2001年上期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会

  • 鉱工業、2千年は6%強成長
  • 貿易は50億黒字予想が7臆㌦赤字
  • 現在のドル相場は75%切下げになっている(99.1以来)
  • 原油が不安定要因
  • 輸出増、為替切り下げのイタチゴッコ
  • 2年後の大統領選向け動き出す年

 

「時間計測係奮闘記」

赤嶺副委員長時間制限を説明

懇談会に進む前に、今日始めてお越しになった方がおられますので、時間計測の件について説明します。超ご多忙中の方々ばかりですので、各部会長のご発言 の所要時間は各々10分間ということになっております。9分の時点で私がチンと一回ベルを鳴らし、10分の時点で2回鳴らします。コンサルタント部会長の 田中信先生の発言が終わると、私も肩の荷が下ります。まあ冗談はさておいて、各部会長よろしくお願いします。くれぐれも時間厳守で参りたいと思います。

△赤嶺副委員長の10分間時間厳守協力の呼びかけが奏効、“延長常習部会長”も今回は10分以内にまとめあげ、まずはメデタシ。 (編)

 

●先行きバラ色”観測には疑問

田中: それでは私の方から発表させて頂きます。昨年は、いまお話がありましたように非常に順調で、約4%の成長。特徴的な事は、今まで2年、工業がマイナス続き だったのが昨年は6%以上成長したということです。インフレも低かったし、財政収支も目標を達成した、金利も5回引き下げた。それから外資の流入も順調 で、一昨年を上回る300億ドル超の直接投資の流入があって、経常収支の赤字もカバーできた。問題点としましては、一つは貿易収支が不満足であったこと。 年初、政府は50億ドルプラスの予想をしたが、実績は7億ドルのマイナスだったという事。

二つ目は委員長からお話がありました海外の不 安定要因。とくにアメリカ経済とアルゼンチンの危機、それから原油価格の高騰が色々な面で影響したということです。要するに国内経済は順調、国内の政治情 勢も色々ありましたけれども、ほぼ安定していたが、海外要因は不満足で不安定だったという事じゃないかと思います。

2001年ですけど も、本年の経済も昨年並み、または昨年以上に順調に行くというバラ色の見通しが多いということです。ただ本年は昨年と同じ様な問題点を引きずって行く、対 外的な問題をひきずって行くと。まあ、それにプラス、国内の政治的な要因が加わるかなという風に考えております。

私個人としては、「大方が言うような昨年よりもバラ色という風な見方が果たして出来るかな」という点で疑問を持っております。むしろ昨年より若干厳しくなるのではないかという感じがしております。

 

●高度成長なら輸入増

困難な貿易収支改善

まず第一は貿易収支問題ですけど、99年1月に大幅切り下げをやりましたけど、現在のドル相場は75%切り下げぐらいの水準なのに貿易収支は改善しない という問題ですね。これはもっとキチンと詰めないといけない問題だと思います。私の感じとして申し上げますと、一つは輸入の増加が予想以上であったという 事です。それは一つに原油の輸入額が増加した。原油価格が2年間で3倍に上がり、それに伴って原油価格が上がったこと。本年は輸入量も輸入額も減る可能性 が非常に大きい。不安定要因のひとつですので、どうなるか分かりませんけど、一応減る可能性は強い。

それから2番目の問題は、景気上昇による原材料・部品など中間財輸入の増加であります。とくに本年は、政府が昨年の成長率約4%よりも更に高い

 

●世界の輸出の0.9% ブラジル輸出のシェア

4.5%と言っておりますので、それであれば、更に輸入が増加する。とくに中間財、原材料、部品などの中間財分野は増加する。中間財の分野はすでに、こ こ一年以上、設備がフル稼働状態なので、余計にその問題が出てきます。それから増設しようとしても機械の大部分が輸入に頼らなければならないという問題も あり輸入の増加が多く、輸出の増加が不十分だという事です。

確かにここ数年、輸出の伸びが低かった。去年は二ケタの伸びをしておりますけども、世界のシェアから見ると良くなっていない。ブラジルも80年代は世界の輸出額の1%を超えるシェアを持っていたのですけど、現在は0.8%から0.9%ぐらいで、改善していない。

それから3番目は為替の問題です。一年ぐらい前までは、政府関係者の中に、為替と関税ですね、ブラジルの輸入税との関係が理想的だと自画自賛する意見も 非常に多かった。というのは、去年は1.8から為替がスタートして3月頃は1.7ぐらいまで下がってかなり安定しておったけれども、最近は非常に上がって きておるという事で、構造改革とかブラジルコストの改善をしないで、輸出の増加をしようと思えば切り下げの繰り返しになる「イタチゴッコ」みたいになるの ではないか、という風な意見も出てきています。

それから2番目は対外収支の問題です。去年と違い、今年は直接投資で経常収支の赤字をカ バーするには若干不足する。直接投資が減るといっても、今後も高水準を続けるわけですけど、増加テンポは一段落するという事ですね。それほど、しばらくは 大きな増加はないのじゃないかと。その半面、利益配当の送金が増加する。そういうわけで対外依存度が高まります。

それから次は海外要因 ですね。米国の経済、これもハードランディングか、ソフトランディングかの問題。恐らく、ハードにはならないだろうという期待は強いわけですが、成長率の 低下というのは、ほぼ確実だという事で、すでにかなり急激に成長率が落ちてきており、それに伴って、世界の経済成長率も落ちるし、従って、ブラジル辺りの 輸出にも影響が出てくるという事だと思います。

 

●IMFの救済融資出たが、 対亜不信感は去らず

それからアルゼンチン。これはご承知の通り400億ドル近い巨額のIMFの救済融資を受けて、小康状態になりましたけども、依然として国際金融界の不信感は残っています。

それから原油価格。これはずっと上昇し去年の10月頃にピークを打ったのですけど、OPECの戦略としては、ただ安定した収入を得ようとの戦略に見える ので、おそらく25ドルから28ドルぐらいを目安にして“あまり上がらないようにするけど、あまり下がらないようにもする”という事で、さる1月のウィー ンでのOPEC会議では日量150万バレルの減産を決定しております。原油の需給関係だけではなくて、この過去2年間の上昇には、投機マネーが絡んでおる という説も有力であるので、もしそういう事であれば、依然としてまだ、大きな不安定な状態が続くということが考えられます。

それから最 後に国内の政治要因。来年大統領選挙があります。まだ2年近くありますけど、去年頃から色々な動きが出てきて、今年は更にそれを前提にした動きが続くだろ うと。とくに本年は、2月14日に行われる両院議長選挙を巡って、波乱含みのスタートとなりましたので、政治情勢がかなり今年はガタガタする可能性がある という事です(2月1日現在)。

2001年上期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会(レポート)

2000年回顧

●工業主導の成長

99年後半より回復を始めたブラジル経済は、2000年に入ってから一段と上昇速度を速めた。99年の成長率0.82%に対し、2000年は、 3.89%成長(第3四半期まで累計前年度比)した。しかも内訳は、99年は+8.99%という農牧畜業に支えられ、工業は-1.66%とマイナス成長で あったのに対し、2000年は、農牧畜業も+3.36%成長したが、工業が+4.62%で主導的役割を果たした。

レアル・プラン以降で見ると、工業成長率は97年に次いで2番目に高く、GDP成長率でも、95年に次ぐ年であった。

(註)工業生産1~11月累計では前年同期比+6.4%(IBGE)。

 

●財政目標達成確実

IMF救済契約初年度の99年に引き続き、2000年も一次収支黒字目標367億レアルに対し、11月までの累計で、415億レアルの黒字と、すでに48億レアル突破している。

IMF関係救済融資殆ど返済

98年12月のブラジル危機にあたり、IMF、各国中銀(日銀を除きBIS経由)から320億ドル(これとは別に、世銀、米州開銀90億ドル計410億 ドル)の緊急融資を得、200億ドルを引き出したが、すでに182億ドルを返済、現在18.2億ドルを残すのみとなった。

 

●コントロールされたインフレ

99年1月のレアル切り下げにより、インフレ昂進が懸念されたが、IPCA(拡大消費者物価指数)は8.94%と、目標8%(上下2%ポイントのアロウアンス)に収まった。

2000年も、異常干ばつ、異常寒波による食料価格値上がり、国際原油価格高騰による燃料等、公共料金大幅値上げなどにより、インフレ再燃が懸念されたが、後半以降軌道に乗り、目標6%に対し5.97%で収まった。

 

●適切な金利政策

99年1月のレアル切り下げによる混乱回避のため、45%まで引き上げられた基礎金利Selicは、99年末には19%まで引き下げられていた。 2000年に入ってからも、原油価格上昇は継続、更に米国経済の先行きに対する不透明感、株価の変動、年後半のアルゼンチン危機の深刻化、トルコ危機の発 生など海外情勢の不安定要因のため、中銀は慎重な金利政策の運営を行った。しかし、国内経済の良好なパフオーマンスにより、2000年は年間5回の引き下 げを行い、15.75%と1986年クルザード・プランいらい最低の金利水準で越年した。

 

●不満足な貿易収支

2000年の輸出は551億ドルで、99年比14.7%とレアル・プランいらい最高の、しかも97年いらいはじめての2ケタ増加率となった。今日のレー トで75%に高止まりしている大幅なレアル切下率などによる、工業製品輸出好調がその主因である。一次産品輸出は、コモデイテイ価格引き続き低調のためも あり、伸び悩んだ。

輸出好調にもかかわらず、輸入も558億ドルと、前年比13.3%と大きく伸びたため、政府の黒字期待にもかかわらず、貿易収支は7億ドルの赤字となった。

輸入増加の主な理由は、原油輸入額増加と工業生産拡大による原材料、部品など中間財及び設備増強のための資本財輸入増加によるものである。

 

●引き続き順調だった直接投資

直接投資は306億ドル流入し、99年の300億ドルを上回った。

 

●海外不安定要因により上昇した ドル・レート、下落した株価

石油価格上昇、米国株価下落、アルゼンチン経済不安などの海外不安定要因は、ブラジルの実体経済には殆ど影響なかったが、ドル相場上昇、株価下落と金融市場にはインパクトを与えた。

2000年ドル・レートはR$1.802でスタート、3月はR$1.721まで下落した。その後上昇に転じ、R$1.951で越年した。

BOVESPA(サンパウロ株式)指数は99年末の17,091から2000年末は15,259へと10.7%下落した。

 

2001年展望

本年経済も昨年同様の好循環パターンが続くというバラ色の見方が多い。すなわち、インフレ低下、財政収支改善、金利低下などを前提として、農業生産も増加するが、工業主導で4―4.5%程度の成長がつづくものと見ている。

しかし、昨年の海外不安定要因は、殆ど未解決のまま本年に持ち越されている。とくに、米国経済の動向が不透明であるが、成長率が昨年より落ちる可能性が 高い。したがって、世界全体の経済も何らかの形でインパクトを受けることは避けがたい。 [註:IMFは本年の世界成長率見込みを4.2%(昨年9月プラハ年次総会時点)から3.5%(本年1月ダボス会議)に変更した]

 

ブラジルの場合、貿易収支改善の難しさ、経常収支赤字と直接投資流入逆転の可能性など、対外依存度の上昇が予想される。  いずれにしても昨年ほどの濃いバラ色は期待出来ない覚悟も必要であろう。

以上

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