第10回日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会開催

経済産業省と産業貿易省(MDIC)は2016年10月6日、経済産業省内国際会議場(東京霞ヶ関)において第10回日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会(貿投委)を開催、日本、ブラジル両国政府、企業関係者70名が参加し、両国経済関係の強化に向け、ビジネス環境整備、投資促進及び産業協力、貿易交渉等を議題に活発な議論が行なわれた(アジェンダは別添参照)。本委員会において、松永愛一郎ブラジル日本商工会議所会頭兼政策対話委員長は、AGIR活動の進捗報告ならびに今後の活動方針として労働、課税分野におけるブラジルコストの改善に向けた新たな政策対話への取り組みを提案、ブラジル産業界全体の国際競争力強化と日系企業の進出支援に向けたMDICの協力を要請した。

                       
                                        第10回貿投委 開催風景

Pdf第10回貿投委アジェンダ

さらに本委員会において、ブラジルにおける特許審査の迅速化を企図するPPH(特許審査ハイウェイ)のスタディに取り組むことについて日伯共同声明への署名が行なわれた。

オープニングセッションでの両国議長の発言と松永会頭のプレゼン、その他登壇者のプレゼン内容は次のとおり。

オープニング

                                                (片瀬裕文・経済産業審議官)
                                          

テメル大統領が就任され、ブラジル経済に対する関心と新大統領のもとでの新しい経済政策に対する期待が高まっています。ブラジルに事業展開する日本企業は現在700社程と南米一のレベルにあり、すでに高い水準にありますが、日本の技術力を活用したブラジルの生産性の向上、ブラジルの資源力を活用した日本産業の競争力強化という相互補完性を考えれば両国の経済関係はさらに大きく伸びる可能性があると考えています。

こうした中先月、2014年以来となる日伯首脳会談が行なわれました。本会談では、両国の経済関係の取り組みを双方でサポートし、経済関係を一層発展させていく旨の合意がなされました。再び動き始めた日伯関係を確実に加速させていくことが重要です。そのためには、今週開催された日伯賢人会議、日伯経済合同委員会を踏まえ、本委員会においてビジネスの阻害要因の解決策を真摯に検討するなど両国経済を共に成長させていくための議論を行なうことが重要だと考えています。具体的には、テメル大統領のもとにおけるブラジルの産業貿易政策に日本としてどのような協力が出来るか、また企業が直面するいわゆるブラジルコストの改善やそれ以外の個別課題について両国が共同してその解決に取り組んでいくことが重要であると考えています。また本委員会では、フルラン次官と私との間で特許審査協力に関する共同声明を締結することで合意いたしました。

本日の議論が実り多いものとなることを祈念しています。

                                                (フェルナンド・フルラン・産業貿易省次官)
                                               

ブラジルに政治的安定が戻り、来年から経済成長が図られるのではないかと考えています。再来週、テメル大統領が訪日しますが、両国の長年の関係が再び構築されるものと思います。現在、日本はブラジルの輸出相手国として6位、輸入相手国の8位に位置しており、自動車産業はじめ多くの日本企業がブラジルで活躍されています。工業分野において両国間で多くのイニシアティブがあり、中小企業支援等を行なうAGIR活動においては自動車産業分野における人材育成や輸出特区政策などが議論されています。エネルギーやロジスティクス分野での協力活動もあり、ブラジルにとってとても利益のある活動であると認識しており、AGIRプロジェクトをこれからも継続していきたいと思っています。また今年、日本との間で知財分野におけるPPH(特許審査ハイウェイ)のスタディに取り組むことにしております。

昨日開かれた日伯経済合同委員会に出席して、ブラジルの農業振興に向け日本が数々の協力をしていただいていることを知り、とても感銘を受けました。本日の委員会での議論を通じて、両国の関係をさらに深いものにしていきたいと考えています。

(アンドレ・コヘア・ド・ラーゴ・駐日ブラジル大使)

最近、日本企業のブラジルへの投資が困難に直面しているという話しを伺いました。私達はこれを良く認識しています。ブラジルでは新政権になって新たな見通しが開かれていくものと思います。PPIという新たなプログラムが発表され、ブラジルが再び成長していくためのプロジェクトに焦点が当てられていきます。

本委員会が官会合であることを踏まえ強調したいことがあります。現在直面している困難は私達にとっても懸念材料であり、正義という考え方のもとで適切な形での解決策が採られなければなりません。日伯はこれまで常に協働してきましたが、二つの民主主義大国において政府が全てを解決することはできないですし、解決しようとも思っていません。テメル大統領の訪日が予定されていますが、ブラジル政府が望むこと、日本政府が望むことをこの貴重な機会を使って話し合い、さらなる投資機会やそれに伴う優先順位を決めていければと思っています。両国は戦略的グローバルパートナーシップでありますからこれを応用、適用、形にしていかなくてはなりません。大統領訪日の際のアジェンダにおいて、特に投資の分野においてはよりポジティブなものにしていかなくてはなりません。ブラジルには負債もありますし、ネガティブな面があることはわかっています。しかしこの負債は前政権によって作られたものであり、今回はそのようなマイナス面にフォーカスするのではなく、両国の関係強化に向けたより前向きなアジェンダを設定できればと思っています。本日の委員会は、テメル大統領の訪日に向け非常に重要なものになるということをお伝えします。

セッション1.日伯経済合同委員会の報告

 大前・経団連日伯経済合同委員会企画部会長、森田経団連上席主幹より、このたび開催された同合同委員会での協議内容について報告が行われた後、Q&Aセッションにおいてラーゴ大使より、日伯EPA、投資協定の検討に関して下記コメントがあった。

合同委員会の概要は下記サイトを参照

http://jp.camaradojapao.org.br/news/atividades-da-camara/?materia=16401

                              (ラーゴ大使)
                      

 日伯関係について非常に重要なことをコメントさせていただきます。日本企業には是非ブラジル側の工場を見ていただきたいと思います。日本側が見たことだけでなく、両者がそれぞれ見なければいけないと思います。テクノロジーに関しては、もちろん日本は素晴らしい、先端の技術を持っておられますが、ブラジルも特に農業分野において優れたテクノロジーを持っています。日伯の貿易関係は多岐に渡り、単品だけを取り引きしているわけではありません。昨日の合同委員会のプレゼンにおいて、バイオマス分野における画期的なプロジェクトとして日伯企業が共同事業を展開している旨の紹介がありましたが、本事業は地球温暖化対策や持続可能な発展にも貢献し得るとても素晴らしい事業だと思いました。

日本からブラジル側にいろいろと要求があると思いますが、ブラジルからも日本に対しEPA等について前向きな提案をしています。私達の方は是非やりたいという考え方なのですが、これについて日本側が躊躇されている、未だ準備できていない状況にあるようです。これは投資協定についても同様です。ブラジル側は投資協定のドキュメントを既に提出しましたが、これに対する日本側からの返事はいただいておりません。二国間EPAについて、できないことを我々に要求してもしょうがないと思います。私達はメルコスールの加盟国であり、メルコスールとしての義務を果たさなければなりません。さきほどディグレCNI副会長がお話された日伯二国間EPAに向けた提言は素晴らしいことだとは思いますが、メルコスール加盟国として義務を果たさなければならないことがあります。セーフガードなどメルコスールと相談しなければならないことがあります。もちろん日伯だけで交渉できることもありますが、対ブラジル、対メルコスールの関係は非常に複雑だということです。森田上席主幹からローカルコンテンツ要求についてのお話がありましたが、日本側にとってこれは悪いことかもしれませんが、ブラジル側にとっては良いことなのです。日本企業がブラジルで活動される場合、このローカルコンテンツの要件を満たさなければなりませんが、これは80年代に日本企業がアメリカに進出した際と同じだと思います。

ブラジルにおいてInovar Autoというプログラムがあり、日本の4つの自動車メーカーがこのプログラムのもとで活動をされておられます。これについて両国で話し合いをしなければなりません、互いに両面があるということです。日本側だけでなくブラジル側にも要求があります。日本がブラジルに要求していることを私達はやっていない訳ではなく、やっていることもあります。正しい道のりで進んでいきたいと考えているのであり、それが世界の常識だと思っています。私がアメリカとカナダの関係から学んだことは、両国間には強い経済関係があるがために様々な問題が生じているということです。日伯間もこれと同様で、様々な問題を良い方向に解決していきたいと願っており、それについて私もお手伝いしていきたいと思います。

セッション2.ビジネス環境整備

日本商工会議所の取り組み

                                                    (赤木剛・日本商工会議所国際部長)
                                               

日本商工会議所は日本全国515の商工会議所の上部組織として、国内企業数の約1/3に相当する125万の会員を要する経済団体です。会員は、中小企業から大企業まであらゆる業種業態に渡っています。

日本では国内市場の大きな拡大が見込めない状況にあり、大企業のみならず中小企業にとっても成長著しい新興国を中心に海外展開が必要不可欠な状況にあります。そこで、日商では在外日本人商工会議所やジェトロなど関係機関との連携を取りながら日本企業の海外展開に積極的に取り組んでいるところです。新興国の中でもブラジルは世界第9位且つ南米最大の経済規模を誇り、進出日系企業は現在500社弱となっていますが、この中でサプライヤーとしての中小企業の進出は数十社に過ぎません。しかし、ブラジルは非常にポテンシャルが高く、日本企業にとっても大きな魅力があると考えており、ビジネス環境がより一層整備されれば日本企業の進出が一層増えていくものと期待しているところです。

日商では経済産業省と連携し、多数の新興国における市場開拓のための事業活動を強化しており、特にブラジルにおいてはブラジル経済の発展に貢献すべくブラジル日本商工会議所が推進しているAGIR活動を支援し、日商の天谷職員を2014年から派遣しています。今後、AGIR活動等を通じてブラジルの投資環境が一層整備され、日伯企業間のビジネス機会が拡大していくことを期待しています。日商においても125万会員のネットワークを生かし、AGIR活動の成果やブラジル進出の成功事例等について情報提供を行いながらブラジルの魅力を日本企業に伝えていきたいと考えています。

AGIRの進捗報告と今後の活動方針

                              (松永愛一郎・ブラジル日本商工会議所会頭兼制作対話委員長)
                                             

昨年の貿投委でもプレゼンをさせて頂きましたAGIRとは、ブラジルコストの改善やブラジル産業の国際競争力強化に向けて二国間の官民で共に提案・議論・答えを導き出し、日本企業によるブラジルへの更なる投資実現と日伯間の新たなビジネス機会の創出を目指す活動であり、このAGIRの実現に向け、 カマラでは昨年3月、「産業競争力強化・中小企業育成」、「インフラストラクチャー」、「課税」、「労働」、「通関」の5分野・48項目の提言書を取り纏めました。

当該提言書は多岐にわたるため、ブラジル産業界が深刻に抱える課題及び改善すべき優先5項目の提案を前回の貿投委で行った結果、開発商工省のご快諾のもと改善に向けた検討会議を実施してきました。まずはこれら優先5項目の進捗に ついて簡単にご説明させて頂きます。

優先5項目は、1)部品メーカーへの税制優遇等中小企業支援施策の策定、2)裾野産業における人材育成の促進、3)利便性のある経済特区・輸出促進特区の設置と効果的な運用、4)外貨導入によるインフラ整備の促進、5)効率的な電力使用環境の構築に向けたスマートグリッドの導入、からなります。

最初の3項目は、自動車産業を中心に「ブラジル裾野産業の育成・中小企業の進出促進」を図るための提案ですが、開発商工省より、特に中小企業支援と人材育成について高い関心が寄せられたことから、日本政府及び関係機関と連携し、各機関が実施している中小企業支援施策をご紹介すると共に、カマラ会員企業から、ブラジルローカルサプライヤーが直面する設備面・技術面における課題と改善策を提案し、また、中小製造業の税務負担の軽減に向け、Simples Nacionalと呼ばれる簡易・低率税務申告制度の改善策についても提案いたしました。

その結果、中小企業支援について、開発商工省は本年4月、「リーン生産方式」の考え方を採用したブラジル生産向上計画“Brasil Mais Productivo”を発表され、総額5千万レアル(約15億円)の予算を投じて、中小製造業3,000社の経営改善に取り組む事になりました。

また、税務負担の軽減についても、Simple Nacionalの対象  企業の範囲が拡大される見通しと聞いています。

現下の厳しい経済状況の中、こうした財政措置を伴う施策に 積極的に取り組まれている開発商工省をはじめとするブラジル政府に心から敬意を表したいと存じます。

輸出促進特区につきましては、カマラより要望致しましたサンパウロ周辺など大都市への経済特区等の設置を可能とする改正法案が開発商工省から国会に上程されていることから、その進捗に大いに期待しているところです。

残る2項目は、インフラ整備の促進を図るものですが、インフラ案件への外貨導入に関する近隣諸国との比較調査を行った結果、外貨を組み合わせたファイナンス、米ドルでの使用料の徴収、事業会社の国内での外貨口座の保有を可能にするなど海外投資家の為替リスクを軽減する施策を講じている近隣諸国では、民間資金が牽引する形で着実にインフラ整備が進んでいる一方、レアル建てが前提のブラジルとは進捗度合いに大きな違いがあることが明らかになりました。本年2月にマトピバ地域に於ける穀物輸送インフラ改善に向けた会議「第2回日伯農業・食料対話」の場において外貨導入の有効性を提案したところ、参加された4州の知事からも高い関心を頂きましたので、引続きフォローして参りたいと考えております。

スマートグリッド導入につきましては、既に開発商工省でも各種施策を進められているとの事でしたので、引き続き情報提供等カマラとしても出来る限りの協力をさせていただく所存です。

以上、優先5項目についての進捗を報告申しあげました。ここまでこの活動を続けることができたのは、偏に開発商工省の皆様の真摯なご対応と、両国関係者のご支援によるものであり、関係者の皆様には心より感謝申しあげる次第でございます。

次に今後の活動方針を御説明申し上げます。

ブラジル産業の競争力強化及び日系企業の進出支援の為には、優先5項目以外にも当初よりAGIRの主要項目であります労働、課税分野など、企業が日々直面する所謂ブラジルコストの改善が不可欠です。

テメル新政権の政策課題に、労働法や社会保障制度の見直しを挙げている事は産業界としても歓迎すべきことであることから、今後は、ブラジルコストの元凶となっている労働と課税分野の一層の改善に向け、関係省庁との協議に取り組んでいきたいと考えております。本年7月に開発商工省にご相談申し上げた内容と重複致しますが、これらブラジルコストが日本企業のみならずブラジル産業界全体の国際競争力を減退させる大きな要因であることを鑑みますと、産業振興を担う開発商工省の施策にも密接に係わる重要課題だと認識しておりますので、開発商工省には是非ともそのコーディネート役として当該省庁との橋渡しなど力添えを賜れば誠に有り難く存じます。

第1に、労働分野では、安定雇用を実現し、従業員のニーズやビジネス環境の変化に対応し得る柔軟な人事管理制度を導入・運用していくことが、企業競争力を維持・強化する上で大変重要である一方、現行の統一労働法の下では、こうした対応を取ることが極めて困難です。

特に賃金は、企業成長率を上回る昇給率が団体交渉を通じて半ば強制的に課される状況のため、企業の財務基盤は年々弱体化し、企業競争力は徐々に衰退しているのが現状です。増え続ける人件費負担を軽減するため、一定の給与水準を 超えた社員をやむなく解雇する企業が多数見られますが、現行の統一労働法により、結果として政府が望む労働者保護が果たせない状況に陥ってしまうのではないかと危惧しております。産業競争力を更に高め、従業員の雇用や生活の安定を図っていくためには、産業界と労働組合が協調しながら、一緒に改善に取り組むことが極めて重要だと考えております。

第2に、税制に於いては、ICMS(商品流通サービス税)制度の抜本的改革を強く求めて参る所存です。具体的には、税務クレジット蓄積の主たる要因である州毎に異なる税率の統一及び製造業者に過度な負担を強いている代行納税制度の廃止が必要であると考えております。

更に、国際的な価格競争力及び新たなビジネスの可能性も制約している移転価格税制の見直しも不可欠であると考えております。現在、ブラジル固有の移転価格税制の存在故に、ブラジルへの新規投資をためらったり、既に進出していても、ブラジル国内での生産活動を避け、他国から直接ブラジルの第三者企業に販売することで、本来ブラジル国内で行われるべき多くのビジネスの機会損失につながっている状況です。このような状況を改善するためにも、OECDガイドラインに準拠した移転価格制度の導入を強く要請していきたいと考えております。

以上より、これらの労働及び税制に関する見直しがなされれば、企業活動の活発化による雇用と税収の拡大、さらに、新技術の導入や既存技術の高度化により国家全体の産業競争力の飛躍躍的発展が強く期待されるところです。

去る8月3日、ブラジル下院に於いて、投資誘致と日伯友好をテーマに公聴会が開催され、私からARIG活動及びブラジルコスト改善の重要性を含めて説明致しました。出席された多くの議員から本活動へのご賛同を得、中には、AGIR活動への積極的な参加を他の議員に呼びかけられた方もおられました。AGIR提言の実現には、関係法の改正等が伴うケースも出てくるものと思いますので、引き続き、開発商工省はじめ、国会議員方々との情報交換にも努めて参りたいと考えております。

カマラといたしましては、ブラジルの持続的な産業基盤の強化及び日伯企業間のビジネス機会の拡大に貢献していきたいと考えておりますので、今後ともフルラン次官をはじめとする開発商工省の皆様には私どものカウンターパートとして本活動をお支え頂き、関係省庁との協議の実現に向けお力添えを賜りたく、切にお願い申しあげる次第でございます。

(マリア・マルガレッチ・産業局ロジスティクス担当課長)

我が省として今後もAGIR活動を支援していくことを約束します。これまで取り組んできた優先5項目においていくつか進展や成果が出てきているものがあります。シンプルナショナルにおける売上上限額の引き上げについては今週4日に法案が可決されました。労働や課税分野における課題については現在いくつかの項目が新政権のなかで検討されています。今後の取り組みですが、AGIRにおける自動車サプライヤーの育成事業についてさらに掘り下げた取り組みができたらと考えています。

輸出特区施策の展開について-日本へのミッション団の派遣-

                               (フルラン次官)
                       

現在ブラジルは世界第15位の輸出国です。世界の商業マーケットにどのように参画できるかを考えた場合、輸出においてその可能性が高いと認識しています。国内マーケットは農業、天然資源はじめ大変大きく、これらは地域経済を支えるリーダーシップ産業であり、また工業地域もございます。そのなかでブラジルのポテンシャルは大きく、世界マーケットにおいて大きなビジネスチャンスがあると考えています。輸出を通じて雇用や投資の拡大を図ることが出来るものと認識しています。

輸出特区について現在、改正法案が国会に上程されていますが、現行の輸出義務割合は80%に設定されています。税制優遇については、国内調達品や輸入に際してのIPI,PIS/COFINS等の税金が下がるなど多くの恩典が用意されています。また輸入に際して各種ライセンスを保持する必要もなくなります。特区内でのコンセッションの期間は20年で、さらに20年間延長することが可能です。北東部の特区においては上記恩典に加え地域インセンティブを享受することも可能になります。資材に対する税金やICMSが免除されます。

現在、全国で25の特区があり、その内19特区が18州において建設中です。すでに稼動していて活発に運営されている特区としてはアクレ州、ピアウィ州のパルナイーバ、セアラ州ペセンがあります。

MDICでは、この輸出特区を日本企業に広報するためにジェトロと協力して、来年上半期に日本においてセミナーを開催したいと考えています。ブラジルからミッション団が訪日し、特区制度についてプレゼンテーションを行い、その後、日本の投資家をブラジルに招き、特区見学会を催したいと思っております。

輸出特区に関するコンタクト先はスライドにある通りです。

(以下スライド)

国家輸出加工区審議会(CZPE)執行局(SE)

担当:タイゼ ペレイラ ペッソア ドゥットラ(Thaise Pereira Pessoa Dutra)事務次官

住所:Esplanada dos Ministérios, Bloco´J`, Sala 100-A

CEP:70053-900, Brasília-DF- Brasil

電話: (+5561)2027-8379

E-mail:seczpe@mdic.gov.br

http://www.mdic.gov.br/zonas-de-processamento-de-exportacao-czpe

(平田事務局長)

一昨年のブラジルの貿易収支は39億ドルの赤字であった。昨年(1月7日)、アルマンド・モンテイロ大臣の就任式に招待を受け、貴殿の前任者イヴァン・ハマーリョ副大臣に会い、この様な会合を通じてお互いより一層の経済成長を図って行こうではないかと約束した。

早速、その翌日メールで「中国の需要が鈍化、一次産品の国際相場が下落する中、ブラジルは2次産業を再生復活させ競争力を高め輸出産業を育成・強化して行く上でMDICが救世主たれ」と強く申し上げた。そのためにはこのZPE制度をもう一度見直そうではないかと3頁からなる提案書を送った。

本日のプレゼンでは8割の輸出義務(現行制度)が課せられているとあったが、小職の企業経験から経営上、可なり難しく6割くらいにすべしと申し上げた。過去、ブラジルのZPEは中国の経済特区とほぼ同時期にスタート、最近ではスライドにもあったように各州にほぼ1つの割合で25の特区が認可されているが、そこからの輸出実績があまり見られないので、もっと利便性の高い大消費地の近くにも設置して頂きたいとお願いした。

ZPE内には税関の設置は当然の事ながら複雑な税制に対処すべく、会計事務所などサービス分野の企業も誘致し輸出の増進を図らねばならない。ブラジルの製造業のGDPに占める割合は80年代当時の20数パーセントに比べると、今現在11%くらいに落ち込み危機的な状態にある。

製造業に関して日本は大変な技術力を持ち、色々とブラジルの貿易収支の改善に協力できると思っている。昨年の貿易収支は一次産品の輸出が大きく貢献しプラス収支に転じたが、製造業の重要性をしっかり認識頂き、是非とも再生強化に努めて頂きたい。

製造業を再生・活性化したら必然的に高度な技術も入ってくる。技術の導入が進めば人材も育成され、競争力が高まり、併せて雇用の拡大にも繋がり、相乗効果が期待できるからだ。先ほど日商様から企業の海外展開について述べられていたが、中小の企業にとっては明日からでも営業活動が出来るくらいにZPEを完備して頂きたいと痛切に思っている。

(フルラン次官)

事務局長、ありがとうございます。我々はどれだけの情熱を持っていらっしゃるかを良く存じ上げている。ブラジルのビジネス環境について熟知されているし、ブラジルの友人でもある。我々は大変重要なプロフェッショナルであると理解している。コメントして頂いた提案は全て良く検討させて頂きます。

(内尾・ジェトロ企画部海外地域戦略主幹)

 フルラン次官のご提案に感謝申しあげます。ジェトロ企画部において過去6年間、ブラジルについてのセミナーを数多く実施してきましたが、EPZに関するものは実施したことがありませんでした。こうした情報を日本企業に提供していくことは非常に重要で、またチャンスでもありますからジェトロとして出来る限りのお手伝いをしてまいりたいと考えております。

セッション3.投資促進及び産業協力

(マリア・マルガレッチ・産業局ロジスティクス担当課長)

ブラジルの産業政策と伯日の協力についてお話しさせていただきます。

現在、ブラジルの産業競争力を高めていかなければいけない状況にあります。伝統的な産業政策では解決できないような問題もありますし、インフラストラクチャーに起因するロジスティクスコストの問題、税制、労働の問題、高金利、生産性の低さ、設備の古さ、企業成長率よりも賃金上昇率が高いといった問題もあります。これまで10年間、ブラジルは伝統的な産業政策を採ってきましたが、ブラジルの競争力を高めるにはそれだけでは十分ではありませんでした。これまでのやり方を見直し、生産性と競争力にフォーカスを当てた新しい産業政策を考えていく必要が出て来ています。この一環で、インフラ案件に民間を呼び込むという民営化の議論が国会で行なわれていますし、新たな年金ファンドのルールやイノベーション、労働政策も考えていかなければなりません。さらに、生産性を上げるだけでなく簡素化にも取り組む必要があり、その背景には投資環境を良くしようという考え方があります。現在取り組んでいるブラジル生産性拡大計画による中小企業3000社への経営指導の推進、また保険、安全に関するルールであるスタンダード12という規則の見直しにも取り組んでいます。さらに、石油ガスセクターにおけるローカルコンテンツの刷新を考えています。産業分野における信頼度の回復を図るべくまだまだやるべきことはありますが、上記のような取り組みをポジティブなものとして捉えております。

自動車産業につきまして、すでにブラジルでは、トヨタ、ホンダ、日産、三菱の4社が事業活動を行なっていますが、現在の大きなテーマはInovar Auto政策の次のサイクルをどのような内容にするかということです。エンジアリングにフォーカスし、サプライヤーを本政策に取り込んでいくことを検討しています。また、電子部品、エレクトロニクスといったことにも焦点を当てながら、世界に販売していける製品づくりに取り組んでいく必要があると考えています。ブラジルのサプライヤーをグローバルサプライチェーンに組み込んでいく必要があります。さらに、ブラジル自動車メーカーのビジネスモデルを現在の都市モビリティに対応するような形に変えていかなければならないと考えています。次のサイクルのInovar Auto政策によってブラジルの自動車産業がグローバルな競争力をもった産業になって欲しいと願っています。

両国間の協力について。自動車部品メーカーの育成について、ブラジル政府からすでにJICAに提案している活動があります。日本の自動車メーカーの品質要求に適う部品メーカーの育成に取り組むべく計30人のコンサルタントを日本に30日間派遣し、研修を行なうというものです。これによりブラジル中小企業の生産性を上げていきたいと考えています。

この他、サンパウロで行なわれる固形廃棄物政策に係わるリバースロジスティクスプロジェクトというものもあります。

 私達はこうした活動の中にAGIRの取り組みを取り入れていきたいと考えています。日本と協力して自動車サプライヤーを育成し、グローバルなサプライチェーンのなかにブラジル企業を組み込んでいくという活動です。現在のTier2,3,4に焦点を当てながら別途、新しい製品やサプライヤーを開発していきたいと考えています。これはAGIRを通じて日本のメーカーから得た助言に基づき計画していることです。こうしたことを前に進めるに際し、日本のみなさんの協力をいただきたいと思います。

                                    (松永愛一郎・ブラジル日本商工会議所会頭兼政策対話委員長)
                                                   

 中小企業の育成については、JICA、ジェトロと合わせ、カマラにおいても関係する会員企業の協力を得るなどして出来る限りの協力をしていきたいと考えています。

 一方、産業競争力強化のためには労働、課税分野におけるブラジルコストの改善が重要でありますので、MDICがコーディネート役となってこの問題の解決に向けたワーキンググループを設置いただくなどして所管庁との協議ができるよう橋渡しをお願いしたい。

セッション4.貿易交渉に関する意見交換

                                                                       (フルラン次官)
                                                  

 ブラジルでは現在、メキシコを含め太平洋の南側の地域との二国間協定の取り組みを進めています。関税、非関税障壁、貿易促進等をテーマに交渉を行なっています。ブラジルは多くの二国間協定を持っていますが、これまでは主に関税に焦点を当ててきました。メルコスールのルールがあり、非関税障壁については個別に交渉を行なうことになっています。メキシコについては昨年5月にブラジル・メキシコ拡大交渉が行なわれました。自動車分野において再交渉を行い、中南米における投資をし易くいたしました。ペルーとはテーマとしては一番大きなパッケージによる二国間交渉となりました。これは政府調達も含めるもので、はじめてのサービス分野も含めた通商協定です。最近行なわれた通商協定は南太平洋諸国とのもので、政府調達や投資をし易くするためのものです。コロンビアとは自動車協定を結んでいます。メルコスールとコロンビアとの間では、投資協定、政府調達について締結しています。最近、ブラジルとアルゼンチンとの間でデジタル原産地認証についての覚書を交わしており、これをメルコスールに拡げていきたいと考えています。自動車分野については、アルゼンチンとは再交渉を行ない、ウルグアイとははじめて自動車協定を締結、パラグアイとは交渉を開始したところです。

10月第二週にブリュッセルにおいてメルコスールとEUとの自由貿易協定についての第2ラウンド交渉が行われることになっています。メルコスールとカナダとは相互協定という形で交渉を行うことになっています。メルコスールとインドとは2009年から優先交渉が行われており、先月ブラジリアにおいて交渉が行われた際、双方の興味のある分野についてリストの交換が行なわれております。レバノンからも話し合いの打診が来ており、メルコスールからタリフを提出し交渉を行なうことになっています。チュニジアとも再議論を行うことになっております。

現在、国連において温暖化問題についてパリ協定の話し合いが行われていますが、本協定を合意するために商業的、工業的に日本とブラジルを近づけることができると考えています。温暖化ガスの排出量削減に向けたエタノール燃料の利用は直接的な効果を生むことができます。エタノールはガソリンに比べて90%の温室効果ガスの削減につながるといわれています。本件に係わる両国間の協力について日本側にぜひ検討していただきたいと思っています。

                                                                   (片瀬審議官)
                                                    

最近の日本の貿易政策について説明いたします。

TPPについては現在開会中の臨時国会に本協定の承認案を提出しています。私達の目標は、年内に承認をとって年内に批准をすることです。

日EUのEPAについては、これまで累次の交渉を重ねてきましたが、本年中に大筋合意をすることを首脳レベルでコミットしておりまして、それに向かって積極的に交渉しているところです。

もう一つの地域的な貿易協定がRCEPといわれるもので、アセアン10カ国と日本、中国、韓国、豪州、ニュージーランド、インドをカバーする地域貿易協定です。質の高い協定を出来るだけ早く目指して交渉を行っているところです。

二国間交渉については、トルコとの間でEUとの交渉と並んで話し合いを行なっており、中南米では日コロンビアのFTA交渉を進めています。

投資協定については、日本はこれまで36カ国との間で締結・発効していますが、政府では2020年までにこれを100カ国に増やす目標を持っています。産業界の関心も踏まえながら相手国を選んで交渉していくわけですが、ブラジルとの交渉については産業界からの要請が強いと認識しています。投資協定が実効性を持つためにはISDS手続きが入ることが非常に重要なことであるため、本条項を入れることにつき前向きな方針を打ち出していただければ両国間の話し合いがさらに進む事案になると申しあげたいと思います。

                                                                      (フルラン次官)
                                                   

日本側の要請内容は理解しています。私達には日本と交渉をしたいという気持ちもありますが少し障壁を感じます。私達が各国と締結している協定は、ブラジルがデザインした新しい投資協定のモデルで、国と国という考え方を基本としています。オンブズマンという組織、チームがあり、投資家に問題や疑問があった場合はこの場でそれらを解消するというもので、あくまで国家と国家でその解決にあたろうという考え方です。これまでアメリカが描いていた、企業対国家というものとは違います。

                                                                (片瀬審議官)
                                                     

本件、非常に重要なテーマなので引き続き議論していくことは吝かではありませんが、ご理解いただきたいことは、企業にとってその国の投資環境がどう見えるかという時にISDSが含まれているかどうかが投資判断において非常に大きな重要性を持っていることも事実であるということだと思います。テメル新政権が新しい経済構造改革を進めていかれる中で、本件について政策の中で重要な決定をしていただければ、同改革に対する国際的な認識が大きく改まる或いは非常に高く評価されることは事実だと思います。投資協定についてはそれぞれの国で様々な政治的な議論が行なわれていることは承知していますが、ぜひこうしたことも認識いただいたうえで双方において真剣に議論していきたいと考えています。

クロージングセッション

                                                                  (片瀬審議官)
                                                   

 本日の議論を通じて、ブラジルがテメル新政権のもとで大変熱心に経済構造改革に取り組もうとされていることがよくわかりました。また、ブラジル側には、日本の産業界が如何に日伯の関係を重視し、ビジネス環境の改善を真剣に望んでいるのかを認識いただけたのではないかと思います。本日の議論は、テメル大統領の来日に向けた非常に有益な準備になったものと思います。重要なことは、大統領の訪日を超えてより具体的な協力を進めていくことだと思います。こうした観点から、半年以内にブラジルにおいて本委員会の中間会合を開催することを提案したいと思います。日本側議長は、本日出席の中川審議官が務めさせていただきます。次回の本委員会の開催時期につきましては、来年ブラジルで開催される日伯賢人会議、日伯経済合同委員会の開催時期と合わせて各委員会を連続して執り行えるよう調整していきたいと考えています。本日はみなさん、大変ありがとうございました。

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