渡辺部会長発表
ポイント
- 業界にインパクト与えた2点 ― 電力危機と為替変動
- 和食ブーム続くが、支払い遅延が深刻化
- 加工食品業界は新製品で勝負
- EU狂牛病で大豆、ブロイラーは記録的輸出
- コーヒーは世界的供給過剰で相場低迷
渡辺:食品部会の報告をさせて頂きます。まず、最初に業界全体として、2001年の下期、それから2002年上期の概況見込み報告、その後、業種別のトピックスをいくつか報告し、最後にまとめと展望、というかたちで終わらせて頂きたいと思います。
1. 業界全体
まず2001年の下期の概況ですが、食品業界に大きな影響を与えたものが二つありました。他の業界もそうだと思いますが、一つは電力危機で、もう一つは為替変動ということです。
ただ、電力危機に関しては、明の部分と暗の部分が出て、明の部分はスーパーマーケットが販売拠点となる家庭用の加工食品、具体的に言いますと、即席麺とか調味料。これはつまり、家庭内で調理をする機会が増えたことが原因で販売を伸ばしております。
暗の部分はこれと裏返しになりますが、外食産業、及び冷凍食品、もしくは購入後、常時冷蔵庫に入れておかねばならない商品。日本酒の例でいいますと、生酒を今まで取り扱っていたところが、飲むときだけ冷やせばいい、一般のお酒へのシフトが進んだ事です。
そ れから為替変動、やはりこれも明の部分はあり、米同時多発テロの関係もありますが、レアル安から海外脱出富裕層の国内残留により、年末の観光レジャー等の 活況とともに、レストランへ人が流れたこと。レアル安によりコーヒー、乳酸飲料、調味料等の輸出に価格競争力がついたこと。ただし、アルゼンチン向けだけ は、かなりダウンをしている状況です。為替変動の暗の部分ですが、これはもう各業界同じでしょうが、輸入品価格上昇によってコストアップが生じている。耐 え切れずに10月から値上げをした会社が2社ほどあります。
今年上期の2ポイント ― インフレと金利
2002年上期のポ イントとなるのは、二つほど予想されますが、これはインフレと金利の問題です。まず、インフレは、去年の為替変動によるコストアップを吸収しきれていない 企業がまだ、だいぶあるように思います。去年なんとか我慢してきたが、やはり年が変わってから、値上げという声がちらほら出て来ております。
レ アル安によるコストアップは周知の事実なので、値上げを実施しても取引先や顧客から、最近の2、3年前とはだいぶ様相が違って来て、それほど抵抗がないと いう事実があります。従って、最終的には消費者にその価格が転嫁されるケースが増えることが予想され、インフレ指数を押し上げる可能性が出てくるだろうと 思われます。
もう一つの金利は、いま19%と高止まりの状態ですけれども、下がり出すと消費財、特に飲料とかレストラン関係は、やはり販売増の期待がかかるだろうと言うことです。
2. 業界トピックス
業種別のトピックをいくつかご紹介いたします。
ま ず、外食産業ですが、サンパウロでは年末に、和食レストランが立て続けにオープンしました。引き続き和食ブームは続いています。ただし、債権回収が悪化し ております。これは、飲食店を相手に商売している食材卸に最も顕著に出ていましたが、去年あたりから、ついに飲料を専門に卸している卸でもちょっと支払い が滞ってきている。これは、例えば高級なバーなんかは、今まで支払いは心配なかったけれども、そういうところまで支払い遅延が出て来ていると言うことで、 支払い不能が広く蔓延して来ているのではないかと。もともと水商売ですので、これは覚悟の上ですが、かなり状況は厳しくなって来ていると言うことです。
それと、今年はワールドカップが6月にあります。98年6月のワールドカップの時は、レストラン業界が大変大きなダメージをくった。というのは、時間帯が ちょうど夕方の4時とか6時の試合が多くて、だいたい家でテレビを見ながら、みんなで食事をとったんじゃないか、と思います。今年は明け方の3時半、6 時、8時半の時間帯になるので、あの時ほど悪影響は出ないのでは、と言うふうに期待しております。
新製品発売増える
それから飲料関係。味の素さんが粉末ジュース業界に参入しました。粉末ジュース業界は、ブラジルの食品の中でも10位以内に入る非常に大きな市場。そこで、売上を順調に伸ばしており、家庭内事業の主力商品に育ちつつあると言うことです。
それからヤクルトさんが昨年10月に新製品ヤクルト40、これは一本あたり400億のヤクルト菌を含んでいる新製品なのですが、これを発売しました。ただ し賞味期限が15日ということで、一般スーパーマーケットには卸せない商品。つまり、ヤクルトおばさんによる、口コミで直接販売をしている商品ですので、 量的にはまだこれからと。ただし、今年は本格的な拡販も検討したいということです。
即席麺関係では、日清味の素さんの新製品「クレモーゾ」がヒットしまして、販売増にかなり寄与しております。ただし、販売は好調ですが、原材料の輸入比率が高いために増収減益傾向。
調味料ですが、国内調味料市場は2001年下期で3万7600トン、前年比で106%の成長と堅調でした。
農畜産物
それから、農畜産物の輸出については、先ほど柳田さんのほうから詳細にご説明がありましたので、ポイントだけにしますが、大豆、ブロイラーは狂牛病様様と いうか記録的な輸出になった。砂糖は、1月からガソリンへのアルコール添加量が22%から24%になったので、アルコール生産が増える傾向にあるのではな いか。
オレンジジュースは、一気に供給不足からFOB価格が上がりましたが、今年は雨が多いのでまた豊作傾向ということです。
ブラジルの国際発言力低下 ― コーヒー
コーヒーは、国際コーヒー機関、これはロンドンに本部があり、代表が今までブラジル人だったのが、コロンビア人に代わったそうです。そういう意味で、ブラ ジルコーヒーの世界的な発言力は若干低下している状況にある。また、国内でも政策不在の感じで相場が非常に不安定。コーヒー農民が非常に疲弊している状況 だそうです。コーヒーの世界相場は先ほどご説明ありましたけれども、依然として供給過剰から記録的な低迷。ただし、輸出についてはレアル安から若干競争力 がついたと。
世界的な市場を見ますと、ロシアのインスタント・コーヒーの消費が非常に伸びている。それから、シアトル系とかイタリア・エス プレッソ系とか言われています、このへんの勢力が非常に伸びてきている。ブラジルは世界で2番目の消費大国ですけれども、消費は頭打ちで、こんな低迷な中 で生き残り策として高級化路線ですが、ミナス・ジェライスのグルメコーヒーなどが出て来ていると言うことです。また、ブラジルのチェーンでは最大手になり つつあった「カフェ・ド・ポント」、これがアメリカの企業に買収されたという情報もあります。
プロポリス、ライバルは中国
最後にプロポリス。ブラジル・プロポリスは輸出がほぼ中心で、相手としては日本がメインで、ヨーロッパ、中近東へも輸出しております。ライバルは中国で、 ブラジルの約4分の1の価格で出ております。若干レアル安で去年は輸出競争力がついたが、ここで日本の不況の影響が出てまいりまして、日本の会社からの支 払い不能も出てきて、頭を痛めています。
3. 業界のまとめと展望
最後にまとめと展望 ですが、2001年度の食品業界は、売上はそこそこ、ただし減益傾向、つまり、増収減益傾向だった。私もこの3月で丸4年になりますが、「ブラジルの経済 は分からない」というのが、最近の気持ちで、田中さんが何時もおっしゃっている「年初楽観だと厳しい年になるかも知れない」というのは、かなり当たるので はないか、という気がしております。そういう意味では、今年は気を引き締めて行かなければ、という事になります。
ただ、食品業界は、景気があまりよくなりますと、消費者は耐久消費財にお金を使うようになり、デイリーの食品にはあまりお金を使わなくなる。去年はその逆で、景気があまりよくなかったために、高いものにお金を使わなかった。
いずれにしましても、景気がどちらに振れてもいいように、確実に利益を出せるように、為替、金利、インフレ等ですね、きちっと状況を見ながら、やはり新製品の投入とか、あるいは、顧客の維持、拡大に努めて行くという事しかないと思います。