CDMセミナー「CO2キャラバン 排出権ビジネス最前線」

環境委員会主催のCDMセミナー「CO2キャラバン 排出権ビジネス最前線」が5月23日午後4時から26人が参加して開催、JBIC銀行の本郷尚審議役のビジネスチャンスの話に熱心に聞入っていた

環境委員会(宮田次郎委員長)主催のCDMビジネスチャンス拡大セミナー「CO2 排出権ビジネス最前線」に、JBIC銀行の本郷尚京都メカニズム担当審議役を講師に迎えて、5月23日午後4時から5時30分まで商工会議所会議室に26 人が参加、いよいよ動きだした二酸化炭素取引ビジネスチャンスの講演に熱心に聞入っていた。

本郷審議役は排出権ビジネスの3つの潮流として、180件以上に増え続けている京都メカニズム利用案件、今まで関心を持っていなかったヘッジファンド関係者も排出権の国際商品化に乗り出してきており、京都議定書に反対していた米国がCO2ビジネスに参入してきた。

また2005年からジェトロなどとJBICが欧州各地で開始したCO2キャラバンの3つのメッセージとして、京都議定書は気候変動問題対策の一手段であ り、エネルギー問題と表裏一体の関係にあり、排出権ビジネスはエネルギー消費抑制することであり、省エネ効果+排出権売却効果=ボーナス収入、排出権ビジネスチャンスは発電所、セメント工場、製鉄所、自動車やトラックや事業所など身近なところにもビジネスチャンスが拡大している。

2005年の二酸化炭素排出権購入は日本が38%を占めて世界トップ、英国15%、イタリア11%、日本は2012年までに1990年の温室効果ガスの 6%削減が取決められており、排出目標は11億6,200万トンであるが、排出量は13億2,900万トン、1億7,000万トンの削減が必要であり、世 界最大の需要国である日本企業に大いにビジネスチャンスがでてきていると強調した。

欧州は二酸化炭素取引ビジネスで先行しており、ブラジルなどで排出権を購入しているが、JBICは機械メーカーなどとタイアップして温暖化削減事業に融資をしてい るが、従来のビジネスモデル以外に、日本型ビジネスモデルとして日本企業の優れた省エネ技術、豊富な海外プロジェクト経験のJBICの融資、日本カーボン ファイナンスによる排出権の購入を進めており、ブルガリアの風力発電合同事業、中国の炭田開発から発生するメタン回収プロジェクトなどを行なっている。

日本のイニシアチブで二酸化炭素削減プロジェクトとして、ロシアの削減義務は1990年比ゼロで、1990年以降の経済停滞で実際の排出量は基準年の1990年を大幅に下回っており、JBICはロシア・東欧の余剰枠を日本が購入して、CO2削減目的に使用して日本企業へのビジネスチャンスを提供するグ リーン投資や中国での白熱電球から蛍光灯への切替による日本企業の蛍光灯製造メーカーへのビジネスチャンス提供及び省エネによるCO2販売権取引などを推 進している。

またJBICでは環境にやさしい案件・製品製造や温暖化対策に貢献する製品を製造 する投資支援として、日本企業が世界シェアの50%を占める再生可能エネルギー案件の太陽光パネル製造や日本企業が独占していてCO2がガソリンよりも 20%から30%低いジーゼル用フィルター製造支援を行なっている。

世界の二酸化炭素排出量 は京都議定書に批准していない米国24.1%、オーストラリア1.7%、削減義務のない中国が13%、インド4%、韓国1.7%で削減義務のある日本は 4.7%でこれらの6カ国で世界の半分を占めているが、経済成長率の目覚しい中国及びインドから排出されるCO2が懸念されている。

米国が中心となって立ち上げたクリーン開発と気候に関するアジア太平洋パートナーシップ(APP)は世界のCO2排出量の50%を占める6カ国で構成さ れ、電力、鉄鋼など8分野の産業別に、日米などが持つ省エネ・環境技術を中国やインドに移転させて排出権ビジネスを拡大するもので、米国もCO2削減の ビッグビジネスチャンスに本格的に乗り出してきたと結んで講演を終了した。

講演後の質疑応答 ではCO2排出権取引の長期的なトレンド、2012年までに割当量の削減が出来なかったときのペナルティ、2012年以降のCO2取引の継続の可能性、エ タノール燃料使用による排出権など多岐にわたって質問が行なわれたが、本郷審議役は参加者が頷いて納得できる回答をしていた。宮田次郎環境委員長が進行役 を務め、相川武利JBIC首席駐在員、田中信会頭など多数が参加した。

本郷尚審査役の略歴

1958年 秋田県生まれ
1981年 日本輸出入銀行(当時)入行
1985年 経済企画庁出向(国際経済担当)
1988年 営業第二部(ロシア、東欧担当)
1992年 日本興業銀行ロンドン支店(当時)出向
1996年 営業第二部課長代理(ロシア、東欧担当)
1998年 国際金融第二部課長(中東、アフリカ担当)
2000年 環境審査室課長
2002年 フランクフルト首席駐在員
2005年 IT・京都メカニズム審議役

主な国際会議での発表
2003年  中東欧JIセミナー(ブタペスト)
2004年  中東欧JIセミナー(ウィーン)、UNIDO主催京都メカニズム活用の仕方(ウィ        
―ン)
2005 年  Carbon Expo(ケルン)、Green Power,Financing Renewable Energy                                 Finance(プラハ、ローマ)、UNEPF inancing Iniciative(NY)
2006年  Market Insight〔コペンハーゲン〕、アジア太平洋パートナーシップ(バークレー)、ICS-CDMフォーラム(北京)、Carbon Expo〔ケルン〕など多数

主なレポート
2003年 「温暖化ガス削減、商機に」(日経金融)
2004年 「CO2排出権ビジネス最前線」(世界週報)
2005年 「排出権取引で中・東欧にビジネスチャンス」(世界週報)
「排出権取引 EUの取組、世界をリード」読売新聞「論点」
「グリーン投資への対応急げ」毎日新聞「発言席」
「排出権が欧州・力ビジネスを変える」(フジサンケイビジネスアイ)
「温暖化対策で勝ち組に 認識が低い日本企業」共同通信「にっぽん」診断
「欧州が動く 次世代ビジネス」(NNA 7回連載
「EU排出権価格高騰 価格は二分化」(日経エコロジー)
「再生可能エネルギーに注目」〔共同通信「にっぽん診断」
2006年 「環境は新しいビジネスチャンス」〔フジサンケイビジネスアイ〕
「グリーン投資スキーム」(日経エコロジー)
「米国の温暖化対策の新世界戦略」〔世界週報〕
「国益で対立する温暖化対策」共同通信「にっぽん診断」
その他多数

その他
産業構造審議会環境部会市場メカニズム専門委員会オブザーバー
国連環境計画気候変動ワーキンググループ

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=33676