ブラジル金融市場講座に60人が参加して開催

金融部会(遠藤秀憲部会長)主催のブラジル金融市場講座「☆これで分かる!☆ブラジル金融市場講座1~金利・為替相場の決定要因~」が2012年5月25日午後4時から6時まで60人が参加して開催され、講師は、ブラジル三菱東京UFJ銀行為替資金部の川原一浩取締役が務めた。

講演を前に、遠藤部会長は講師の川原氏の略歴を紹介、また配布された講演会のアンケート記入への協力並びに7月24日にブラジル金融市場講座その2の開催についても案内した。

初めに、川原氏は金利・為替の決定には経済のファンダメンタルズ並びに金融政策、需給・ポジション、季節性をトレーダーとして大切にしていると説明、中銀のトインビーニ総裁は、昨年8月に金融スペシャリストが驚く利下げを実行して変幻自在に動いており、欧米のように金融市場との対話を重要視しておらず、エコノミストやストラテジストが相場をピンポイントで的中するのは難しいと説明した。

現在のブラジルのビジネス環境は、債務危機並びにハイパーインフレ、スタグネーション、通貨切り下げ、高カントリーリスクなどのあった80年代とは、比較にならないほど改善、特に1994年のレアルプラン以降はハイパーインフレの終焉、為替の変動相場制移行、国営企業の民営化、カントリーリスクの改善、2002年末のルーラ大統領の当選で大幅なレアル安の為替暴落なルーラショックが発生したが、2005年には国際通貨基金(IMF)へのローン完済、外貨準備高増加で純債権国、投資適格国への格上げなど経済ファンダメンタルズは格段に改善、2008年のリーマンショックからいち早く抜け出した国となっている。

カントリーリスクの目覚ましい改善、インフレはコントロール可能なレベルまで低下、昨年のブラジルのGDPは世界6位、2017年にはフランスを追越して5位、2050年には4位に上昇すると予想、ブラジルは最も洗練された外国為替市場で、米国よりも一歩も二歩も進んだ国となっている。

ブラジルの金融システムの特徴的構造として、上位10行で総資産の80%を占める大手行による寡占、民間銀行並びに外資系銀行は短期資金、政府系銀行が大型プロジェクトなどの長期資金を手当て、ブラジルコストと呼ばれる30%を超える個人向けクレジットスプレッド、平均でも20%を超す銀行のROE、ちなみにブラジル銀行のROEは26.46%、ブラデスコ銀行は22.33%、イタウー銀行は20.57%と米州の銀行ROEのトップ3を占めている。

連邦政府は国内経済活性化の一環として、政策誘導金利(Selic)の連続した引下げに伴う公立銀行の大幅な利下げ並びに収益率が高すぎる民間銀行の利下げを要請、それに対して、民間銀行は、連邦政府に対して強制預託金の引下げ並びに減税、保証強化などを要請していた。

中銀のミッションとしては、通貨の安定的購買力並びに公立的な金融システムの維持であるが、レアル高の為替並びに世界的な不況や7%を超えるインフレにも関わらず、利下げを実行、トインビーニ総裁就任後の15カ月間で10回中3回予想を上回る利下げを実行している。

堅調な労働市場を背景に個人消費は高水準を維持しているが、レアル高による外需の伸び悩み、輸入品との競合で在庫増加による生産減少しており、今後は信頼感の悪化による投資意欲の減退の悪循環に陥る懸念が否定できないが、国内産業の育成が必要不可欠となっている。

長年、世界の実質最高金利を続けてきたブラジルは相次ぐ利下げでその座をロシアに譲ったが、ジウマ大統領は今後、Selic金利を先進諸国並みに下げるために、大きな障害となっていたポウパンサ預金の金利計算方法の変更に成功したために、今後も引き続きブラジル国債の魅力を保つことが可能となった。

中銀のフォーカスレポートでは、今年のSelic金利は8.5%、来年は10%、2014年は8.2%を予想、連邦政府は欧米の超低金利による資金流入によるレアル高が進行を阻止するため、3月に金融取引税(IOF)を変更、また世界的なドル高傾向も後押ししてR$2.05を大幅に上回ったために、中銀は大幅な為替介入を実施した。

ブラジルは大豆、砂糖、コーヒー、鉄鉱石などのコモディティ商品の輸出比率が非常に高く、また原油も2006年から輸出国に転じ、コモディティ価格が上昇すれば、レアル高の為替となるが、最近のレアル安に対して投資家は冷静に見ていることが大きく変化してきており、また今年の後半の注目点として、国内産業を中心とした景気回復、インフレリスクの顕在化、ヨーロッパの不透明感の払拭の可能性などについて説明、素晴らしい講演に対して、大きな拍手が送られて講演を終了、情報交換会では、多くの参加者が色々な意見交換を行っていた。

講師のブラジル三菱東京UFJ銀行為替資金部の川原一浩取締役 (Foto: Rubens Ito/CCIJB)

左から金融部会の遠藤秀憲部会長/山崎展生副部会長

60人が参加して開催された金融市場講座

 

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