%増となった。原油は数量面では対前年比約▲16.9%減少しているものの、金額面では 1999年の 22億ドルに対し 2000年は 32億ドルと 47.1%もの高い伸びを示した。 これは平均単価が $119.2/t(1999年)だったものが 2000年には $211.0/tと 77%もの値上がりとなった結果である。またこれはブラジルの産業構造に負うものだが、国内経済および輸出が伸びるに伴い、いまだ輸入に大きく依存してい るそれらの原料・中間資材の輸入も大きく増える(対前年比 18.6%増)。 これらの理由により輸入は2000年通年で13.3%と前年に続き高い伸び率を示した。

(単位:百万ドル)
主要地域・国別輸入(2000年1-12月)
 
2000年
1999年
増減率(%)
構成比率(%)
2000年
1999年
E.U.
14.048
15.022
▲6.5
25.2
30.5
ALADI
11.660
9.460
23.3
20.9
19.2
メルコスール
7.796
6.721
16.0
14.0
13.7
その他ALADI
3.863
2.739
41.1
6.9
5.6
米国
13.002
11.880
9.5
23.3
24.1
アジア
8.593
6.477
32.3
15.4
13.2
日本
2.960
2.576
14.9
5.3
5.2
東欧
1.162
704
65.0
2.1
1.5
アフリカ
2.908
2.224
32.7
5.2
4.5
中近東
1.560
1.078
44.7
2.8
2.2
その他地域
2.856
2.365
20.8
5.1
4.8
合計
55.777
49.210
13.2
100
100

 

地域別輸入では ALADIが 23.3%増であるがこれは、原油及び、関連製品の価格上昇の結果である。 メルコスルからの輸入は 78億ドルに達し、この内の 68億ドルがアルゼンチンからであり原油(155.7%増)、トーモロコシ(149.3%増)、ナフサ(94.5%増)、貨物車両(18.7%増)などで ある。 “その他のALADI諸国”からは41.1%増であったが、ボリビアからの天然ガス輸入が高い伸び率(506%増)を示した。 また E.U からの輸入のみが落ち込んでいるが、これは Euro高に負うところが大きいとも思われる。

 


2001年の貿易収支予測

総括

2001年度の貿易収支は引き続き楽観を許さない。 その理由として先ず、主要輸出相手国の経済成長率が 2000年度対比軒並み低下し、輸出の伸びが不透明である。

とくに米国は輸出入とも20数パーセントを依存しており、景気減速がソフト・ランディング出来たとしても、対象が広範囲に及ぶだけにその影響は深刻である。

またメルコスール向け輸出も最大相手国であるアルゼンチンが長期かつ構造的不況に晒されており、同国の景気回復は予断を許さない。 一方、アジア諸国は 再び景気減速に転じており、これに伴い為替も下落している。 その結果、アジアの輸出競争力は高まりつつあり、相対的にブラジルの輸出競争力が弱まりつつ ある。

しかし、一方、原油価格は正常化しつつあり、量的にもペトロブラスの自給率も順調 に上がって来ている事から、昨年度のような突出した要因になる事はないと思われる。また米国あるいはアルゼンチンなど外的要因でブラジルの経済成長が影響 を受けた場合は、経済活動の低下に伴い原材料・中間材の輸入も同時に低下すると見られる。

ブラジル政府は$10億の黒字を予想しているが、民間金融機関では見方が分かれている。 収支トントンを挟み、農産物の収穫高、一次産品の国際相場、米 国・アルゼンチンなど主要貿易相手国の政治・経済動向及び国内景気などの要素が加わり、収支は ▲$10億~+$10億の範囲に留まると思われる。但しトレンドとしては引き続き輸出、輸入とも10%前後の伸びを示し、かつ双方の金額が大きく乖離する 事はないと思われる。

 
2000年度
 
2001年度
ブラジルの輸出依存比率
米国

5.2%

3.9%
24.3%
EU
3.6%
3.3%
26.8%

 

輸出

一次産品の中の農産物については余程の天候異変がない限り、大豆を中心にほとんどが昨年の収穫を上回る。ただし、国際相場は需要国である先進諸国の国内 景気に左右される面も多く予断を許さない。また、伝統的輸出商品の一つである鉄鉱石は、世界の粗鋼生産に比例するが、恐らく数量面では前年比微減、価格面 で微増。全体としては昨年並かと思われる。鉄鋼製品は製鉄所の高炉補修が集中する事から恐らく減少。その他の工業製品、とくに完成品の輸出比率は堅調に増 加して行くと思われるが、これも相手国の経済に大きく左右される。全体としては昨年同様10%前後の伸びを示し600億ドル前後に達するものと予想され る。

原油価格の動向が一番の決め手となろうが、国際相場は沈静化しつつあり、金額で昨年 を上回る事はないと思われる。原材料、中間財については国内景気が上向けばその分、輸入が増えるのは避けがたく、引き続き大幅な伸びを示すと思われる。し かし資本財については民営化後の設備更新も一段落し、大幅に伸びる事はないと思われる。輸入の増勢は避けがたいものの、輸出と輸入とが収斂する傾向にあり (添付-4参照)、2001年度の輸入は輸出同様10パーセント前後の伸びを示し、 600億ドルを超えるものと思われる。とくに穀物輸出が本格化する4月までは2000年度の輸入契約残の入着により、入超で推移するものと思われる。

 

予測機関
IPCA
GDP
SELIC(年末)
為替(年末)
貿易収支
ブラジル政府機関
4.0%
4.5%
実質金利で

$10億

 
BBV

4-5%

4-4.5%
14.0%
2.05
n.a.
Merrill Lynch
4.5%
3.7%
15.75%
2.05
n.a.
Banco Inter
         
American Express
4.3%
4.1%
14.5%
2.03

$9億

CitiBank
4.0%
4.0%
14.6%
2.0
▲$16.9億
東京三菱銀行
4.5%
3.5%
14.2%
2.05
$0億
住友銀行
4-5%
3.5-4%
13.5-14.5%%
1.9-2.0
$0-10億

 

 

主要品目別輸出実績(1月~12月)
(単位:百万ドル)
主要品目
輸出金額
 数量 増減率(%)

 数量 増減率(%)

 $/t平均単価 増減率(%)

2000年
1999年
飛行機
3.054
1.772
72.35
55.88
10.59
鉄鉱石
3.048
2.746
11.00
12.23
▲1.09
大豆
2.188
1.593
37.35
29.16
6.32
乗用者
1.768
1.139
55.22
46.56
5.97
大豆粕
1.651
1.504
9.77
▲10.12
22.13
送受信用機器
1.635
760
115.13
45.82
47.59
1.617
1.342
20.49
19.64
0.70
パルプ
1.601
1.243
28.80
▲3.17
33.06
コーヒー(豆)
1.559
2.230
▲30.09
▲23.97
▲8.05
金属(半製品)
1.360
1.096
24.09
▲2.59
27.41
自動車用部品
1.206
1.229
▲1.87
1.26
▲3.14
自動車用エンジン
1.064
1.043
2.01
2.70
▲0.65
オレンジ ジュース
1.019
1.235
▲17.49
4.82
▲21.27
アルミ
946
863
9.62
▲6.54
17.21
製鉄製品
859
796
7.91
▲12.30
23.01
タバコ(葉)
813
884
▲8.03
0.15
▲8.14
鶏肉
806
875
▲7.89
17.67
▲21.78
砂糖(粗)
761
1.162
▲34.51
▲44.50
18.04
革/皮革製品
756
595
27.06
1.04
25.87
ポンプ、コンプレッサー
725
679
6.77
13.26
▲5.71
貨物用車両
696
626
11.18
20.14
▲7.45
タイヤ
525
511
2.74
10.23
▲6.87
木材
520
497
4.63
14.14
▲8.48
紙製品
518
537
▲3.54
▲17.74
17.27
その他
24.391
21.055
15.84
n.a.
n.a.
総合計
55.086
48.011
14.74
   

 

主要品目別輸入実績(1月~12月)
(単位:百万ドル)
主要品目
輸入額
 数量 増減率(%)

 $/t平均単価 増減率(%)

2000年
1999年
増減率(%)
原油
3.191
2.169
47.12
34.28
21.60
送受信用機器
1.941
1.759
10.35
▲4.21
17.34
ナフサ
1.858
1.116
66.49
40.55
24.44
半導体電子部品
1.707
1.060
61.04
21.36
8.46
自動車用部品
1.580
1.423
11.03
17.39
▲7.68
通信用機器
1.349
866
55.77
69.94
34.48
燃料
1.271
692
83.67
▲9.12
59.24
人/獣用医薬品
1.253
1.311
▲4.42
16.51
0.20
乗用者(含むCKD)
1.211
1.214
▲0.25
21.88
0.19
電算処理機器
1.036
826
25.42
24.47
31.12
精密化学品
935
1.003
▲6.78
71.54
▲25.46
内燃エンジン/部品
897
973
▲7.81
▲15.17
▲32.51
小麦
865
832
3.97
15.80
9.71
検索用機器・器具
855
765
11.76
15.80
6.27
電気モーター・発電機
757
960
▲21.15
▲11.95
7.06
ターボ エンジン、部品
736
596
23.49
▲5.07
n.a.
飛行機、ヘリ用部品
634
521
21.69
41.31
▲5.58
ベアリング、歯車
621
502
23.71
36.71
▲11.12
肥料
580
433
33.95
▲10.26
0.61
化学品
550
557
▲1.26
▲11.93
41.75
ポンプ、コンプレッサー用部品
525
467
12.42
31.11
▲19.29
石炭
521
529
▲1.51
90.00
▲2.99
その他
30.910
28.698
7.71
n.a.
n.a.
合計
55.783
49.272
13.21
   

 

 

 

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