2002年下期業種別部会長懇談会-自動車部会


伊藤副部会長

 

自動車生産、今年は170万台前後予想

伊藤  近藤部会長が日本出張中ですので、代わりに報告させていただきます。 自動車部会は発足間もないのですが、カテゴリーを、4輪、2輪、自動車部品の3つに分けて報告させていただきます。

まず4輪ですが、昨年上期の生産台数92万9千台に対して、今年上期は83万9千台、9.7%減のマイナス約9万台と大幅に落ち込みまして、年初業界の 生産予測190万台の達成見込みはなく、170万台前後に落ち着くものと見られています。 国内販売で見るとさらに落ち込みは厳しく、昨年の上期87万 4000台が今年は71万台、17.7%減のマイナス約15万5千台となり、特に5月以降の落ち込みが厳しいため、月間12万台割れが続く現状を踏まえる と年初業界販売予測160万台は140万台辺りに落ち着くものと見られます。 在庫ですが、6月末には業界全体で16万9千台、約46日分を抱えており、 下期に入っても一層の生産調整と余剰人員の削減を強いられています。

競争は益々激化

大統領選挙を控えた政治的不安定要因が為替悪化、株安、カントリーリスク増大の三重苦を生じさせ、自動車業界では消費者の買い控えと高金利による購買力低下が起きています。年間320万台の生産能力を持つ国内四輪生産設備の約半分は遊休状態にあります。
各社とも生産量維持を最優先させるため、大衆車これは1リッターカーを中心にディスカウントを行い、体力の消耗合戦が続いた結果、大衆車の市場シェアは 73%まで拡大しました。 引き続き在庫調整が続く中、値引き販売を余儀なくされて、市場環境はますます厳しくなっており、メーカー間の競争も激化が続い ています。

また、収益悪化に歯止めが掛からず、今年は全メーカーが赤字になると予測され、大量解雇への懸念も広がっています。今まで はクライスラーとGMのトラック部門が撤退していますが、フォルクスワーゲンのダメル社長は、「今後2年以内にアッセンブラー2社が撤退するだろう」と国 内生産能力の過剰とメーカー数過多を指摘しています。
アメリカの自動車アナリストも、「ブラジルでは健全で効率的かつ柔軟性のある生産拠点を持つメーカーのみが生き残る」と発言しています。

政府、新市場開拓のため中印露、ポーランドへミッション派遣

下期は8月1日に工業製品税(IPI)の変更があったものの、ファイナンス販売主体の新車販売は高金利が続く以上、大幅な販売増は見込めません。 ただ し、工業製品税の変更は中長期的には大きな意味を持ち、販売市場におけるカテゴリーミックスの変更が年々加速すると見られています。 大衆車のアドバン テージは失われて、今後は各社とも1リッター以上の新型車両投入に力を注ぐことも予測できます。 ただし、政府は税収入減も懸念しており、工業製品税の一 律化などの議論も引き続き行われています。
為替が選挙後も1ドル当たり3レアルレベルが続くと、各社は相当の値上げを行うでしょうが、国内販売 のマイナスをリカバーさせるためにもメキシコを中心とした輸出強化を一層進めると思われます。 市場変動に耐えうるグローバルネットワーク体制の構築が生 き残りに不可欠で、新たな輸出国検討も進められています。

政府も自動車産業の雇用維持の手段として、新規市場開発のためにロシア、 ポーランド、中国、インドなどへミッションを派遣しています。 小型車の技術と価格競争力を持つブラジル自動車産業が輸出基地に変貌する可能性が大きいと みたフォルクスワーゲン、GM、フォードは輸出戦略の見直しを急いでいます。 例えば、フォルクスワーゲンは欧州向け車両開発への投資、GMは新型コルサ を製造するロサリオ工場の生産量の80%を輸出目的として3000万ドルの投資をしています。 また、フォード本社も世界的な小型車需要の増加を見越し、 ブラジルを全世界に供給する小型車輸出基地と位置付けする方針を明らかにしています。 当面は、拡大が見込めない状況にあって、どう生き残っていくか、そ のための商品開発の強化と生産効率のアップ、そして輸出競争力をどのようにつけていくかが、この業界の大きな課題となっております。

二輪車、生活の足として販売伸びる

続きまして二輪車です。 二輪車市場は昨年上期の生産台数38万8千台に対しまして、今年上期は40万6千台、と4.7%増。国内販売も35万6千台から38万7千台と8.8%増加しており、堅調に推移しております。
二輪車は生活の足として、特に北部で販売が増加していること。 コンソルシオでの販売が50%近くを占めているために、比較的環境変化の影響を受けにく いことも強みとなっています。 インフレ、金利が現状で推移すれば、下期も前年並みプラスアルファの販売は確保できると考えられています。 ただし、二輪 メーカーの収益は為替の切り下げで大幅に悪化しており、四輪同様、輸出強化を図り、企業体質の維持強化を進めている状況です。

自動車部品、販売は年初予想の20%減見込み

自動車部品業界です。 サンパウロ州の自動車部品メーカーの70%以上が自動車減産で打撃を受けています。 自動車部品製造工業会の予想では、本年度の 自動車生産の下方見直しで、1月時点の売り上げ予想に対し、20%減少するものとさらに厳しい見解を出しています。 新車生産増加を見込んで輸入した原料 が在庫増加を招くなど、収益面でのダメージを強いられております。 部品業界総売り上げの33%を占める上位部品製造会社を対象に比較した売り上げは1月 から7月までの累計で対前年同期比売り上げが-7.9%と減少しており、遊休率が生産能力の37%までに達しております。

現在の従業 員数は17万500人ですが、年末までには16万9千人に減少する予想です。 その他、為替の変動で輸入原料を使用するメーカーでは大幅なコストアップに つながっており、日ごとの為替レートで購入し、それらのコストをカーメーカーに対しすべて転嫁できない状況にあるため、収益面で悪化しています。 新車の 工業製品税の減税でも短期的に生産増加は期待出来ないものの、部品メーカー各社が1リッターから2リッターの減税対象車への部品納入率が20%から35% 程度に上がるものと予想され、車種のミックスが変更することで部品サプライヤーの中には、年末までの生産体制を見直すところも出てきています。
カーメーカー納入のほかに、補修市場向けにビジネスを展開している部品メーカーは収益面ではある程度、カーメーカーでの減収をカバー出来ておりますが、予想に対してほど遠い結果を示しています。
以上です。

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=31094