日伯法律委員会(村上廣高委員長)並びにMattos Filho法律事務所/アンダーソン・毛利・友常法律事務所共催による「ブラジル腐敗防止法施行後半年を振り返って~施行規則等をめぐる動向のアップデート~」セミナーは、2014年8月27日午後4時から6時までにMattos Filho法律事務所に70人が参加して開催した。
初めに村上廣高委員長は、開催挨拶でブラジル腐敗防止法施行後6カ月を過ぎたが、法令に違反すると莫大な罰金がかけられて会社の存続に影響するので、このセミナーは非常に貴重なセミナーとなるので参考にしてほしいと説明、また日伯法律委員会活動方針として、複雑かつ頻繁な変更のあるブラジルの法制の把握、分析を通じ会員企業の企業経営に対する戦略的な適応及び企業リスク回避をするために月例会を開催しているので参加を呼びかけた。
初めにアンダーソン・毛利・友常法律事務所より出向の川上 晋平弁護士はブラジル腐敗防止法の概要として、大企業を中心にコンプライアンスの意識は向上しているが、複雑な規制システム、官僚主義的な行政システムおよび脆弱な法執行体制により、汚職・腐敗関連のリスクは高く、特に規制業種、労務・環境規制関係、開発途上の地方については汚職・腐敗関連のリスクが高くなる。
ブラジル腐敗防止法の制定経緯では法人を処罰するものとして、ブラジル腐敗防止法が新たに制定され、2013年8月2日公布、2014年1月29日施行、処罰対象行為として公務員またはその関係者に対して直接または間接に不適切な利益を約束または供与、資金の提供、費用負担またはその他の資金援助や入札手続・政府との契約に関する不正行為となっている。
施行規則の状況等をめぐる最近の動向として、ブラジル腐敗防止法に基づき、コンプライアンスプログラムの評価基準等を定める連邦行政府規則は制定されていないが、サンパウロ市の規則においてはコンプライアンスプログラムの評価基準が暫定的に定められている。
コンプライアンスプログラムの評価基準に関する見解によると、基本的に国際的なプラクティスに沿った内容であり、現在の対応状況と対応すべき事項として、現在は大企業の取引先・ビジネスパートナーを中心に中規模企業にまで対応が広まっている状況との認識、州や市のレベルでは独自に規則を制定しているところもあり、これらの規則(特にサンパウロ市の規則)に対応する必要であり、早急にコンプライアンスプログラムの制定・見直しを行うことを推奨する。
ブラジル腐敗防止法に関する実務上のポイントとして、ブラジル腐敗防止法の制定後、非常にアクティブに調査を行っているが、施行後まだ間もないために執行状況については不透明な部分が多く、汚職・腐敗事件についてはメディアの関心も高まっており、メディアを通じた事件の発覚やレピュテーション低下のリスクも高まっている。
ブラジル腐敗防止法が問題となりやすいこととして、公共入札並びに政府契約、許認可の取得など政府との接点の多い事業を行っている場合はリスクが高く、業種にかかわらず、労務・税務・通関に関する業務は伝統的に汚職・腐敗行為が発生しやすく、専門のエージェント・コンサルタントが起用されることが多いが、政府との接点が多い業務をこれらの第三者に委託している場合は非常に危険である。
賄賂を求められた場合として、会社は絶対に公務員に賄賂を支払ってはならず、会社の担当者は決して1人で公務員に会いに行くべきではなく、従業員に対しては、行為規範・倫理規定に則り対応するよう周知徹底する必要であり、不正行為が疑われる場合には、会社は事実調査を実施して疑念がある場合には、詳細かつ慎重に不正行為の証拠を保全するため追跡調査を行い、通報が内部報告による場合は内部者が報復にさらされることのないよう保護する必要があり、不正の事実が確認された場合に会社は政府に対して、リーニエンシー契約を申し出ることができるが、経験ある法律事務所の助言を受けることが推奨すると説明した。
Mattos Filho法律事務所のレナート・タスタルジ・ポルテーラ共営者は、腐敗防止法におけるコンプライアンスとして、監査及び不正行為の開示に対するインセンティブを確保するための内部制度及び手続の存在並びに当該法人における倫理規定及び行為規範の実効的な運用、当該制度及び手続の評価基準は、連邦行政府規則により制定される予定となっていると説明した。
注目すべきサンパウロ市の規制として、非集権的な規制当局 、連邦規則が制定されるまでの一時的なコンプライアンスプログラムとして、廉潔性と監視制度・手続; 内部統制; 従業員や他のスタッフに適用される行為・倫理規範; 匿名性が確保される報告手段; 報告に基づく調査; 公的部門に関連する透明性を確保する手段; 及び 定期的なトレーニング、市監査事務局の長官のみがリーニエンシー契約を締結することが可能となっている。
近々公表予定の連邦規則のコンプライアンスプログラムは、経営幹部の関与並びに行為規範と倫理規定、廉潔性プログラムに関する定期的なトレーニング、定期的なリスク評価、相談・報告手段の存在、内部統制システムの制定と維持、違反があった場合の懲戒処分の実施、政党及びその候補者に対する献金に関する透明性の確保できることなどを説明した。
左から村上廣高委員長/Mattos Filho法律事務所のヴィウマ・クトニ共営者
左からMattos Filho法律事務所のレナート・タスタルジ・ポルテーラ共営者/アンダーソン・毛利・友常法律事務所より出向の川上 晋平弁護士