第9回三井物産冠日本研究講座に40人が参加して開催

第9回三井物産冠日本研究講座は、2012年10月22日午後4時から8時までサンパウロ大学法学部別館アルカーダス講堂に40人が参加して開催、三井物産冠日本研究講座並びに早稲田大学法学部・サンパウロ大学国際法国際関係研究所共催、サンパウロ大学法学部国際法比較法研究科並びに伯日比較法学会、ブラジル日本商工会議所が後援。

コーディネーターはサンパウロ大学法学部博士の二宮正人教授が務め、初めにブラジル三井物産の長谷川取締役が講演者それぞれにディプロマ並びに記念品を贈呈、第一セッションの座長はサンパウロ大学法学部博士の渡部和夫教授、早稲田大学法学部上村達男教授は、『日本におけるコーポレート・ガバナンス』 と題して、米国では各州がそれぞれの会社法の規制緩和競争を行ない、最後に規制の回避地となるデラウェア州の会社法が勝ったが、このような自由による弊害を回避するため、連邦証券所による情報開示・監視体系を確立するとともに、強権を発動できる証券取引委員会(SEC)を設置するなど自由も最大なら規律も最大というやり方を採用、しかし日本はデラウェア州の会社法を参考に会社法を改正して自由を最大にしたにも関わらず、同時に導入すべき規制措置を全く考慮しなかったために、日本の会社法改正は批判の対象となっており、また、米国発の金融危機もリスク管理の失敗のような経営問題が原因ではなく、法と規制の欠陥が原因であったと説明、コメンテーターはサンパウロ大学法学部博士のカルロス・ポルトガル・ゴウヴェア教授は、学生に証券市場の話を始める前に必ず17世紀の堂島の米問屋の話をすると前置き、上村達男教授に対して非常に素晴らしい講演であったとお礼を述べた。

証券市場と株式会社は一体であり、証券市場の要請に耐えうる株式会社でなければならず、証券取引法が市場機能確保のための法であるとの理解が確立していることが前提であり、また証券市場を通じて国民全体を相手とする時代に入っており、証券市場をどの程度活用して、どの程度信頼するかにより株式会社法制に対する要求は変わる。

証券市場が求める情報開示・会計・監査を実行しうる経営の目的・理念・成果とガバナンスが要求されており、評価して株式を買ってくれた株主に期待に応える経営のあり方の重要性を説明、また日本では株主の多くが事業法人で、個人株主は極めて少ないが、中国の株主は国家、中近東のソブリンファンドはデモクラシーがなく資本市場のみであるためグローバル的な規制もないために、グローバル資本市場で勝利を収めるなどと説明した。

第二セッションの座長はサンパウロ大学法学部のファービオ・ヌスデオ名誉教授、ロンドン大学の小田博教授は『日本における仲裁に関わる諸問題』と題して、ICC仲裁裁判所では自身は仲裁を行わないが、ICC仲裁裁判所事務局の助力を得ながら、ICC仲裁を管理するために、ICC仲裁規則にて定められた機能を果たす機関あり、国際間のコマーシャル仲裁についての84グローバル企業の調査では裁判よりも仲裁を希望する傾向があり、仲裁件数ではICCが45%、米国仲裁協会(AAA)並びに国際紛争解決センター(ICDR)が16%、ロンドン国際仲裁センター(LCIA)が11%を占め、成功率は92%に達していると説明した。

2010年の仲裁件数比較ではICCが790件、AAAが888件、LCIA246件、仲裁傾向としてチリやペルーなどの資源保有国での仲裁が増加、また中近東やアフリカでも増加傾向、ICCの仲裁件数の10%はエネルギーや石油関連事業であり、仲裁成功には3年から5年かかる場合があり、また弁護士の報酬高によるコストも増加してきている。

日本企業の仲裁依頼件数は全体の4.0%前後であり、係争額は比較的少額であるが、日本企業は一回限りの仲裁で失敗を恐れるために避ける傾向があるにも関わらず、また国際機関でないために仲裁機関への不信もあるが、海外進出企業が現地の裁判所に訴えても役に立たないために、仲裁機関を利用しなければならないなどと説明、コメンテーターのジェツリオ・ヴァルガス財団法学部博士のダニエラ・モンテイロ・ガバイ講師は、パワーポイントを使いながらブラジルの主要な経済団体、統計などについて説明、最後に素晴らしい講演に丁寧にお礼を述べた。

左から早稲田大学法学部上村達男教授/ロンドン大学の小田博教授/サンパウロ大学法学部のファービオ・ヌスデオ名誉教授/サンパウロ大学法学部博士の渡部和夫教授(Fotos: Rubens Ito / CCIJB)

左からジェツリオ・ヴァルガス財団法学部博士のダニエラ・モンテイロ・ガバイ講師/サンパウロ大学法学部のファービオ・ヌスデオ名誉教授/講演中のロンドン大学の小田博教授

40人が参加した第9回三井物産冠日本研究講座


 

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