横山部会長
横 山 運輸サービス部会ですが、”何かのデパート”といわれるぐらい、会社の数も種類も多く、一律にまとめて報告するには無理があります。 従って、運輸 サービス部会といってもそれぞれの小部会として報告し、それをまとめる形になり、本日は9つの業界について、簡単に報告したいと思います。
航空業界 ― 米同時多発テロの後遺症続く
まず航空業界について、昨日でちょうど1年経ちましたが、警戒していたが無事に終わったテロの影響を脱しきれないのが現状です。 日伯間は統計では、大 体半分以上が出稼ぎの方にお乗りいただいているという現状もあり、もろに影響を受けています。 大韓航空がテロ以降撤退したのが、特筆されます。 それか ら米伯間はほぼ壊滅状態が続いていたが、だいぶ回復したとはいえ、まだ不調です。
特に米系のキャリアについては、新聞報道でもあるように不調 でUSエア-の破綻、ユナイテッドも調子が良くない、これはひとえに大幅なイールドの悪化が大きな影響を与えていると言われています。 今までは考えられ なかった中堅キャリア、デルタ、ノース、コンチ、こうした3社が提携するなど、これからアライアンス関係の再編が行われると思われます。
ブラジル国内は、国際線に比べると比較的堅調、前年対比で若干上回る程度の業績を上げています。 ただしこれは、運賃の安い新興の航空会社、特に最近 ゴールという会社が伸びています。 それから借金経営で非常に厳しいなどと報道されているヴァリグは社長交代がありました。
日本では報道済みのように10月からJALとJASが合体する形で、日本航空システムが10月1日から稼働します。 航空業界においては、下期は為替の安定がひとえに影響が大きいと思われます。
旅行エージエント業界 ― 対日ビザ発給半減
旅行エージェント業界ですが、訪日旅客については10%ダウンと報告されています。 特にINBOUND関係が半減している、ということで壊滅的状況で す。 在日ブラジル人は26万、いや27万人と報道されていますが、年間では不調でも3万5千ぐらいの移動はあるのでは、と報告されています。 ちなみに 総領事館さんのほうで、発表されているビザの発給件数は1月から6月までの累計で、前年対比で約半分減って10,314件の発行数と報告されています。
それから旅行業界という形で今まで私たちの部会でも活躍されていたのですが、残念ながら7月で国際観光振興会さんがオフィスをたたまれたのも特記事項かと思われます。
海運業界 ― 税関ストも不調に追い討ち
続きまして海運業界ですが、2001年は8年ぶりの貿易黒字で、それを引きずる形で上期も好調ということですが、再三報告があったとおり、必ずしも輸入 も輸出も好調で堅調な形での黒字ではない。 輸出に引っ張られて何とか黒字を出しているが、全体的な規模としては縮小しているということです。
さきほどから報告されていますが、4月からの税関ストが長期化も、悪影響を与えています。 ただトータルでは下期、商船三井さんの報告ですと45億ドルの黒字が予想されています。
貨物運送業界 ― 人、貨物共に動きは今一
続きまして貨物運送ですが、これは去年の反動で年度初めには人貨共に活発な動きが戻ってきたが、長続きしない息切れ状態にあるとの報告です。 商業貨物 についてはW杯需要での家電製品の増産などがあったようですが、これも税関ストの影響を大きく受け、ちょっと伸び悩みとの報告です。
下期については為替の問題が大きい。ただ、クリスマスを始めとする年末の需要を期待しているという形で報告されています。
フオワーダー業界 ― これからが勝負
フォワーダー業界。ここは、「再編統合の動きが一段落して、これからが勝負の時だ」というふうなご報告です。 これについても国内経費の増加、これは輸出入の手続きなどの費用、これに加え税関ストの影響が大きいということです。
下期の見通しはよくないが、選挙の結果次第では期待できる展開もあり得るとのことです。
クーリェ業界 ― 気になる郵便法改正
クーリエの方は輸入が約20%減、輸出が11%減という形ですが、各社とも経費削減傾向が強く、その影響も大きいということです。エアカーゴは輸出が5.4%増えたが、単価が下がって収入増にはつながっていないと言うことです。
下期は選挙があるが、これは真偽が確かではありませんが、国家独占的な郵便法改正の動きがあり、趣旨としてはモグリ業者が多いので排除すると言うことですが、運用によってはブラジル以外の業者にはマイナスに働く懸念があると報告されています。
ホテル業界 ― 増設で供給過剰に
ホテルですが、昨年は宿泊者数が全体で20%ダウン。 上期はそれに加え、レジャー部門が非常に落ち込んだと言うことです。 それと大手の SOLETOURさんが倒産したので、観光業界全体に悪い影響を与えている。 ドミノ現象の倒産もあって非常に暗い感じになっています。 海岸地区のリ ゾート開発などが行われているのですが、これは稼働率がもともとよくないところに増えたので悪影響を与えている。 都市部ではフラットホテルの設立が相 次いで、供給過剰状態を招いている。 目下、サンパウロ市で125のフラットホテルが建設中で3万室が増設となります。 供給過剰をより大きくしていると いう悪影響を与えている。 ビジネス需要についても最近の経済情勢、ビジネスが減退しているため、統計ではブラジルに商用で来るお客の70%を占めるサン パウロが、もろに影響を受けており、下期も特段に良い予想は立っていない。
通信業界 ― 勢力地図塗り替えられる動き
通信業界です。簡単にいうとIT不況が蔓延しているお陰で、米大手通信会社破綻の危機につながった。 これも大きく報道されているが、グローバルプロッ シングの破産、ワールドコム、クエストなどこういった問題が現象的には会計処理の不適切さから端を発しているが、今までの過度の設備投資、それから実需要 とのバランスが取れなくて、過当競争の結果、経営が行き詰まったということの表れだと分析されています。
ブラジル内では既存キャリア同士のな わばり争いが本格化し始めた。 テレフォリカ・テレマール、エンブラテ-ル、ブラジルテレコムといった従来は国内のみのところが国外に、あるいはその逆な ど競争が激烈化しています。 投資については先ほどご報告あったとおり、停滞気味です。 最もアグレッシブな企業として、AT&Tというのが特筆されると 報告されています。 全体的にはインターネット。ブロードバンド化しているということです。 下期も、いま報告したようなことが促進され、通信業界の勢力 図が新たに塗り替えられる可能性が高いと言うことです。
リテール業界 ― レアル安利用、外国人は宝石買い
最後にリテール業界ですが、宝石関係からお聞きしたが、こういう報告は全体の業界で報告をすることにためらいがある。 つまり自分のところは好調だと言 うことを競合会社に知られたくないと言うことがあり、正式には報告しづらいというので、大まかにまとめると、外国人の旅行者が減ったのが直撃して不調だっ た。 ただし、4月以降はお客の数も回復、特にレアルが安いのは外国人の方が宝石を買うことにプラスにつながるので、徐々に回復傾向にある。下期について はさらに回復して欲しいとの願望があるとの構図になっています。
運輸サービス部会資料
1. 航空業界
- ブラジル国内線では新規参入の航空会社による格安運賃の影響を受け、各社とも運賃の値下げ合戦に突入した。大手のバリグ、TAMを筆頭に各社とも赤字基調 の経営を迫られている。 輸送実績ではゴール社がバスピを抜き第3位に躍進する(4月実績)等中小規模の会社が大手を脅かしつつあると報道されている。
- 景気の低迷もあり、期待されたワールドカップはブラジルが優勝した割には思った程の実績があげられなかった。
2. 旅行エイジェント業界
- 下期には道元禅師750回法要・日蓮大師立教750回忌などの団体訪日他、県人会主催の訪日団当も全般に低調。
7月以降のレアル貨の大幅切り下げと円高傾向によるダブルパンチが主たる原因と思われる。 - 国内線は中堅大手6社の運賃構成(複雑な割引運賃など)とめまぐるしい運賃改定で販売は伸び悩んでいる。
- 下期にはIN BOUNDは8月の東本願寺南米大会,9月の西本願寺世界佛婦大会等の大型イベントもあり対前年同期比若干は伸びるものと予測している。
3. 海運業界
上期回顧
- 2001年に8年振りの貿易黒字を達成したが,2002年上期も順調な輸出を背景に4月までで既に15億ドルの貿易黒字を計上している。 コンテナの荷動きでは、昨年よりも更に輸出入のインバランスが拡大しており輸出に充当するコンテナの不足が問題化してきている。
1月ー4月 数量ベースでの前年比較(TEU)
輸出 輸入
東南アジア向け 43573(11%増) 33937(25%減)
欧州向け 123604(2%増) 80253(15%減)
北米向け 87932(11%減) 46737(5%減)
*コンテナ個数TEUとはTwenty-Foot Equivalent Unitの略で20フィートコンテナ換算を意味する。
*各地域別の輸出入コンテナ量の増減は2,001年度平均数量との比較(前年同期比ではない)
下期展望
- 下期は 2002年4月より始まったブラジル全土における税関のストライキが長期化し、輸出入への影響が深刻化している。 最近の為替動向もあり、輸入の伸び悩みと、輸出増加のトレンドは今後も続くと重われる。
従って貿易黒字も順調に推移し、2002年は44.4億ドルの黒字が見込まれている。
(註:上記の数値は商船三井ブラジル社の報告です)
4. 貨物運送業界
上期回顧
9.11テロ事件の衝撃後2001年末まで殆ど異動はなかったが、その反動を受けて2002年当初より人貨供に活発な動きを呈し、本年当初は好調なスター トを切ったと期待していた。 通常は毎年11月後半から12月末までに帰任者が増加するため、それに伴う引越貨物の取扱繁忙期ニなっていたが、この時期 がずれ込み1月から3月にかけて急増した。 が反面ブラジルへの赴任者は相変わらず絶対数が減少している。(3人に1人の感触)
下期展望
- 下期に為替の下落で輸出には期待できるが、農産物・工業製品が主力輸出品である以上は取扱にも制限・規制もあり、且直接的にも収益をもたらすものではないので第3次製品の輸出開発に期待する。
5. フォワーダー業界
上期回顧
- 経済はアルゼンチン危機に始まり、ウルグアイ経済も落ち込み、ラテンアメリカ内のみならず米国経済にも陰りが見えてきて、中国を除く世界的不況時期に突入 した観がある。 ブラジル国内においても自動車産業の低迷に伴い、その傘下にあるサプライヤーも含めて物量は大幅に激減してきている。
- これに加えて、10月の大統領選を前に今年4月から開始された税関のストライキの影響もあり、輸出入における国内経費増加に直面している荷主からすればその意欲を失い勝ちである。
- サービスプロバイダーとしてはこのような状況の中で様々な提案を行い、顧客の獲得に努めている。
下期展望
- 下期は7月末に発生した当地通貨Realの大幅下落により輸入は更に厳しい状況におかれている。 これまで以上に強行になる税関ストライキもあり、益々輸入には逆風となっている。 選挙結果により今後の動きも大きく変わる可能性があり、楽観視はできない。
6. クーリエ業界
上期回顧
上期は金額実績でクーリエ部門(ドルベースで)
- 輸入 19.7%減
輸出 11%減
レアル安に比例して各社の経費削減の傾向が大きく苦戦を強いられている。 - AIR CARGO部門(ドルベースで)
輸出 5.4%増
量はそれ以上に増えているものの単価が下がる傾向にある。
下期展望
- 下期は上期よりは増える見込みだが、選挙のドサクサにまぎれて、国際的な動きに反する極めて国家独占的な郵便法が発令されるかもしれない動きがあり、クーリエ各社と運送業者は戦々恐々である。 為替差損が危惧される。
7. ホテル業界
上期回顧
- 上期はテロ事件以来大幅に落込んだ(Fabeccのによると昨年航空券販売量は30%のダウン)。宿泊者数も20%ダウン。
- 新規ホテル、及びフラッチ(貸しアパート)の設立が多発した為供給過剰を起こし、サンパウロ、クリチバ、ポルトアレグレ、ベロオリゾンチでは占有率が落込 んだ。 現在サンパウロ市では125のフラッチ、ホテルが新設または建設中であり、全体で3万室の部屋が増設される事になる。(Soteconti Horwath Consulting調査)
下期展望
- 下期のホテル業界の予想は現状の固定化、つまり大統領選挙その他の選挙が終わり政治・経済が安定しないと予測は難しい。当分は今のままの状態が続くと思われる。
8. 通信業界
上期回顧
- 2002年上半期、ブラジルの通信業界の動きは、一言で言うと既存キャリアどうしの縄張り侵食争いがいよいよ始まった年であったと言える。 まず、5月 にはサンパウロ州内固定電話提供業者であるテレフォニカが国際電話を開始し、母の日キャンペーンで50%の値下げを行いサンパウロ州発の国際電話シェアの 35%を獲得した。 一方リオおよび周辺州の固定電話提供業者であるテレマールは6月に開始予定であった国際電話については提供開始を延期したが、Oiは 携帯電話を開始した。
- 逆に国際および長距離の固定電話の提供にサービスを限られていたエンブラテルは、テレフォニカおよびテレマー ル社の長距離固定電話サービス参入を裁判闘争により阻止する動きにでる一方、8月にサンパウロ、リオをはじめとするブラジル各都市での市内電話サービス提 供許可を取得し、10月から企業向けのサービスを開始する予定である。
- 一方、ブラジルテレコムは提供地域拡大および国際電話への進出 のためのユニバーサリゼーション(Anatelが定めた既存通信各社が業務内容および提供地域の拡大の許可を得るために達成しなければならないサービス品 質等に関する目標値)の達成はできていないが、エンブラテルのミラー会社であるインテリグ社の株式取得に強い意欲をみせている。 このインテリグ社も8月 には市内電話サービス許可を申請できる目標達成が認められている。 携帯電話の世界ではテレマールがOi携帯電話を開始したほか、テレコムイタリアモバイ ル社が運営開始の許可を待っている状況であるが、 BCPが経営不振のため負債支払い不能になったり、3月にはDとEバンドの競売は参加者なしのため中止されたり、Cバンドの66%値下げの発表があるな ど、新規参入の活気は既にない。
- 通信市場における投資においてもエンブラテルが15億レアルの計画から4億レアルを削減したり、ブラ ジルテレコムは昨年比47%削減を決めるなど停滞気味である。 これは競争の進展によって財務的余裕が各社ともなくなってきたことと、過去における過剰投 資の反動が主な原因となっている。 このような中で2002年上半期に最もアグレッシブな動きをみせたのはAT&Tである。 AT&Tは 国際・長距離・市内固定電話市場に参入し、企業データ通信、IP接続を含め全サービスプロバイダーとしての地位を築こうとしている。
- インターネットの世界ではブラジルにおいてもブロードバンド化が確実に進展している。 新聞各紙により数値は大きく異なるものの既に50万人から100万人以上の人がADSL接続を利用しており、当面この成長は続くものと思われる。
下期の展望
- 2002 年の後半から2003年以降にかけての通信業界の動きは、いつ世界的なIT不況が終わりを告げ、実需に合った投資が着実な成長をもたらすようになるかとい う点に集約されるが、他の経済動向と同様、なかなか予測は困難である。 世界的にだぶついた過剰投資による回線・設備に対しIPのブロードバンド化による サービスの高度化、データの高速化の需要が少しづつとは言え確実に進展していることに注目すれば、大統領選の後で経済が落ち着けば、他の南米諸国に比べ ファンダメンタルがずっとしっかりしているブラジルでは、IT産業がまた経済のけん引役を担う可能性は十分あると言える。
- 一方では通信各社間の陣取り合戦、競争の進展による財務基盤の弱体化も当面は続き、合従連衡が更に進み、通信業界の勢力図が大きく塗り替えられることも充分考えられ、その後通信業界全体が好転に向かう時期が何時になるかという点については未だ不透明である。
- 但し、日本が現在けん引役となっているGPS携帯や動画伝送を可能とする第三世代携帯電話の動向に対してもブラジルはしっかり注目しており、ブロードバン ド時代の本格的開始と相俟ってIT化の流れは確実に継続していくことは間違いない。 IT化という流れが、一旦は幻想によりだぶついた贅肉部分を落とし、 停滞したかにみえたとしても、情報技術(IT)をいかに効率的に、有効に使いこなしていくかがこの始まったばかりの21世紀における人・企業・国家の生き 残りを左右することが明らかである以上、ブラジルにおいてもその流れは世界各国と同様確実に進展していくものと確信する。
(註)この報告をしていただいたKDDネットホール社は2月に社名をKDDI do Brasil社に変更されています。
9.リテール業界
(宝石業界)
上期の回顧
- 各業界の報告と同様に、アメリカの同時テロ事件以来の業績の落込みは激しいものがあり、今年度に入っても前半は厳しい業績であった。 ブラジルへの外国人旅行者の激減は直接的に影響を与えたと言えそうである。
- しかし4月以降、販売は徐々に回復傾向にある。特に最近のレアル安は外国人旅行者にとっては、宝石類はお買い得となっている。
下期の展望
- 決して楽観は出来ないものの、順調に回復して行くものと予想している。
司会 とてもよくまとまっていて分かりやすい報告ありがとうございます。最後に自動車部会の伊藤副部会長にお願いいたします。