老年内科権威の千馬寿夫医学博士を招いて懇親昼食会を開催

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講演する千馬寿夫医学博士

 老年医学権威の千馬寿夫医学博士を招いて、商工会議所の懇親昼食会が8月10日正午からグラン・メリア・モファレジホテルに98人が参加して開催された。

 千馬医学博士は自身が駐在員の父親の関係で南アフリカ生まれ、帰国子女として日本で中学を卒業後、ブラジルに赴任した父親と家族と共にサンパウロで生活、サンパウロ大学医学部を卒業、ブラジルに32年間生活していると自己紹介した。

 講演のタイトルである「良い老後を過ごすには」のスライドでは、これが解決できたら私は医者を辞めると冒頭から笑わしたが、食生活、運動、ストレス、アルコールやタバコなど生活習慣が肥満、高血圧、高血糖などの危険因子となる基礎疾患を誘発して、ガン、脳卒中、心疾患や糖尿病などの生活習慣病を防ぐためには、40歳までにしっかりしたコントロールができるかどうかで、良い老後が過ごせるか決まると強調した。

 今日の参加者の大半はエグゼクチブでストレスの圧力に強いと思うが、その割りに喫煙者が少ないし、30分の運動を週3回以上の行なっている人が2割近くいたのは、今までの講演会で初めてであり脅威に値すると説明、この比率はブラジル人では2%にも満たないと会議所会員の健康管理を称えた。

 「老化防げるか」のスライドでは、進化こそすれ老化を防ぐことは不可能であるが、遅らせることはできると説明、老化のメカニズムにはガンの発生を促すフリーラジカル説、遺伝子の突然変異説、Medvedev医学博士が唱えたエラー破綻説、たんぱく質の機能が失われるたんぱく質架橋説、異常たんぱく質蓄積説、生体膜異常化説、細胞分化異常説やミトコンドリア異常説などが唱えられていると説明。

 また遺伝子にあらかじめ老化や寿命がセットされており、人の細胞はある回数になると細胞分裂をやめてしまうプログラム説で、老化や寿命について色々な説があってよく解明されていない。

 続いてラットでの老化と栄養の関係では、2年間のラットへの自由食と制限食の実験では、初めの1年間に制限食を食べたラットは寿命が長くなるが、2年目は自由食を食べたラットは引続いて制限食を食べたラットよりも寿命が長くなっており、戦後の食糧事情の悪い時期を乗切った皆さんは長生きしますと笑わせた。

 「高齢期で大切なもの」に関する調査では、健康が95%でダントツ、2位が家族となっているが、現在は昔のように貸し借り抜きでの家族による老人介護が難しいのは、家族は構成するものと魂のこもった家族の大切さを教えてこなかったことが、介護拒否に結びついていると指摘、また人類が今ほど老齢化を迎えたことがないために、学問的にも老人医学は難しいが、統計的に悲観的な人は長生きしていないので、明るく気持ちを若々しく保つのが長生きの秘訣であり、皆さんも気持ちを若々しく保つ修練をしてくださいと述べた。

 また気持ちを若々しく保つことと双璧である運動を習慣付けることで老化を遅らせることができ、運動により筋力増加、体脂肪減少、血圧、血糖値やコレステロールの低下、心肺機能や免疫機能の向上で活力年齢を若返ることができる。

 トレーニング者と非トレーニング者の加齢による最大酸素摂取量の調査では、長距離ランナーが最も高くて60歳で非トレーニング者の3倍、週3回のジョガーは2倍近くまで摂取でき、また運動習慣と骨密度の関係では、例えゲートボールでも密度を上げることができるし、競争心を煽られて楽しいことも老化現象を防ぐ要因になっていると説明。

 最後にケガの防止も役立つし若々しく保つ筋力つくりのための筋力トレーニング、ストレッチング、ジョギングやウオーキング、自宅では腕立て伏せ、腹筋運動、膝屈伸運動やストレッチ運動を心がけて、楽しい老後に備えてくださいと結んで盛大な拍手が送られ、田中信会頭から記念のプレートが贈呈された。

千馬寿夫医学博士の略歴
 老年内科専門医、ブラジル老年医学学会(サンパウロ支部)会長、サンパウロ大学医学部付属クリニック中央病院(Hospital Das Clinica)在宅医療チーム総責任者、1963年南アフリカ共和国ヨハネスブルグ市出身、甲南学園中等部卒業、サンパウロ大学医学部卒業、2002年同大学で博士号取得、現在はクリニカ中央病院にて「集中治療室における末期患者への対応」委員会、患者の人間性の尊重を唱える病院内運動のHUMANOCグループのメンバーとして活躍している。

昼食会は平田事務局長が講演者の千馬寿夫医学博士、特別参加の西林万寿人サンパウロ総領事を紹介、3分間スピーチではJBIC銀行の相川武利首席駐在員が、9月17日にリオ工業連盟会館で開催されるCDMセミナー、グラン・メリアホテルのヨハネス・バイヤーマネージャーは空港混乱が続いているためにホテルのヘリーポートの活用、ブラジル銀行貿易部のジェルソン・シュテスキー地域マネージャーが9月4日にFIESPで開催、米国、ドイツやアラブなどの商工会議所が、参加するブラジルの輸出促進セミナーENCOMEXへの参加をそれぞれ案内した。

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田中信会頭から講演者の千馬寿夫医学博士に記念プレートの贈呈

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