第3回三井物産冠講座に60人が参加して開催

ブラジル三井物産(中山立夫社長)主催の第3回冠講座が2010年4月5日午後6時から9時まで、サンパウロ州立大学法学部の講堂に60人が参加して開催された。

初めに東京大学の島村暁代助教がポルトガル語による「日伯年金協定締結への最近の動き」と題して、2008年の金融危機前には30万人以上の在日ブラジル人が滞在していたが、金融危機後に多くの在日ブラジル人は失業などで大幅に減少、帰国旅費支援を受けてブラジルに帰国した人も多くいたと説明した。

就労の認定を受けている永住もしくは定住外国人と呼ばれるステータスのある人も生活保護を受給することができ、「緊急人材育成・就職支援基金」を活用した職業訓練、再就職支援、生活支援などの資格を擁していると説明した。

また在日外国人労働者への子供手当ては、自国に子供を残していても その子供は対象人数分が支給されるが、〈1〉少なくとも年2回以上、子どもと面会している〈2〉生活費などの送金がおおむね4か月に1度は継続的に行われている〈3〉来日前に親と子どもが同居していたことを居住証明書などで確認できる事などを満たさなければならない。

現在、日本に住むブラジル人は年金加入の義務付けによって、社会保険料がブラジルと日本の2重加入となっており、日本では公的年金は25年以上加入しなければ受給することができない

25年以下の場合でブラジルに帰国するときに、手続きをすれば脱退一時金が返金されるが、ブラジルでの加入期間として算入がされないために、もし社会保障協定が2国間で締結されれば、日本に住むブラジル人が払う社会保険料は日本だけでよくなり、日本で支払った社会保険料をブラジルでの加入期間に算入できることになり、またブラジルに住む日本人にも逆パターンであり、これが締結されれば両国に住む方々にとってはかなりのメリットがあり、年内の保障協定締結に向けて両国で協力し合っていると結んだ。

続いて東京大学法学部の荒木尚志教授は「日本の雇用システムの変化と労働政策・外国人労働者政策の課題」と題して、日本の雇用システムは終身雇用から1980年代の社会構造の変化や雇用システムの変化で非正規雇用の増加、調整弁としての外国人労働者雇用などが増加して、急速に変化してきていると説明した。

30年以上前の雇用形態はピラミッド型で若年層が多かったが、少子高齢化で雇用形態が大きく変化して、高給のオールドワーカーや外国人ワーカーの増加で若年層の雇用が減少して、1990年の正規雇用の比率は80%であったが、2008年には66%まで低下して非正規雇用が増加している。

リーマンブラザーズ破綻後に発生した派遣切りや雇い止めによる失業率の増加に伴う、貧困層の拡大や所持金が底をついた失業者向けの炊き出しなど益々雇用が悪化してきているために、解決の糸口を見つける必要がある。

正規雇用と非正規雇用の賃金格差は開く一方であり、また労働者の価値観も多様化してきており、今後は労働者を尊重した雇用形態の模索が急がれると結んで講演を終え、島村暁代助教授並びに荒木尚志教授に記念のプレートが送られた。

左から講演を行った東京大学の島村暁代助教/荒木尚志教授/通訳のサンパウロ大学の二宮正人教授 (fotos Rubens Ito/CCIBJ)

左から記念プレートを受取る東京大学法学部の荒木尚志教授/贈呈する中山立夫会頭

60人が参加して開催された第3回三井冠講座

 

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