2002年下期業種別部会長懇談会-金融部会


福岡金融部会長

 

司会  大変ありがとうございました。  続きまして、金融部会の福岡部会長にお願いします。

I-銀行業界

ドル相場高騰を招いた3つの要因

福 岡  それでは簡便にご説明申し上げます。 金融部会は、2つのパーツに分かれておりまして、一つは銀行業界、もう一つが保険業界であります。 まず銀行 業界についてお話申し上げます。銀行業界の上期の回顧につきまして、以下申し上げます3つの要因からブラジル国債の格下げ、カントリーリスクの上昇を招き まして、レアル対ドル相場は大方の予測を上回り、最高で2.888レアルまで上がりました。 これで金融業界は、混乱と不安を残して上期の幕を閉じたこと になります。 申し上げました3つの要因というのは、一つは大統領選挙における野党候補の躍進に対する懸念、2つ目に米国大手銀行によるブラジル・エクス ポージャーの見直し、 3つ目に投資信託に対する時価会計制度の前倒し導入であります。

業界の上期のトピックスを申し上げますと、2つ ございまして、これはただ今コンサルタント部会の田中先生からもお話がございましたので項目だけ申し上げますと、一つは SPB(ブラジル決済システム) 改革の導入、2つ目は投資信託に対する時価会計制度の導入であります。 この2つが上期のトピックスに数えられます。

下期の焦点は大統領選挙

野党勝利なら一時ドルは4レアル予想

下期の展望ですが、新政権が発足する来年(2003年)初めを控えて、下期の金融市場というのは大変ナーバスな状態が続くという風に思われます。  新 政権の経済対策に対する内外の信認、これを継続できるかどうかが大変重要でありまして、焦点は大統領選挙一点に絞られるとこういう風に考えております。

下期の相場の見通しを、為替と政策金利の面からご報告します。 まず為替につきましては、大統領選挙の結果によるところが大きくて、相場予想というのは 大変に難しい局面にあるといえます。 野党候補が勝利した場合には、一時的に4レアルぐらいまで高騰する恐れもあると予測しておりますし、一方、保守が勝 利した場合には、一時的にこれまでの反動から2.5レアルを割る展開も考えられます。しかし徐々に市場は落ち着きを取り戻して、最終的にはR$2.7から R$2.9程度に収まるのではないか、と予想しております。

政策金利につきましては、大統領選挙を控えて金利は引き下げられる傾向にあ ると予測しております。 わたしどもの金融部会のメンバーの主立った銀行の方々にアンケートを取りまして、今回は今までと違い、申し上げましたような状況 で大変予測を一本化するのが難しいものですから、今回のリポートにも今から申し上げます5社それぞれの今年末の為替とSelicの予測を掲げております。

口頭でご報告申し上げますと、まずA社は、為替につきましては「野党が勝利」という予測を立てていらっしゃいましてR$3.4、Selicについては 18%。 B社につきましては、与党が勝利した場合の為替予想はR$2.7からR$2.9、野党が勝利した場合には R$3.2からR$3.6、Selicは16.5%から17.5%。C社は与党が勝っても野党が勝っても一律というアンケート結果になっておりまして、R $2.8、Selicは17%。  D社は与党が勝利した場合にはR$2.7からR$2.9、野党勝利の場合はR$3、Selicは17%から18%で す。 最後、E社は与野党一律でR$2.8からR$2.9、Selicは16.95%から17.50%という結果になっております(下表)。

 

II-保険業界

上期に火災、生命保険伸びる

次に保険業界について報告申し上げます。 保険業界の上期の振返りですが、3つの項目から申し上げます。 一つは収入保険料ですが、収入保険料につきま しては生保、損保、健康保険を含めた収入保険料が上期140億レアルとなりまして、対前年13ポイントの成長を遂げております。 内訳は、火災保険が 43.9ポイント増、生命保険が32ポイント増、主力の自動車保険は0.4ポイントの微増であります。

事業収益でありますが、最も重要な指標であります損害率で、全種目合計で61%強と昨年よりも5.2ポイント改善しておりますけれども、主要種目の自動車保険が2.9ポイント悪化しまして71.2%となり、盗難台数の増加をここに反映しております。

それから保険の引受け動向でありますが、治安の悪化に伴いまして、自動車および商品の盗難事故が急増致しまして、保険業界の支払能力が限界に近づきつつ あると思われます。従いまして契約者にとって、今後は保険盗難カバーを確保するということ自体が極めて困難な状態になっていると言えると思います。

世界の再保険マーケットがハード化

次に昨年のテロ事件以来、世界の再保険マーケットも大変にハード化しておりまして(ハード化というのは保険料が高くなり、条件が厳しくなるという意味で すが)、ブラジルではこれに加えてIRB(ブラジル再保険公社)の民営化を控えて、IRBが財務体質の改善に向け取り組んでいる結果、今後とも急激な保険 料の高騰や引受け条件の縮小といったハード化の現象がさらに進むと思われます。

下期の展望でありますが、収入保険料は、対前年15%から20%程度の伸びが予想されます。 収益面では、事業損益では全体では損害率の改善をしているけれども、全体の収入保険料の35%以上を占めている自動車保険の損害率が大変悪化して収益を圧迫しております。

資産収益の面では、運用益では引き続き一定の利益は確保できると思いますが、業界全体にとりましては、事業損益でのクリスタが会社経営を圧迫するものとこういう風に予想されております。  以上です。

 

金融部会資料

2002年8月19日記


Ⅰ.銀行業界

SPB及び投信の時価会計制度

(1) SPB(ブラジル決済システム改革)は 4月22日から導入された。 この制度により、主に①為替、資金、株式、国債等の主要マーケットにおける同日決済 ②金融機関の中銀リザーブ勘定のリアルタイムでの管理が可能となる。大規模なシステム改革となるため、本格導入に向けて段階的な準備期間を設ける等、当局 側は比較的慎重に対応している。

(2) 5月31日に中央銀行が投資信託に対し時価会計制度の導入を求めたが、折りしも大統領選の行方に対する不安感が相まって、債券相場急落につながった。 多 くの投資家が投資信託の資金をポウパンサ預金や銀行保証預金(CDB)に移行しており、中銀によれば6月のポウパンサ預金の増加額は1966年のポウパン サ預金開設以来最高記録となった。

【2002年12月末予想レンジ】(9月9日時点)

 

 

Ⅱ.保険業界

保険引受動向

ブラジルの治安情勢の悪化に伴って、特に自動車および商品の盗難事故が急増しており、保険業界にとっては大変厳しい状況が続いている。 盗難保険につい ては、武装強盗団などによる被害が多発しており、IRBを初めとして各保険会社の支払能力が限界に達しつつある。 最近では盗難リスクに対する保険料が付 保額の20%以上になることもあり、もはや保険とは呼べないケースも出ているが、契約者にとって盗難保険カバーを確保すること自体が極めて困難になってき ている。

また、2001年にペトロブラス(ブラジル石油公社)の石油開発リグ「P-36」の爆発事故や米国テロ事件によって巨額の損害 が発生し、海外の再保険マーケットが極端にハード化している。 加えて、ブラジルでは民営化を控えたIRB(ブラジル再保険株式会社)が財務体質の改善に 向けた積極的な取組みを行っており、国内元受保険マーケットにおいては急激な保険料の高騰や引受条件の縮小といったハード化の現象が見られる。

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=30827