第2回日伯貿易投資促進産業協力合同委員会開かれる

2014年9月11日、第2回日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会が経済産業省国際会議室(東京)で開催され、石黒憲彦経済産業審議官、エロイーザ・メネゼス開発商工省生産開発担当次官の両議長の他、両国政府、経済界から約60名が参加、両国経済関係の一層の拡大に向け活発な議論が行われた。ブラジル日本商工会議所からは、藤井晋介会頭と藤田誠メディカル分科会長がプレゼンターとして出席し、ブラジルのビジネス環境整備に向けた体制整備、医療機器等の販売に係る審査の迅速化をテーマにそれぞれ発表を行った。この他、ブラジル日本商工会議所からは、上野秀雄副会頭、矢部健太郎機能強化委員会副委員長、土屋功メディカル分科会委員、平田藤義事務局長、天谷浩之機能強化委員会アドバイザーが参加した。

(開会挨拶)

石黒審議官:

先日の安倍総理大臣のブラジル訪問に私も同行させていただいた。ルセフ大統領と会談し、両国経済関係の深化と拡大について幅広い意見交換を行い、日伯戦略的グローバルパートナーシップ構築に関する共同声明を発表した。本声明において、貿易と投資の二国間の発展について、日伯戦略的経済パートナーシップ賢人会議、日伯経済合同委員会、および日伯貿易投資促進・産業協力合同委員会が果たす役割の重要性が改めて確認された。これらの会合は、様々な課題について継続的な議論を行い、多くの成果を得てきている。本日の会合においても、両国の今後の発展のための関係構築ができるよう率直な議論を行ってまいりたい。

メネゼス次官:

まず初めに、今回、残念ながら来日できなかったボルジェス大臣から、日本側の皆様にくれぐれもよろしくとの言葉を預かってきた。この会合は、ブラジルにとって非常に重要なものであり、安倍首相の訪伯に続いて開催される今回の会合は、さらに重要な会議であると理解している。戦略的グローバルパートナーシップの関係において非常にプライオリティの高い会議である。両国はすでに多くの関係を保ってきており、商業的なもののみならず、投資や文化的な関係が構築されてきている。今後、さらに強固な関係を作り上げていくために我々はアクターとしてとても重要な役割を担っており、責任は増してきていると理解している。

両国の商業関係は非常に重要で、日本はブラジルの製品を世界で5番目に多く買っており、ブラジルに対して世界9番目の規模での輸出をしている。日本からの主要な輸出品は工業製品である一方、ブラジルからは一次産品が主体であるところに特徴がある。今後、両国の関係をさらに深めていくためには、商業面のみならず互いが投資しあえる関係を作るための協力が重要と考えており、こうした活動がブラジルの生産性と競争力の向上につながればと願っている。

この会合を通じて、我々の関係をさらにレベルの高いものヘとつなげていきたい。率直でオープンな議論によりお互いの課題の解決策を見つけていければと思っている。

両議長の開会挨拶の後、大前孝雄・経団連日本ブラジル経済委員会企画部会長、ジョセ・デ・フレイタス・マスカレーニャス・CNI副会長より、9月9日、10日両日に開催された日伯経済合同委員会の結果報告が行われ、続いて、「日本のブラジルとの協力事項の報告」として、8月の両国首脳会談で調印された下記協力案件についての進捗報告が行われた。

1.石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とVale社とのMOU

    五十嵐 吉昭JOGMEC金属企画部国際業務課長

2.国際協力銀行(JBIC)の最近のブラジル向け取り組み

    細島 孝宏 JBIC鉱物資源部次長

    セルヒオ・フォウジス ブラジル経済社会開発銀行(BNDES)国際部次長

3.日本貿易保険(NEXI)のブラジルにおける取り組み

    十時 憲司 NEXI営業第二部部長

4.ブラジルにおける日本式大腸がん検診普及促進及び内視鏡医育成に向けた協力

    高橋 伸幸 富士フィルム ヘルスケア事業推進室長

5.海洋資源開発促進のための造船協力

    大坪 新一郎 国土交通省海事局船舶産業課長

6.国際協力機構(JICA)の産業分野への協力の現状

    竹内 登志崇 JICA中南米部参事役

    エロイーザ・メネゼス 生産開発担当次官

7.投資機会及び産業協力(自動車分野)

    竹下 幸治郎 日本貿易振興機構(JETRO)企画部事業推進主幹

    エロイーザ・メネゼス 生産開発担当次官  

  続いて、「貿易と市場アクセス」のセッションが行われ、この中で、藤井晋介ブラジル日本商工会議所会頭から、“ビジネス環境整備のための体制整備”として、機能強化委員会の活動計画の説明と日本企業による多大な投資実現に向けた日伯官民政策対話スキーム構築に係る提案、藤田誠ブラジル日本商工会議所メディカル分科会長からは、“医療機器等の販売に係る審査の迅速化”として、同分科会のこれまでの活動成果と新たな改善要望項目であるINMETROについてその概要説明が行われた。両者の発言概要とこれに対するブラジル側のコメントは下記のとおり。

(藤井会頭の発言概要)

議題:ブラジルへの更なる投資実現に向けた政策対話スキームの構築

(1)政策対話の目的

中小企業の進出も支援しつつ日本企業による更なる投資拡大や人材交流を図り、最先端の技術やノウハウの移転促進を通じてブラジルが必要とする高いスキルを持った人材を育成すると共に、裾野産業も含めた国際競争力を高め、日伯企業間の新たなビジネス機会を増大させること。

(2)機能強化委員会の設立

上記目的の実現に向けブラジル日本商工会議所では、現状在ブラジル日系企業が積極的な投資活動を控えたり、中小企業がブラジル進出を躊躇する原因となっている投資及び事業環境上の諸問題を取りまとめ、両国経済が共に繁栄し得るための具体的な改善提案書を策定することを目的に本年6月、機能強化委員会を設立。

(3)ワーキンググループの発足 

在ブラジル日系企業の多くが直面している問題を5つの分野(「課税」、「通関」、「労働」、「産業競争力強化/中小企業育成」、「インフラ」)に分け、それぞれに於ける重要問題の取りまとめと、ブラジル政府、経済界に向けた改善提案書「更なる投資実現に向けた行動計画Action plan for Greater Investment Realization・AGIR」の策定を目的に本年8月、機能強化委員会の下に5つのワーキンググループを立ち上げ。 今後約3カ月を掛け、当該5分野におけるAGIRを策定する予定。

(4)実現に向けた推進体制

日本側:経済産業省、日本大使館、日本総領事館、経団連、日本商工会議所と連携したオールジャパン体制により、ブラジル政府、経済界に対する継続的な政策提言活動に取り組む。

ブラジル側:投資や事業環境上の諸問題の改善と両国経済関係の発展に向け、開発商工省、財務省、労働雇用省、運輸省、科学技術省等の連邦関係省庁および州 政府、並びに、CNI、FIESPをはじめとする経済団体の関係部署との分野別ワーキンググループを年内中に組織いただき、2015年1月以降、日伯官民 による二カ月に一度程度の政策対話機会を設けていただきたい。

(ブラジル側のコメント)

エロイーザ・メネゼス次官

ビジネス環境改善の重要性と、この問題に対し明確性、そして率直性をもって取り組まなければならないことを理解している。関係するすべての省庁が本件に取り組むということをここで約束することはできないが、省庁間における努力が行われることは確かである。ビジネス環境上の問題については5つのボトルネックがあるわけだが、これらは日本企業だけの問題ではなく、ブラジル企業にとっての問題でもあり、マスカレーニャス氏が昨日、経団連の会合で指摘している。

ブラジル政府は、これらの問題の改善に向けこれまで努力をしてきているが、この5つのバリアを突き崩し、ブラジルに拠点を置く企業の競争力を高めるためにこの努力を続けていきたいと考えている。とりわけインフラ分野においては、如何に投資を円滑に行ってもらうか、また、労働問題については、これまで労働雇用省の閉鎖的な分野として同省が単体で対応していたが、これを省庁間の問題として捉えることとし、また、CNIと労働雇用省が協定を結び、経済界と共にこの問題の解決にあたれる環境がつくられた。

日本企業が直面している問題はブラジル企業にとっての問題でもあるわけだが、本日ここに出席していない他省庁に係るテーマもあり、また経団連とCNIが今回結んだEPA研究に係る協定ともリンクしていかなければいけないと考えている。

移転価格税制については、ブラジルの財政当局との話し合いを行っているが、まだ発表できる具体的な進展はない。

アビジャオディCNI産業開発担当理事

本件について一つコメントしたい。CNIでは、現在大統領候補となっている方々に対し、今後10年間でブラジルの工業の競争力を如何に上げていくかという内容の文書を提出している。この中には、税制問題、労働問題、マクロ経済問題、治安、教育問題、インフラ整備、官僚主義、技術革新、投融資など、経団連、ブラジル日本商工会議所が挙げている問題も含まれている。

本件について、経団連、ブラジル日本商工会議所と話し合いができればと思うし、この問題の解決に向け一緒に取り組んでいければと思っている。

石黒審議官

ブラジル日本商工会議所の中に本件に取り組むワーキンググループが立ち上がっていることから、今後、各テーマについて関係省庁と議論ができるような対話スキームを作っていただくようメネゼス次官にお願いする。

(藤田分科会長の発言概要)

 

議題:医療機器等の販売に係る審査の迅速化

昨年10月のこの委員会で、ANVISAによる医療機器の輸入販売承認審査において、ブラジル国外の工場のGMP査察に2年以上、薬事登録審査に1年以上かかっており、日本で流通している最新の医療機器でも、ANVISAによるGMPの承認が未取得の工場で生産されている医療機器は、ブラジル国民のために使用していただくまでに最低3年以上はかかっている、という課題をとりあげ、以下2点を要望させていただいた。

①ANVISAと我々メディカル分科会との定期会合、もしくは協議機関の設置

②日本という国、日本の医療機器産業の品質、日本の薬事制度を知っていただきい、そのためにANVISA長官を日本に招聘したい

  あれから1年足らずですが、このように、色々な進展がありました。2014年2月には、ANVISAと厚労省及びPMDAとの面談が実現。ANVISA長官とPMDA理事長が面談されました。2014年5月には、シーファー開発商工省次官と松島経済産業省副大臣の会談の中でも、この件がとりあげられました。そして、2014年8月1日、ブラジリアにて、ブラジル保健省と日本厚生労働省との間で「医療・保健分野における協力に関する覚書」に署名がなされ、翌日の8月2日には、サンパウロにて、日伯医療分野規制に関するセミナーが開催され、日本からは安倍首相も出席されました。8月3日と4日には、ANVISAと厚労省及びPMDAとの間で、医療機器等の審査についての協議がなされました。また、8月20日にはブラジリアの日本大使公邸にて、ANVISA長官と私どもメディカル分科会の会合が実現し、メディカル分科会からANVISAに相談ができる体制を作っていただきました。そして先週は、ANVISA長官が日本を訪れ、厚労省や医療機器産業連合会などとの会合及びいくつかの日本企業を訪問されました。

このように、昨年のこの委員会での要望のほとんどが実現したことについて、ブラジル側への前向きな姿勢及び対応に深く感謝を申し上げます。今後の改善の実現に向けての大きな進展であったと思います。

今後についての要望ですが、2つございまして、ひとつは、

1.GMP監査と薬事登録の審査制度の改善に向けた協議の継続をお願い致します。

   ANVISAのウェブサイトにも掲載されておりますGMP査察の申請のペンディングの件数、ブラジル日本商工会議所所属企業の新規登録に要した日数、残念ながら、どちらも、まだ状況はよくなっておりません。これらGMP監査や薬事登録は、人命に関わる重要な手続きであり、ANVISAとしても国民の健康を守る責任があり十分な審査が必要であることは理解しております。是非協議を継続していただき、安全と効率化を両立できるようになることを望んでいます。

もう一つは、新たな問題提起となる、

2. INMETROについてです。

医療機器は、商品によってINMETROの認証を取得しなければ薬事登録申請ができないものがあります。これについて、いくつか事例をあげます。

(例1)ILAC(国際試験所認定協力機構、International Laboratory Accreditation Cooperation)認定の試験機関のテストレポートが必須ですが、日本ではILAC認定の試験機関が少なく、通常は商品開発段階でILACのテスト でなく、CBスキームを使っております。そのためブラジルでの登録のためだけにILACのテストを追加行い、そのために時間と高いコストがかかっておりま す。
(備考)CBスキーム : Certification Body スキーム。CBスキームは、IECEE(IEC電気機器安全規格適合性試験制度)に基づき運営。この制度への加盟国にある認証機関 (NCB(National Certification Body)国内認証機関)またはCB試験所(CBTL(CB Testing Laboratory)CB試験所)に製品の試験を依頼し、CB試験レポートとCB証明書を発行してもらう。  

(例2)INMETROの認証に適用される規格がグローバルに適用されている規格でない場合があり、そのためにブラジル国外で問題なく流通している製品であるにも拘わらず、ブラジルには導入できない場合があります。結果として、この製品を必要としているブラジルの患者さんに使っていただけないという状況になっております。

(例3)これは注射針の個包装です。上がINMETROのロゴマークを表示する前、下がINMETROのロゴを加えた後です。わずか3cmx7cmのスペースに、上のように、元々ANVISA要求の輸入者の名前、住所や薬事責任者の名前を表示しております。これだけでもグローバルスタンダードからはずれておりますが、これに加え、下のように、このINMETROのロゴマークを追加することで、苦心してレイアウトを修正し、何が記載されているか更に見えないような状況となっています。これでは表示の意味がないばかりか、ブラジル固有の表示のためコストが高くなっています。コストが上がることはブラジルにとってよいことではないと考えます。

これらの問題について、一方的に改善して欲しいと主張だけをするつもりはありません。まずは、相談をできる体制を作っていただくことから始めていただければと思います。この要望の根底にあるのは、「ブラジルに貢献したい、ブラジル国民の健康に貢献したい」という日本の医療関連企業の気持ちであることをご理解ください。つまり、日本企業の高度で高品質な医療機器を少しでも早くブラジル国民のために使えるようにしたいということです。是非、ブラジル国民の健康に貢献するため、ポジティブにこの提案をとらえていただきたいと思います。

(ブラジル側のコメント)

エロイーザ・メネゼス次官

ANVISA,INMETROは、ブラジルのみならず海外でも非常に知名度のある組織で、担当官は国際的基準に向けて大変大きなチャレンジに取り組んでおり、その中でブラジル国民の安全性を守る業務にあたっている。そうした中では自然の流れとして登録にどうしても時間が掛かってしまう。一方で、製品を早く市場に出さなくてはいけないということも理解できる。登録審査を迅速に行わなければならない医薬品リストも作られており、日本製品に対するプライオリティを含め、ANVISA,INMETROとの持続的な対話が必要であり、日本企業にどのような要望があるのかといった情報も必要になるであろう。本件に対する日本企業の関心を当局に伝えたいと思う。

 この他、「貿易と市場アクセス」のセッションでは、各機関からの下記プレゼンテーションをもとに、両国の貿易、投資拡大に向けた活発な議論が交われた後、閉会となった。

1.輸出加工区における投資機会

    エロイーザ・メネゼス 生産開発担当次官

2.ビジネス環境整備のための体制整備

    藤井晋介 ブラジル日本商工会議所会頭

3.ビジネス環境整備についての要望

    横尾賢一郎 経団連国際協力本部本部長

4.医療機器等の販売に係る審査の迅速化

    藤田誠 ブラジル日本商工会議所メディカル分科会会長

5.知財分野における協力状況の報告

    五十棲毅 特許庁国際協力課地域協力室長

6.アルミ産業政策

    中富道隆 日本アマゾンアルミニウム㈱社長

7.工業製品税

    小野寺修 経済産業省通商政策局通商機構部国際経済紛争対策室参事官

8.サンタカタリーナ産豚肉の輸出

    エロイーザ・メネゼス 生産開発担当次官

9.牛肉の輸出再開

    エロイーザ・メネゼス 生産開発担当次官

10.太陽光発電に係る投資機会

    エロイーザ・メネゼス 生産開発担当次官

11.船舶産業のサプライチェーン

    エロイーザ・メネゼス 生産開発担当次官

12.スマートコミュニティ小委員会の結果報告

    貴田仁郎 経済産業省資源エネルギー庁省エネルギー・新エネルギー部政策課国際室長

(閉会)

・アンドレ・コヘーア・ド・ラーゴ在京伯大使

・大前孝雄 経団連日本ブラジル経済委員会企画部会長

・カルロス・エドゥアルド・アビジャオディ ブラジル工業連盟産業開発担当理事

・高瀬寧 外務省中南米局長

・エロイーザ・メネゼス 開発商工省生産開発担当次官

・石黒憲彦 経済産業審議官

 

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