Davilym Dourado / Valor“
自分の夢が現実になりつつある”とインタビューに答える窪田敏朗社長~
日本の三井住友銀行はブラジルにおいて長期の投資をしてきたが、2008年度の海外調達ランキングでは前年の22位から4位に大躍進、金額では前年の6億 6,000万ドルから400.6%増加の33億400万ドルを記録、ブラジルの海外調達にとって主要プレイヤーになった。3つの重要なサブ-ランキングで ある”公共部門ファイナンス”、”ECA(輸出信用機関)ファイナンス”並びに”円及びユーロの資金調達”において、同行は他行を抑えて1位となった。
ECAファイナンスの上位7社リスト
公共部門ファイナンスの上位7位リスト
窪田敏朗社長はブラジルでSMBCの成長を任務として来伯約3年になる。海外シンジケートファイナンス・マーケットにおいて、主要な案件に参加、「マー ケットが膨れ上がっていた時期には、強力な競争相手である欧米勢を前に非常に苦戦、難しい任務であった」と当時を振り返り、「努力の成果が認められ Valor紙のランキングリストに登場したことは大変光栄であり、自分の夢が現実になってきているようだ!」と述懐した。
窪田氏は 有名な富士山が見える景勝地、沼津市の生まれ、東京で育ち、1979年に住友銀行に入行、既に海外勤務は米国、シンガポール、メキシコそしてフィリピンで 経験を積み、2005年9月からブラジル勤務、同行の飛躍の為に全身全霊を打ち込んで仕事に取組んできたと語った。今日、約100名の行員を抱え、国内 マーケットで約4億レアルの資本を擁し、また海外拠点及び本店においてブラジル向け貸出実績等、数え切れないほどの案件に達している。
窪 田氏自らヘッドハンティングしたシニアエグゼクティブの中で、右腕として活躍するソシエテ・ジェネラル銀行出身、社歴2年の通称カヅー(カルロス・エドア ルド・デ・バーロス氏)がSMBCのコーポレートファイナンス及びストラクチャード・ファイナンスを担当、またECAファイナンスに経験豊富な人材を日本 から派遣等、今日、同行には8名の日本人スタッフが駐在している。
又同行はブラジルにおける成長戦略の一環として、トレードファイナンス 及びストラクチャード・ファイナンスに焦点を当てたチームを結成、この2年間で現地スタッフを多数採用、 「シンジケートローンの取組には、常にNY支店のチームと連携・協力、サッカーチームのように一人がパス、もう一人がシュートを決めるやり方」だと窪田氏 は手の内を明かした。
ニューヨークにおいても、三井住友銀行のチームはブラジルへの貸出の大部分をカバーするために、元WestLB銀 行から迎えたアイザック・ドイッチ氏が同行のコーポレートとストラクチャード・ファイナンスのリーダーとして活躍、また日本以外の地域のECA(輸出信用 機関)ファイナンスのスペシャリストである、元シティバンクのエリ・ハシーニ氏と同氏が率いていたチームメートもそっくり採用し人材・組織を強化、「我々 は世界各国にあるECAのスペシャリストとなり、そして顧客に対して選択肢を数多く提供したい」と窪田氏は語った。
成長戦略 は大成功を収めて、同銀行はECAファイナンスにおいて第一位となった。昨年末、他の日本のメガバンクも参加する中、ペトロブラスのオランダ現法に償還期 間10年の日本貿易保険(NEXI)付きで当時7億5,000万ドル相当の円ファイナンス(現在、8億4,000万ドル)を実行した。バーロス氏(カ ヅー)は「昨年末、信用欠如にあったUSドルとは反対に、円市場のみ唯一、流動性があって、円/USドルのスワップコストが掛かっても、このトランザク ションは魅力的であった」と述べたが、その貸出レートについては公表を避けた。 また窪田氏は「円預金を所持しているために、このトランザクションを実現に導けた」と述べた。
同行はウジミナス向けに円ファイナンスを契約したばかりであるが、日本では初めての米州開発銀行(IDB)と実施、他の投資機関も参加したこのトランザクションの円合計額は、償還期間7年の2億ドル相当となった。
円の流動性の効用もさることながら、アメリカのハイリスク担保・証券化商品による影響が比較的少なかった日本の金融機関はブラジルのシンジケートローン・ マーケットにおいてシェアーを順調に伸ばし、結果として08年を通じ健全な力強さを発揮・維持できたと前置きしながら、バーロス氏(カヅー)は「日本の株 価の下落や日経平均株価が歴史的に低迷しているために、今年の日本の銀行は手元資金に見合った更に堅実な経営に回帰する」と予想している。
「ブラジルの大企業はハイリスクのプレミアム支払いには嫌気を起こしており、同じ投資に対しても、より短期のブリッジローンのオプションを好んでいる。借入期限に関しては1年から2年で、調達市場は不安定で且つコストは非常に高い」と窪田氏は述べた。
日本移民100周年記念であった昨年、ブラジル三井住友銀行はサンパウロ都市圏鉄道会社(CPTM)の車両購入向けに5億3,500万ドルを融資、地下鉄4号線向けにも9500万ドルの追加融資を実行した。(いずれも国際協力銀行(JBIC)の保証付き)
「ブラジルには海外最大の日系コミュニティが存在、そのため日本政府は特にブラジルのインフラ部門に関心を持っている。一方で、日本の企業や金融機関も新 しいパートナー、新しい市場としてブラジルを見直し注目している!」と窪田、バーロス(カヅー)両氏は口を揃え強調した。(2009年3月31日付けヴァ ロール紙から抜粋)
平田事務局長談話
ヴァロール紙が会員であるブラジル三井住友銀行の大躍進振りについて大きく報道したのは嬉しい限りだ。同行は昨年10月本社から奥 正之頭取を迎えて創立50周年を祝ったが、半世紀を節目契機として、ブラジル市場への力の入れ方が一際目立っている。
金融(F)1面記事では外資調達総合ランキングを発表、1位:Citi 60億8300万ドル、2位:Santander 43億6150万ドル、3 位:HSBC 34億5000万ドル、4位:Sumitomo Mitsui 33億400万ドル、9位:Tokyo Mitsubishi 25億 6500万ドル、11位:Mizuho 18億8500万ドルと続き、会員である邦銀3行が大幅に伸張、上位に躍進している。
F10 は全面を割きブラジル三井住友銀行関連記事一色で、輸出信用機関(ECA)ファイナンス部門においては上位3行が皆邦銀で占めると言う大ヒット振りだ。ブ ラジル三井住友銀行を首位に、みずほ、東京三菱銀行と続いている。公共向けファイナンス部門でも首位のブラジル三井住友銀行に続き3位にみずほ、東京三菱 が並び、この分野でも邦銀の健闘は顕著である。
6月に入札が予定されているブラジル版新幹線プロジェクトをはじめインフラ以外に鉄鋼、 エネルギー、環境エコ分野など、かつてのナショナルプロジェクトに匹敵する大型案件が犇めく中、生産および物造りで世界に冠たる技術を誇る日本、それを後 押しする健全なメガ邦銀集団、ドルの信認が揺らぐ今こそ日本の出番ではないのか。