SBPNとの合同夕食会・講演会に竹中平蔵元経済財政政策大臣を迎え開催

ブラジル日本研究者協会(SBPN)とブラジル日本商工会議所共催の竹中平蔵元経済財政政策担当大臣の講演会「Chenges in the global economy」並びに懇親夕食会に250人以上が参加して6月13日午後7時からマクソウドホテルで開催され、企業経営委員会のマルコス破入副委員長が司会を務め、初めにブラジル日本研究者協会の仁井山会頭、田中信会頭、西林万寿夫総領事が講演者の竹中平蔵元経済大臣に対してそれぞれ歓迎の挨拶、マルコス副委員長が竹中元経済大臣の略歴を紹介して講演が開始された。

竹中平蔵元経済相は「changes in the global economy」と題した講演会の冒頭で、今日はグローバルエコノミーについて話をしますが、学者として講演をすると好意と羨望を持って向かえてくれるが、政治家として講演すると悪意と敵意を持った批判的な目で迎えられるとウイットの富んだ語り口で笑いを誘って、堅苦しい雰囲気を解きほぐした。

日本経済は500兆円でGDPは世界2位の規模であり、参加者に100年前の日本経済規模を質問したが、答えは誰にもわからないとその当時は内閣府がなかったために、統計が取れなかったと説明した。

この100年間で1人当たりのGDPは11万倍に上昇、この間の物価上昇率を参加者に尋ねたが、正解はよく解らないであり、しかし物価は大体3,000倍に上昇しているので、一人当たりの実質所得は35倍になっていると説明した。

現在、世界経済には大きな変化がでてきており、BRICs諸国でも変わってきているが、重要なのは変化の本質を認識することであり、昨年の日本の株価は11%も下がったが、これは米国発のサブプライムローン問題の影響ではない証拠に、米国では6.0%上昇しており、小泉内閣が実現した改革が後退していると指摘した。

郵政民営化の決まった2005年の日本の株価は42%上昇したが、私はなんと1,500回もこの民営化のために答弁したが、一つの民営化のための答弁回数としては世界記録であり、改革が前進すれば株価は上昇するが、停滞すると株価は下がると説明した。

ここ5年から10年間で世界経済は大きく変化、その一つは経済のグローバリゼーション化であり、1989年に冷戦時代の象徴であったベルリンの壁が崩壊して東西ドイツが統一、1990年はソ連邦の崩壊、東西陣営が分かれていた時は30億人が西側の市場経済、30億人は競争原理の働かない東側にいたが、東西冷戦崩壊で東側の30億人が市場経済に組み込まれ、中国、ロシアやベトナムなどの大きな人口を抱える国が一斉に市場経済に移ったが、これは最大の本質的変化であり、大きなビジネスチャンスがやってきた。

これは消費市場が30億人から60億人とパイが倍増したが、逆に競争相手が倍増したために、益々ビジネスは厳しくなっていくが、この市場経済の外にいるのは僅かに北朝鮮やキューバなどで消費人口が少ない。

また技術体系がIT革命によって根本的に変化してきており、本質はデジタル革命であり、18年前に日本にインターネットを持ち込んだ慶大の村井純教授はデジタル革命とは数字を変えることであり、復元可能で安くて速くて遠くに伝送できることであると説明している。

DNA解析ができるようになったのも、デジタル革命の賜物であり、シリコンバレーもデジタルベンチャー企業が集中、米国の電話案内サービスはインドで行なわれており、世界がフラットになってきている。

グローバル化/デジタル技術の変化では三つの要素があり、一つはFast eat slow で速いものが遅いものを淘汰するために最初に手掛けた人が勝ち、生残れるのは業界で1位、2位に入っている企業だけであり、早く標準化することが重要であり、ブラジルは投資を促進するために外資に対して色んな規制を除外してオープンにしており、政治的な色々な要求が出てくるが、自由競争の出来る土壌を作らないとオープンな国に勝てない。

2つ目のポイントはグローバル的競争において、最近のエネルギーや食料品の高騰は投機先を求めて原油の買い漁りが発生しているが、これらに対応するためには技術開発の発展で解消するしかなく、洞爺湖サミットでも地球環境改善が話題の中心となると予想されている。

資源小国である日本の環境改善技術水準はずば抜けて高く、CO2排出減少対策は先頭を切って走っており、日本のエネルギー効率が非常に高く、京都議定書で決められている2012年のCO2削減達成目標5.0%が難しいと予想されているが、日本の省エネ技術を全世界の国が採用すれば67%も削減できる素晴しい技術を持っているが、それを世界にも広める責任もあり、ブラジルの地上デジタル放送の日本方式売り込みではコスタ通信相やアモリン外相に日本放送の採用ではなくて日伯放送方式であると説得して採用、環境分野でも応用が利く。

もう一つは今後、ソフトパワーが大きな影響力になり、1990年にジョセフ・ナイ教授がハードパワーは物を作る経済力、破壊する軍事力であり、ソフトパワーは人を引き付ける力を持っていると定義、例えば世界のどのホテルでも見られるCNN,BBC放送がソフトパワーのよい例であり、CNN放送は世界共通語の英語で米国の価値観を持ったニュースを宿泊客が見ており、日本もブラジルもソフトパワーを高める必要がある。

ソフトパワー向上にはオープンで規制が少なく、民営化を促進することが重要となり、人口の大きな国では反対意見が多くて難しいが、その力を打ち破るのはリーダーの力しだいであり、ブラジルも民主主義国家だからといって人口1億9,000万人の意見を聞いていたのでは何も決まらないから、強力なリーダーが安心して国民から信任されるのがリーダーデモクラシーであり、国民を説得できるリーダーが今の時代では重要な役割となる。

私は長年に亘り小泉元首相の閣僚として務め、強力なリーダーは常にメディアで非難されるが、小泉元首相はリーダーとして情熱があって、常に民営化担当の私の罷免に対して野党から非難轟々であったが、私には自分の民営化政策を貫く強力なサポートがあったと説明した。

質疑応答では郵政民営化のメリットに対して、竹中元経済大臣は民営化をすでに行なっているドイツやオランダでは、自国内で郵便ビジネスをやっていてはビジネス規模が大きくならず、規模を大きくするための国際ビジネス展開では民営化をしなければならず、ドイツは民営化後にDHLを買収して大規模にビジネスを展開しているが、日本では郵便の取扱量が減少してきていたし、経済競争原理を大きく歪めている200兆円に上る郵貯も抱え込んで第2の国鉄にならないために民営化をせざるを得なかった。

列強国に取り囲まれて日本の独立が危ぶまれた明治維新に、福沢諭吉は「一個人の独立なくして、一国の独立はない」と国を支えて国に頼らずと一人一人がしっかりするべきだと訴えた集積が「学問の進め」の著書であり、明治維新当時、日本国民の10人に1人に相当する340万部の国家論、政治論の書かれた『学問のすすめ』が読まれ、福沢諭吉は立派な思想家だったが、それ以上に当時の日本国民の志が立派だった。

しかし、今の日本では、福沢の言葉とは真逆の社会風潮がはびこって、何かがあると人のせいにしたがるが、一人一人が今ある問題をどれだけ真剣に捉えるかが重要であり、テレビのコメンテーターが比内鳥の偽装問題では、小泉元首相と私が実行した規制緩和のせいにして腹を抱えて笑ってしまったが、最後に100年にわたる良好な日伯、今後の100年の良好化関係が築かれますようにと結んで講演を終わり、質疑応答となった。

ソフトパワーの力についての質問に対して、500兆円のGDPの1/4は製造業であるが、3/4は情報・金融などの第3次産業の伸び率は低いので増加させる必要を述べ、日本の国際弁護士などは非常に少ないなどソフトパワー不足解消を説き、技術開発促進で資源枯渇が防げないとの質問に対して、第1次石油ショック時は今後30〜40年しか資源が持たないといわれたが、今では今後40年も石油資源が枯渇しないのは技術開発の賜物であり、一次石油ショックの石油輸出国機構(OPEC)加盟国の国営企業比率は40%であるが、今では60%に達して、また石油価格高騰が続いているために、石油開発に投資を怠っていることもエネルギー価格高騰を招いていると説明して講演を終え、田中信会頭から記念品が贈呈され、素晴しい講演に対して割れんばかりの拍手が竹中元経済相に送られた。

 

“竹中平蔵氏特別講演会” DVD ダウンロード:

低画質(56mb)

高画質(108mb)


注:ファイルのフォーマットは.aviです。

 

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左から田中信会頭/西林万寿夫総領事/竹中平蔵元経済財政政策担当大臣

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熱心に竹中元経済財政政策担当大臣の講演を聞く参加者

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左からブラジル日本研究者協会(SBPN)の佐藤直専任理事/仁井山進会長/佐々木弘一顧問/会議所の平田藤義事務局長/渡部一誠組織委員会副会長

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ブラジル日本研究者協会/商工会議所のスタッフと記念撮影

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=33462