下院外交・防衛委員会および日本大使館共催の日伯経済セミナー

下院外交・防衛委員会および日本大使館共催の日伯経済セミナーが5月31日午前9時から午後1時まで下院会議場で開催された

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下院外交・防衛委員会及び日本大使館共催の日伯経済セミナーが、アロウド・セドラス下院議員(PFL-BA)が進行役を務めて、5月31日午前9時から午後1時まで下院会議場で開催、日伯経済に関する多様なテーマで講演会や討論会が行われ、連邦政府、全国工業連合 (CNI)、日本ブラジル商工会議所、日本政府の金融関係の代表などが出席した。

日伯経済セミナーは下院外交・防衛委員長のアルセウ・コラーレス下議、レジス・アリスニアン外相代理、イヴァン・ラマーリョ産業開発相代理及び堀村隆彦日本大使の開会挨拶で始まった。

9時35分からは「日伯経済関係の現状及び展望」と題してアロウド・セドラス下議が進行役を務め、ブラジル日本商工会議所の田中信会頭が講演、続いて工藤章名誉会頭が「日本経済界のブラジルに対する見方」、大前孝雄副会頭は「ブラジルの投資環境及び日伯EPA」について、ジョゼ・アウグストCNI代表は「日伯間のEPA締結」、岩村哲夫副会頭は「移転価格税制」についてそれぞれ講演、その後、一時間近くの討論会が行なわれた。

続いて日本政府の関連機関の代表者による講演会が、パウロ・デルガード下議の司会で始まり、国際協力銀行(JBIC)の尾頭寛氏が「日本からの投資及び今後の投資分野」、JICAの小林正博所長は「今後の技術協力」、ジェトロの渡邊裕司所長は「投資誘致の障害」、上野アントニオ元下議は「日伯政治関係の昨今」、堤寿彦リオ商工会議所会頭は「投資意欲改善」、山岸照明アマゾナス商工会議所会頭は「移転価格や税制の改善」について講演して。日伯経済セミナーが閉会した。

またプレゼンティター以外にブラジル日本商工会議所から平田藤義事務局長、藤下温雄三井物産副社長、大野太郎三菱商事重役、大使館から大竹公使、佐野書記官、近藤書記官、阿辺書記官が参加した。

下記はCamara dos Deptados-Agenciaに掲載された記事を抜粋、翻訳したものです。

イヴァン・ラマーリョ産業開発相代理は、日本はブラジルにとって第6位の貿易相手国であり貿易額は60億ドル、日本への輸出はエタノールが有望であると説明した。

外務省貿易局のレジス・アリス二アン理事は、ブラジルと日本とのFTA締結にはメルコースルとの締結及び農業部門包括が条件である。4月にブエノス・アイレスで開催された会議では、日本政府は農業部門を除いた経済、投資、サービスや工業製品部門の締結だけであったが、今回の会議では農業部門も包括される可能性がでてきた。またブラジルはヨーロッパ連合国とテレコミニケーション部門での投資で話合いが進んでおり、日本にも同じ条件を提示する用意がある。

ブラジル日本商工会議所の田中信会頭は、2004年に総理として8年ぶりに小泉首相がブラジル訪問、2005年5月にルーラ大統領が訪日に日伯経済関係活性化が話合われた。2005年にブラジル日本商工会議所はCNI及び経団連の依頼により会員企業150社にブラジルのビジネス環境調査を実施した。調査では環境、エネルギー、付加価値の高い科学技術分野への投資意欲が高かった。田中会頭は2008年から新しい日伯関係が開始すると予想している。日本には30万人のブラジル人が働いており、毎年数十億ドルを送金している。またブラジル日本商工会議所は1926年に設立、287企業が会員となっている。

ブラジル日本商工会議所の工藤章名誉会頭は、日本からブラジルへの投資の障害はインフラの不整備、官僚的通関業務、過重な税金、労働者に手厚い労働法、脆弱な為替市場を指摘した。2004年ルーラ大統領は500人を超える経済界のミッションに同行した。日本は中国に注目しており1994年から2004年には日中貿易は480億ドルから1680億ドルと3.7倍に拡大、日本にとって中国との貿易シェアは20.1%となり米国を向いて1位になった。

ブラジルへの投資が伸びないのはブラジルコストを取り除く必要があるが、今後の日伯間貿易では、環境と新エネルギー分野及び先端技術分野が期待できる。工藤名誉会頭はブラジルから日本へのエタノール輸出、カーボンクレジット、半導体工場建設を含むブラジルのデジタルテレビの日本方式の採用など今後に期待できる。

ブラジル日本商工会議所の大前孝雄副会頭は、海外からブラジルへの投資は減少する傾向にあると指摘、ブラジル、ロシア、インド及び中国からなるBric諸国の中で2000年から2005年にかけて、ブラジルへの投資は328億ドルから152億ドルに減少したが、ロシアへは27億ドルから146億ドルと大幅に上昇している。中国への投資は407億ドルから603億ドルに上昇している。投資の障害はブラジル税制、公共支出、クレジット不足などを挙げ、その上にインフラ不整備、緩慢な通関業務、複雑な税制、高金利、脆弱な為替市場、労働者保護の労働法などのブラジルコストを指摘した。

また大前副会頭は日本からの投資を再活性化するには先端技術のブラジル市場の開放、投資に関する規制の改善、二重課税の防止などの改善を指摘、日本がAseanとの間で進めているFTAが21世紀の日伯関係の見本となる。

ジョゼ・アウグストCNI代表は、日本はブラジルの貿易相手国としては大変重要であり、日伯間のEPA締結の必要性を強調した。CNIの調査によると大半の加盟企業は日本とのEPA締結をポジチブとの調査結果がでている。しかし日本とメキシコとのEPA締結の経験から自動車及び電機電子業界は関税撤廃で競争力を失う可能性があると指摘した。また製品に対する関税撤廃は重要であるが、牛肉、豚肉や鶏肉、生鮮果物などの農産物輸出時の検疫問題も合意に達しなければならない。2001年から2004年の日本からブラジルへの投資は投資全体の4%に過ぎないが、ヨーロッパは48%を占めている。

ブラジル日本商工会議所の岩村哲夫副会頭は、今年初めにジェトロが在中南米進出日系企業を対象に実施したアンケート調査の「現在直面している経常の問題点」で、アンケートに回答した63企業のうち40企業が「税制問題」を指摘しており、この問題に対処するために「移転価格税制委員会」を発足させた。ブラジルの移転価格税法はOECDのガイドラインに沿わない独自の税制であり、当該取引社間での所得に対し、二重課税が発生する可能性がある。また業種・製品による特殊性に配慮した税制になっていない。このために実際に二重課税を課せられるケースを含め、対応のために膨大な資料の準備が要求され、大変な負担になっている。業界毎に異なる利益マージン比率の適応を要請した。

国際協力銀行(JBIC)の尾頭寛氏はラテンアメリカへの日本からの投資は17.3%を占めており、そのうちブラジルは49.4%で6位にランクされており、主な投資国はアジアに集中している。最近の日本からの融資はインフラ整備、エネルギー、環境保全、CDM関係に24億2,700万ドルであった。JBICは1958年にリオに事務所を開設、世界29ヵ所で活動していると説明した。

JICAの小林正博所長はアジア諸国に続いてブラジルは技術協力パートナーとして6位であり、自然環境、貧困撲滅や国際社会競争力強化の分野が優先されている。またJICAは2005年のルーラ大統領訪日時に、日本でメルコスル域内での観光事業プロモーション促進するために事務所を開設した。またブラジル農牧調査研究公社(Embrapa)とキャサバの品種改良、熱帯フルーツや野菜の生産などで共同開発している他に再生可能エネルギーの開発にも投資している。

ジェトロの渡邊裕司所長は日本からブラジルへの投資はFiesp が強調しているように、現在15.75%である基本金利が10%に下がると上昇する。中国の経済成長率が9.5%に対してブラジルは僅かに2.3%であり、日本の投資企業の意欲を削いでいる。また1967年から1973年にかけてブラジルの経済成長率は年平均12.7%で日本企業は500社進出していたが、今では350社に減少している。また渡邊所長は投資を呼び込むためには都市圏での治安回復が必須であり、サンパウロ転勤が決まったときは友人からサンパウロの治安の悪さを吹聴された。

パラナ商工会議所会頭の上野アントニオ元下議は、70年代の日伯の良好な政治関係に触れ、26歳のときにブラジルに住んだことのある小渕恵三元首相、田中龍夫元大臣など多くのブラキチが存在した。

リオ商工会議所の堤寿彦会頭は、駐在員に対するブラジルの入国ヴィザ発行短縮、ブラジルは大好きであるが強盗事件に遭遇したことを挙げてリオ市の治安改善を要請した。

アマゾナス日本商工会議所の山岸照明会頭は、頻繁に変わる税制、移転価格税制、国税局や国家衛生監督庁のストライキなどについて改善の要求をした。

最後にパウロ・デルガード下議員(PT-MG)は、ブラジルへの投資環境やブラジルの改善点が明確に理解できた。今後は投資環境や治安改善に努めるが、特に強盗事件に遭遇した堤リオ商工会議所会頭に詫びた。

出所‐Agencia Camara(31.05.06)を翻訳
写真―Otavio Praxedes-Agencia Camara

5月31日日伯経済セミナー参加者リスト(結果)

1.伯側

(1)下院議員(括弧中は所属政党。*は公邸昼食会参加者)
コアレス下院外交・国防委員長(PDT)
セドラス下院前外交・国防委員長(PFL)*
アルメイダ下院議員(PTB)*
コスタ下院議員(PDT)
ザシャロー下院議員(PMDB)
パヌンズィオ下院議員(PSDB)*
ベゼッハ下院議員(PTB)  元鉱山動力大臣
リンス下院議員(PMDB)*
メーレス下院議員(PFL)
カジャード下院議員(PFL)
ガベイラ下院議員(PV)
ロドリゲス下院議員(PFL)
セルバ下院議員(PSDB)
カステロ下院議員(PSDB)*
ネット下院議員(PDT)*
マニーニャ下院議員(PSOL)
ジェズス下院議員(PFL)
モウラン下院議員(PT)
フランケンベルゲン下院議員(PTB)
カルバーリョ下院議員(PFL)*
マデイラ下院議員(PSDB)*
ゴールドマン下院議員(PSDB)*  元運輸大臣、PSDB下院議員リーダー
パウラ下院議員(PFL)
J.デルガード下院議員(PSB)
モンテイロ下院議員(PT)
ハウレイ下院議員(PSDB)
P.デルガード下院議員(PT)*  日伯議員連盟会長代行
テオフィーロ下院議員(PPS)*
マルティンス下院議員(PPS)
バッホス下院議員(PP)
(*ホシーニャ下院議員(PT)、*ガデーリャ下院議員(PTB)は昼食会のみ参加。)
(2)政府
アルスラニアン外務省国際貿易局長
ハマーリョ開発商工省次官
(3)民間
フェルナンデスCNI(ブラジル工業連盟)理事

2.日本側

(1)大使館・領事館
堀村大使
西林サンパウロ総領事
大竹公使
佐野書記官
近藤書記官
阿辺書記官
(2)民間
(サンパウロ商工会議所)
田中会頭
工藤名誉会頭(三菱商事支社長)
大前副会頭(三井物産支社長)
岩村副会頭(ホンダ支社長)
平田事務局長
堤リオ商工会議所会頭(三菱商事リオ支店長)
アントニオ・ウエノ パラナ商工会議所会頭
山岸 アマゾニア商工会議所会頭       ほか
(3)政府機関等
JBIC 尾頭駐在員
JICA 小林所長
JETRO 渡邉所長               ほか

出所‐Agencia Camara(31.05.06)を翻訳
写真―Otavio Praxedes-Agencia Camara

 

下院外交・防衛委員会の日伯経済セミナー(スピーチ/プレゼン資料)

岩村哲夫副会頭
大前孝雄副会頭
工藤章名誉会頭
田中信会頭

 

https://camaradojapao.org.br/jp/?p=34382