2002年上期業種別部会長懇談会-コンサルタント部会


田中部会長発表

ポイント

  1. 2001年は波らんの幕開けだった
  2. 貿易収支、昨年は久々の黒字。今年は50億ドル黒字予想
  3. 工業生産8ヵ月目にプラスへ
  4. 穀物生産、今年は1億トンの大台めざす
  5. 次期大統領選挙戦、与党候補に挽回気運
  6. 今年は500億ドルの資金調達必要

 

外的要因の影響が大きかった年

田中:コンサルタント部会から報告させていただきます。

昨年のブラジル経済は、年初に成長率が4.5%という明るい見通しでしたが、ふたを開けてみると、波らんの年となりました。外的要因の影響が大きい年で、 特に米国経済の引き続く後退から日本、ヨーロッパなども含めた同時不況の様相、加えて9月11日のイスラム過激派によるアメリカの経済心臓部へのテロの攻 撃ということで、世界は一時的に混乱した。お隣りのアルゼンチンも政治経済危機がついに破局に達し、年末には3人の大統領が交代、11年続いた為替パリ ティーが廃止されるという結果にいたりました。

外国だけでなくて、ブラジル国内の要因も大きかった。中でも電力危機が表面化し、電力割当制 が実施されて、企業の過半数が減産をやむなくされ、成長率もそのために、おそらく2%前後になったのではないかと思います。こういう波らんの2001年で したが、11月に入り様相が一変しまして、次に述べますように有利な情勢が現れたために、2002年、今年に対する楽観的なムードが出て参りました。

 

昨年の特徴8点

一つはドルレートが下降を始めたこと。それから株価が上昇してマーケットはテロの前の水準に戻った。

2番目は、従来はアルゼンチンとブラジルのカントリーリスクを同一視していたマーケットが区別を始めたこと。

3番目は雨季に入り電力割当が緩和され、近い将来廃止の見通しとなった。

4番目は、インフレはIMFとの合意目標を超えたけれども、一応コントロール下にあるということで昨年7.67パーセント、今年は3.7%に低下の見込みであること。

5番目は農業生産が好調で、穀物生産は1億トンの大台突破の可能性が高いこと。

6番目は、11月の工業生産は前月比1.4%増加。マイナスが続いておりましたけれども、8ヵ月振りにプラスになった事。

7番目は、貿易収支は95年のカルドーゾ政権発足以来始めて黒字転換。2001年は26億ドルの黒字になりました。2002年にはさらにこれが、50億ドルになる見通し。現在の時点では、そういう見通しが多いということです。

8 番目は、今年10月に大統領選挙が行われますが、もうすでに実質的なキャンペーンは去年から始まっており、キャンペーンの進行につれて政府党の候補者に有 利な状況が増えてきたこと。まだ決まったとは言えませんけれども、世論調査では、昨年の段階で野党が上位4、5位までを占めていたのが、最近は政府党に有 利になって来たということ。

 

テロによる需要増加の面

こういうふうな楽観 的な要素がいくつか出てきたけれど、一方では、次に述べますような、昨年から持ち越しの警戒要因の遺産もいくつか残っております。一つは、「本年の中頃に は米国経済が底打ちする」、という見方が強まってきております。昨日、米連邦準備理事会(FRB)では、定例の会議で金利の据え置きを決めております。昨 年は一年間で11回引き下げているが、その引き下げが今回はなかったと云うことです。しかし、まだ見通しには不安が残っております。

テ ロ撲滅の戦闘もアフガニスタンは一段落しましたけれども、まだ最終決着はついていない。ただ、このテロの経済に対する影響ですが、最近発表されたアメリカ 経済の昨年の成長率は1.1パーセント見込みと言われております。これがテロによる需要増加に助けられた面があり、テロがなければ、10月-12月の第4 四半期は1.4%に落ち込んだろうと。ところが、実際は0.2%の上昇だったので、テロは必ずしも経済成長にとってマイナスではなかったと言うことです。

 

国内電力危機緩和されたが

3番目は、雨季に入って雨が順調に降っており、電力事情も小康状態で、根本的な解決には約3年くらいはかかると言うことで、現在その投資計画を実行中ですけれども、やっぱり、「まだ3年くらい経たないと、雨次第の電力事情」と言うことから抜け切れない。

4 番目。これが従来同様、今年もおそらくそうなると思われる、最大の問題である“依然として高いブラジルの対外依存度”ですね。今年の経常収支の赤字は 170億から200億ドルぐらいの見込みです。昨年の230億ドルよりは減りますが、依然として高く、GDPに対する4パーセント台比率です。しかも、こ の170億から200億ドルという赤字の見通しは、貿易黒字50億ドルを前提にしていると言うことで、いろいろ有利な材料もあるけれども、輸出の先行きは 必ずしも楽観を許さない。対外収支均衡のために、本年は500億ドルの資金調達が必要です。そのうち直接投資が一応180億ドル見込みですから、残り 320億ドルを借り入れやその他で調達しないといけない。世界の経済、国際金融情勢が順調なときは、320億ドルくらいは問題ないけれども、こういう荒れ 模様、不透明な状態のときは、これからの情勢次第でどうなるか分からない。しかもドルレート上昇の可能性もある。

 

本年は漸進の年

以上のようなことで、本年は警戒態勢を取って漸進ですね。ゆっくり進みながら、来年以降の本格的な前進の準備をする年ではないかと思われます。

今年、2002年はなんと言いますか、この間の11州にわたる最高7時間に及ぶ大停電とか、それから、サント・アンドレの市長誘拐殺害事件とか、不吉な出 来事で幕が開いたような感じです。先ほど委員長も言われたし、私も何回か、前のこの会議でも申しましたけれども、私の30年近いブラジルの経験では、「年 初の予測が明るい年は波らんで終わり、年初の予測が暗い年はいい年になる」が、若干例外はありますけれども殆ど、と言う記憶があります。今年はそのジンク スが破れることを期待しております。

 

コンサルタント部会資料

各種機関の2002年度ブラジル経済見通し

 

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=30815