5月31日の経済情報

>>ドル安と旺盛な国内需要で自動車メーカーはアルゼンチンで生産

 ファイアット社はドル安の為替と生産能力が、限界に近づいてきたミナス州ベッチン工場でのシエナ車の生産を、来年1月からアルゼンチンの操業を停止しているコルドバ生産工場に、6,000万ドルを投資して操業を再開、直接雇用1,000人、自動車パーツ関連雇用の間接雇用が2,000人分の雇用創出となる。

 また2008年末にはインド資本のタタ自動車工業と8,000万ドルを投資して、中型ピックアップ車の生産を開始するが、ブラジルのベッチン生産工場では、日産2,500台から2,700台に引上げる。

 ルノー社も9月までには、パラナ州のクリオ車生産をアルゼンチンのサンタ・イザベル工場に移して、パラナ州のローガン車の生産能力をアップするが、来年下半期には中型車をアルゼンチンで生産する。

 GM社はClassic車の生産をサンカエターノ工場とアルゼンチンのロザリオ工場で分担生産しているが、生産コストが安いために、今年のアルゼンチンでの生産は、前年比57%増加の11万台、ブラジルの生産は2.7%増加の56万5,000台を予定している。(31日付けエスタード紙)

>>国会議員のサラリー調整28.5%のお手盛り法案がすんなり通過

 レナン・カリェイロ上院議長などの政治スキャンダルで、国会が揉めているにも関わらず、国会議員などのサラリー調整28.5%のお手盛り法案がすんなりと上院を通過、わずかにPDT党のジェフェルソン・ペレス上院議員とPSOL党のジョゼ・ネリ上院議員が、4月に遡る支給に反対を表明しただけであった。

 国会議員の大幅なサラリー調整は、州政府や市町村にとっては支出の拡大となり、州議員は連邦議員の75%までのサラリー調整が可能であり、市会議員は市の人口に比例して、州議員の20%から50%のサラリーが支給される。

 このサラリー調整法案通過で、連邦政府の支出は5億レアル増加、下院の支出は下院議員のサラリー調整で1億200万レアル増加、国会議員のサラリーは1万2,847レアルから1万6,512レアル、大統領のサラリーは8,362レアルから1万748レアルにそれぞれ調整される。(31日付けガゼッタ・メルカンチル紙)

>>鉱工業はサンパウロ州から他州に分散

 サンパウロ州の鉱工業部門の労働人口比率及び生産価格からコストを差引いた生産指数は共に低下、1996年の同部門の労働人口比率は全国の41%を占めていたが、2005年には36,4%まで低下、生産指数も49.2%から40.2%に低下してきており、鉱工業部門が全国的に拡散傾向にある。

 サンパウロ州から他州への移転が顕著な部門は繊維、衣類や宝飾品であり、リオ州では特に食品部門であり、労働人口比率は7.9%から5.7%に下がったが、生産指数は石油部門の拡大で8.7%から10.5%に上昇している。

 地域別の労働人口比率は北部が2.7%から3.6%、北東部10.5%から12.4%、南部が22.5%から25.2%、中西部が3.1%から4.5%とそれぞれ増加したが、サンパウロ州を含む南東部が61.2%から54.3%と低下した。

 鉱工業の生産指数では北部が4.5%から5.8%、北東部7.5%から9.3%、南部17.4%から17.7%、中西部が2.2%から3.7%とそれぞれ増加したが、南東部は68.4%から63.5%に低下した。

 石油や鉄鉱石などの鉱業部門が堅調に伸びており、ミナス州が9.0%から10.5%、リオは8.7%から10.5%、エスピリット・サントが1.3%から2.4%,アマゾナス州が3.3%から3.9%とそれぞれ増加している。(31日付けエスタード紙)
 
>>カルテルで公共事業に400億レアルの損害

 経済法務局(SDE)はカルテルや官製談合のために、年間3,000億レアルに達する公共事業入札で、連邦・州政府や市町村は年間400億レアルの損害を被っていると見込んでいる。

 政府の入札の1/3では入札業者の数が少なくカルテルを組みやすいが、公共取引委員会(Cade)は建設用砕石の入札で、17企業がカルテルを組んでいたことを摘発している。

 また経済法務局は砕石のカルテル以外にもセメント、病院納入用ガーゼ、学校給食、医薬品やセキュリティーサービスでも不正入札が行なわれていることを突き止めているおり、電子入札システム導入で不正防止を検討している。(31日付けヴァロール紙)

「時事評論」                                            偽りの解決方法

 エスタード紙のワシントン特派員パトリシア・カンポス・メーロへのインタビューで、国際的な人気ブログを持つ経済学者のヌリエル・ルービニは、現在のレアル高傾向を反転させることが目的だとすれば、金利の大幅是正だけでは不十分であると述べた。同氏曰く、投機資本の流入に何らかの管理手段を設けなければならないとのことである。

 投機資本の抑制案は繰り返し提唱されているが、ルーラ政権は、イデオロギー的ではなく、むしろ実務的な理由から常にその実施を拒否してきた。前提としては、内国為替におけるドル安の主要な原因の一つとして、利鞘を目的した資本の流入があげられるというものであるが、統計上、そのような大々的な流れがあるとは伺えない。それはさておき、ルービニの考えには批判すべきものがある。もし金利の大幅是正は無駄であると言う認識であれば、ルービニ自身が内外の金利差が投機的なレアル高の主要因であるということを認めていないことになるからである。

 ブラジルでは金利の利鞘取引が非常に旺盛であることについて否定する者は誰もいないが、当該取引は、新規の資本流入よりも、通常なら送金されていたはずの留保利益によって行われているようである。

 いずれにせよ、投機目的の資本の流入時における規制を薦められない理由は、上記以外に少なくとも4つはある。

 最初に、短期資本が激しい勢いで流入しているとすれば、定義上、「短期」に流出するために、レアル高に貢献した分、レアル安にも貢献する筈である。従って、流入規制の導入は、その資本の長期化を奨励すること以外に他ならない。ドル相場はここ4年間、下がってきている。4年前の投機資本の流入が現状に関して重要だったとすれば、4年前から流出していなければならず、為替レートの逆転の一助になっていたはずだが、実際にはそうならなかった。資本流入は憶測されているほど投機目的ではないし、あるいは投機資本は全体的にあまり顕著ではないと云う事なのだ。

 第2の理由は、(抑制することが望まれている)利鞘を狙って流入する短期資本と、(抑制が望まれない)貿易融資を目的とした同じく短期の資本流入を見分けることは困難である、とうい事だ。さらに貿易取引の融資は単なる装いであることもあり得る。例えば、ある機械を輸入する業者は外国の融資を受ける事もあるが、決済資金が不足している理由からではなく、国内市場において自己資本に充てるためである。

 第3の理由は、投機資本と長期投資を確実に見分ける唯一の方法は、国内に留まる期間を確認する、ということしかないことである。このように流入時にコントロールする意味はなく、流出時にコントロールを設けるべきである。ただし、そういう場合にも流入時に起こるレアル高は避けられない。

 そして4つめの理由は、過去にそのメカニズムを採用した国の前例があり、成果をあげていないことだ。例えば、チリは未だにペソの過剰な為替高の問題をかかえているが、1998年に投機資本の流入抑制を導入した後に、有効ではないという理由のために断念している。今年初めのタイの場合は悲惨な結果に終わっているし、3週間前に短期資本の「検疫」を導入したコロンビアも、未だにペソ高に歯止めをかけることが出来ないままである。

           <2007年5月29日付けエスタード紙に掲載されたコラムの翻訳文>

 

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=33086