総務委員会(上野秀雄委員長)並びに企画戦略委員会(林正樹委員長)共催の2014年上期の業種別部会長シンポジウムは、2014年2月20日午後1時から6時までチボリホテルに140人が参加して開催、タイトルは、「2013年の回顧と2014年の展望」、副題として「~どうしたブラジル経済-W杯と総選挙のインパクト~」。
初めに上野総務委員長が開催挨拶として、基調講演を行う高地圭輔 総務省情報通信国際戦略局国際経済課長、 講評を行う商工会議所の名誉顧問の在サンパウロ日本国総領館の福嶌教輝総領事、コメントを行う小林和昭在ブラジル日本国大使館参事官の参加にお礼を述べ、年2回開催の業種別部会長シンポジウムは、ビジネス環境改善の施策やブラジルのビジネス最前線の課題が明確になるため非常に重要なシンポジウムであると説明、続いて上野総務委員長が前半の司会を担当した。
初めに金融部会の酒井浩一郎部会長が2013年の回顧として、製造業は工業製品税の減税並びに社会経済開発銀行のクレジットではトラック、農業機械、自動車が牽引、レアル安に伴う輸入インフレ、財政プライマリー収支の縮小、インフレ防止のためにSelic金利の引き上げ、低調な貿易収支による経常収支赤字の拡大、歴史的低水準の失業率、主要マクロ経済指標の推移、今年の展望では景気停滞の継続、各銀行の主要指標の予想、GDP伸び率は1.5%から2.5%のレンジ予想、アルゼンチンに端を発した新興国の通貨不安、大統領選に伴うばらまきなどによる財政支出の増加、金利引き上げの継続、世界的なドル高基調、保険市場の動向や成長予測、副題の「~どうしたブラジル経済-W杯と総選挙のインパクト~」では旅行並びにホテル、外食が恩恵を受けるが、製造業の稼働日数の減少による生産減少、新大統領就任後の来年は財政立て直しのための政策導入などについて説明した。
コンサルタント部会の関根実部会長は、“BRICSの終焉 ブラジルらしい成長へ”と題して、ポジティブなBRICSからネガティブのFrigile5への移行、2013年の外資流失超、ルーラ政権時のBRICSブームの波乗り、外部要因として新興国からの外貨流出でレアル安の為替、新興国証券市場の急成長、成功したペトロブラス並びにBNDES銀行の外債起債、レアル為替安・高金利のビジネス環境、2014年の大統領選挙への影響、ブラジルらしい成長のための要因、国内産業保護政策の緩和、外資の無駄使いをなくしてインフラ整備投資並びに諸規制緩和、税制簡素化、労働自由化、ブラジルコストの低減の必要性などを強調した。
自動車部会の伊藤彰近部会長代理は四輪車の業界動向、四輪車販売台数の推移、月別販売台数の推移、工業製品税(IPI)の減税政策終了による影響並びに減税政策の延長、四輪車の生産の推移・輸入台数の推移、韓国車販売推移、ABS装置、エアバッグ義務化による価格上昇への影響、二輪車の支払い形態、与信強化による販売減 少、ファイナンスの動向、部品業界の動向などについて説明した。
機械金属部会の相原良彦部会長は、昨年の鉄鋼業界、電力・社会インフラ、プラント機器、造船、建設機械、産業用圧縮、農業機械、各種切削工具、機械部品・計測機器、潤滑油・金属加工業界の回顧では粗鋼生産の減少、主要鉄鋼製品の輸 入関税の引き上げの影響、ペトロブラス石油公社の投資延期の影響、農業開発省向けテンダー増加で好調な建設機械、レアル安による国際競争力増加の紙・パルプ業界の大型投資の見通し、 小規模農家への低金利融資政策によるトラクター販売の増加、今年の展望では低成長の継続、昨年並みの国内粗鋼、国内経済の停滞や金利の上昇による厳しい投資環境、ワールドカップ向けインフラ関連の投資増加、ペトロブラスの原油開発以外の投資縮小、国内鉄鋼メーカーの保護政策の継続などについて説明した。
電気電子部会の三浦修部会長は、昨年のマナウスフリーゾーンの家電生産ではデジタルカメラがスマートフォンの売り上げ増加で40%以上減少、韓国メーカーによるプラズマテレビの生産、白物家電の税制インセンティブの影響、レアル安の為替、ブラックフライデーが及ぼす影響、今年展望では低調な経済成長、インフレを上回る人件費高騰による収益の圧迫、通貨安による収益圧迫、価格転嫁できない家電製品、金利上昇による収益悪化、ワールドカップはビジネスにネガティブに作用、大統領選挙による混乱、ブラジル政府への要望として複雑すぎる税制の改革、インフラ改善と投資の促進、反政府行動の沈静化、税金を払わない輸入に対する厳格な取り締まり、治安の改善を声を大に して強調した。
コーヒーブレークを挟んで井上徹哉企画戦略副委員長が後半の司会を担当、貿易部会の伊吹洋二部会長は、昨年の回顧として半期ごとの輸出入の推移では輸出の減少並びに輸入の増加、主要商品別輸出入、ブラジルの主要国別輸出入額並びに内訳、ブラジルの地域別輸入額、対内直接投資ではトップは米国を抜いたオランダ、統計に表れない第3国のオランダ、ルクセンブルグ経由中国からの投資 70%以上増加した日本の直接投資、大幅に増加した農業並びに畜産、鉱業向け直接投資、減少した製造業並びにサービス業向け直接投資、プラットフォーム輸出による貿易収支黒字の計上などについて説明した。
化学品部会の友納睦樹部会長は、21業種を4分野に分けた2013年の回顧と2014年の展望について説明、高金利負担が経営を圧迫、好調な自動車向け原材料売上、低調な二輪業界向け原材料売上の減少、人件費の高騰による収益の悪化、レアル安の為替、アジアの安価製品輸入増加による競争激化、難しい優秀な人材確保、物価上昇に応じた価格転嫁、マーケティング強化によるシェアの回復、減価償却による利益減少、保護主義政策、ブラジルコスト、保護主義政策、売上・利益の増減並びにパーセンテージ、ブラジル経済の失速や消費減少、綿花価格低下による作付面積の低下、W杯並びによる総選挙によるインパクトとして、工場の稼働日減少、交通困難による物流業務への支障、インク販売の増加、ばらまき政策や貧困層への優遇政策の導入による個人消費の拡大、医療関連製品の入札の凍結による売上減少、などを挙げた。
繊維部会の上野秀雄部会長は、川上の綿花、川中の綿、合 繊、毛、ニットのテキスタイル、川下のアパレル、アクセサリーに分けて説明、国際・国内原綿の推移、中国の綿花の記録的な在庫、変動する国際綿花相場、バイア州の害虫の被害発生、棉の作付面積の減少、レアル安の影響、国際競争力の低下、国内綿糸の原価高騰による価格転嫁、安価な空紡糸への代替、原綿コストの上昇、予想を下回ったGDP伸び率、過去10年間で最低のクリスマス商戦、高級ブランドチェーン店の出店中止、低価格チェーン店の拡大、天然素材の高騰の影響による合繊の増加、中国からの輸入ファスナーの大幅増加などについて説明した。
建設不動産部会の三上悟部会長は、部会内の現状認識と取り巻く環境、不動産市況の動向、建設業界の現状と展望について、10%以上受注増加して好調であった建設業界、日系企業の増加による不動産業界の取扱量の増加、C/Dクラス向けカード発行が追い風となった建材販売部門、分譲マンションの間取りの傾向並びに販売動向、セメント使用料の推移、建築資材価格の動向、集合住宅販売軒数の推移、人件費の高騰 並びに困難な人材確保、ブラジルの建設投資伸長率の推移、各都市のマンション賃貸料の比較、建設物価指数、住宅建設価格の上昇率の推移、サンパウロ市周辺地域の土地価格高騰の継続、事務所・マンションなどの新築件数の停滞、部会として法改正などの改善の当局への要望の検討などについて説明した。
食品部会の山口修一部会長は、部会各社の動向として調味料製造、乳酸飲料、 コーヒー販売、製菓用油脂、清酒、醤油、即席めん、果実ピューレ、種子、外食に分けて説明、輸出動向、原料動向、砂糖相場、乳相場の推移、賃金上昇、ブラジルコスト、ブランド力の強化、販売戦略の見直し、2014年の展望としてインフレと賃金調整などによるコストアップで採算悪化の懸念、レアル安の為替による輸出の増加、副題の「~どうしたブラジル経済-W杯と総選挙のインパクト~」では、一部の企業では消費拡大が期待されるが、相対的にはプラス要因は限定低、物流体制の混乱や更なるレアル安での経費アップ懸念などについて説明した。
最後に運輸サービス部会の森田透部会長は、2013年の回顧でサントス港の新規コンテナターミナルのEMBRA PORT/BT TERMINALのオープン、暫定令595号による港湾近代化に対する港湾労働者、トラッカーによるストライキが頻発、空港の民営化、港湾における滞船日数の長期化、PIS/Cofinsの課税計算方式の変更、運転手に関する新労働法適用によるコストアップ、競争力を削ぐブラジルコスト、進展しないワールドカップやリオのオリンピック向けインフラ改善、中国経済減速の影響、世界的な粗鋼供給過剰、4Gのエリア拡大の遅れ、SPED関連システム導 入、低調なM&A、ITコスト削減、困難なIT技術者の確保、上昇する人件費などを説明、2014年の展望では、道路民営化コンセッション入札条件の見直し、港湾ターミナルへのアクセスのインフラ改善の必要性、全国的な抗議デモの再開の可能性、大統領選をターゲットにした公務員スト発生の懸念、ワールドカップ期間中の大幅な増便、エアーチケットの高騰、ビジネス関連旅行の減少,盛況が予想されているホテル業界、通信業界の再編、スタジアム内のWiFi強化、ブラジルと周波数帯域が異なる日本のモバイル、脆弱なブラジルの通信インフラ、 SPEDの E-SOCIAL対応の増加、堅調なアウトソーシングサービス需要などを説明した。
福嶌教輝総領事は講評で、3回目の業種別部会長シンポジウムの参加であり、ビジネスマンの生の声は非常にビジネスを展開する上で貴重であり、三上部会長の名調子は印象深く、また副題の「~どうしたブラジル経済-W杯と総選挙のインパクト~」で不安なコメントがあったが、保険業界並びに建設業界は好調で化学品部会の1/3も好調であり、中長期的には良いブラジルになると期待して、進出企業にとって良くなるように期待、また日本からの政治家や高官の来伯による更なる両国の発展に期待していると結んだ。
小林和昭在ブラジル日本国大使館参事官は、ブラジリア勤務でビジネスマンの生の声を聞く機会は少なかったが、このシンポジウムでは第一線で活躍するビジネスマンの生の声や政府への要望も聞くことができ、解決は難しいが、しっかり対応していきたいと述べ、24日の官民合同会議への参加を呼びかけた。
閉会の辞では、上野総務委員長は、福嶌教 輝総領事から期待と励ましの声を頂き、小林和昭在ブラジル日本国大使館参事官からもビジネス環境改善するための力強い支援を約束して頂いた。また主催者として部会長、事務局、会員の皆さんの協力で業種別部会長シンポジウムが成功裏に終わったことに感謝の意を表し、また業種別部会長シンポジウムは、テープおこしをした後サイトに掲載するので、今後のビジネスの参考にしてほしいと付け加えた。
開催挨拶を行う藤井晋介会頭
左から後半司会の井上徹哉企画戦略副委員長/前半司会の上野秀雄総務委員長
左から基調講演を行った高地圭輔 総務省情報通信国際戦略局国際経済課長/藤井晋介会頭/在サンパウロ日本国総領館の福嶌教輝総領事
基調講演中の高地圭輔 総務省情報通信国際戦略局国際経済課長
講評中の福嶌教輝総領事
小林和昭在ブラジル日本国大使館参事官