【知的財産とイノベーション】

知的財産(知財)は、既に、現代社会における最も大きな富の源泉になっている。世界的に見て資産価値の大きいとされる企業は、従来のような物的資産の保有ではなく、知財によって評価を受けることになる。未来の経済は、より環境に優しく、それだけに、イノベーションに依存しているのだが、そこでは知財が決定的に重要になる。なぜなら、財産権を明確に定義しなければ、サイエンスフィクションを現実の世界で実現しようと投資を推進するのは困難になる。こうした理由から知財は、その賛否について、イデオロギー上の偏見からも白熱した議論が交わさている。

ブラジル国内では、90年代にはじまった知財に関する規定の法制化に向けた議論が、未だに続いている。種子の使用に対するロイヤルティーの議論は空転し続け、芸術の世界では意見が二分する中で著作権法(法律第12,853号)が承認された。こうした中、2013年10月には、この問題で2つの議論が、国政の舞台に舞い戻ってきた。つまり、国立工業所有権院(Inpi)の総裁人事と、特許法改正案の国会提出である。この改正案はニュートン・リマ下院議員が編纂したもので、国家の競争力としてのイノベーションに主眼を置く。

根底にある問題は、イノベーションには知財を必要とするのか、それとも無関係なのか、ということだ。つまり、イノベーションにとってより好ましい環境とは何かということだ。その環境とは、知財に対して強力かつ明確な環境が整備されており研究者が安心して投資を促進できると感じるものなのか、あるいは、知財に関する規定を弾力的に運用して模倣を容易にしつつ法律が適用されない基準について省あるいは庁に問い合わせできるということなのか、である。これは、国内産業における駆け引きだ。イノベーションを達成した者を保護する環境が好ましいのか、第三者のイノベーションに手を加え改良することに投資する者を保護するのか、どちらを保護する環境が好ましいのか。イノベーションに基づいた経済を生み出す可能性と条件を備えた国は限られており、それだけに、この2本の道は、どちらも選択できるし、適切ともいえる。だが私が思うに、一部の成功した国々に見られるような、開発と革新の推進に向けた適切な環境構築への投資に必要な条件を、ブラジルは備えており、かつ、そちらに向かって進むべきだ。

2001年に私は、中国国家知識産権局を訪問したが、そこで、無数のエンジニアが世界知的所有権機関の特許から利用可能な技術情報を検索しているのを目の当たりにした。中国人たちは、自国に有利なようにこのシステムを利用する方法を体得していた。2011年に再び中国を訪問した際、1人の学者がその後の状況について簡潔に説明してくれた。曰く、「他国と特許で争うのを断念し、自国で知財を確保することに決めた。特許システムに背を向け争うのではなく、我々自身の開発した成果を利用することになった。それが、外国人を排斥せず、第三者の知財を尊重する唯一の方法だ」と話してくれた。そして、中国がもはや劣化コピーの国ではなく、むしろ、イノベーションにおいても世界でトップに立つべく力を蓄えつつあるのを、私は見て取った。

ブラジルは、依然としてこの道に歩みだすのをためらっている。だが、知財を尊重し、大企業による研究開発(R&D)の国際拠点の建設を促し、イノベーションへの財界動員政策(MEI)によって実業家と知財に関して対話を促進するなど、環境整備の萌芽を、既に確認できる。このところ、Inpiは、ブランドと特許の審査手続きを見直すとともに、累積した審査中の案件を削減し、登録までに要する平均期間を短縮するなど、この分野の再活性化に向けて大鉈を振るった。その結果、国際的な信用を得て、医薬品においては、イデオロギー論争とブラジルへの非難という事態を回避し、調和のとれた保護を目指す重要な協議に我が国も参加できた。国際化が進み、またブラジル企業の革新的活動の顕著な高まりという状況の中で、イノベーションを通じた開発の行動計画強化に向けた変革の発表を、心から望むばかりである。もちろんそれは、知財を保護するシステムが国内産業の障害物だと位置付け、知財に疑問を呈するボリバル主義的対応のことを言っているのではない。(2013年10月29日付けエスタード紙)

アントニオ・マルシオ・ブアイナイン カンピーナス大学(Unicamp)経済学部教授。eメール:buainain@eco.unicamp.br。
 

 

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