第1回日伯農業・食料対話は、2014年12月8日午前9時30分から午後8時30分まで100人が参加してチボリホテルで開催、日本側から針原農林水産審議官、ブラジル側から農林水産省のNeri Geller大臣が参加した。
第1回日伯農業・食料対話の実現は今年8月に来伯した安倍総理とジウマ大統領とのインフラ整備の合意によるものであり、また食糧安全供給などを含む会議であり、今後は毎年開催される両国にとっては重要な会議と位置付けされている。
第1セッションの「ブラジルの農業・食糧セクターの開発」では、Neri Geller大臣が「ブラジル農業の見通し」と題して、ブラジルの農業開発は南部地域から始まったが、耕作可能地8億5,100万ヘクタールのうち64.4%に相当する5億4,800万ヘクタールは法的に保護された地域であり、現在耕作されている面積は28%に相当する2億4,000万ヘクタール、そのポテンシャルは計り知れないと説明した。
昨年の穀物生産は1億9,550万トン、果物は4,300万トン、食肉は2,400万トンであり、耕地面積は40年間で僅かに40%増加したが、穀物生産は450%増加して生産性が非常にアップ、農産物の輸出先は中国が23%、ヨーロッパ連合は22%、米国は7%、日本並びに香港、ロシア、韓国はそれぞれ3%、大豆が輸出額の31%を占めており、食肉は17%、砂糖・エタノールは14%、木材は10%、コーヒーは5%タバコは3%、日本向け農産物の輸出の内訳は鶏肉は45%、コーヒー21%、大豆は15%、ジュースは6%となっているが、今後は豚肉、牛肉、ココアなど期待でき、日本の食糧の安定供給に貢献できると結んだ。
針原農林水産審議官は8月の安倍総理が来伯、来年は日ブラジル外交関係樹立120周年を迎え農業分野でも両国の新しい関係が始まり、両国が協力して世界全体の食糧の安全保障に貢献してトウモロコシや大豆を世界中に供給、日本は海外からの食糧輸入は60%に達して依存しており、海外からの穀物輸入ができなければ日本の畜産業は成り立たないと説明した。
日本の食糧部門の規模は非常に大きく経済成長を押し上げる一因となっており、またユネスコに無形文化財として登録された日本食でブラジルとの間で新しい文化交流が生まれると期待しており、またブラジルの2億人の消費マーケットは日本食や食材の輸出にとって非常に大きなマーケットであると説明した。
Campoコンサルタント社のマルコス・ラモス氏は、「農業と持続可能な開発」と題して、訪伯した田中角栄首相のエルネスト・ガイゼルブラジル大統領への提案が事業推進のはじまりとなった不毛の土地とされていた熱帯サバンナ地域セラード開発の技術協力(PRODECER)は先行して1978年から開始され、強酸性で作物の生育を妨げる高濃度のアルミニウムを含む土壌を改良し、さらに大豆の熱帯性品種の育種や、多様な作物の栽培技術の改良に貢献、7州にまたがるセラード地域には21の開発拠点が設けられ、協力事業は2001年まで続いた。
40年前まで農業に適さないとされていた広大な熱帯サバンナ地域は一大穀倉地帯に変貌し、1975年の大豆の生産量43万トンから、2010年には4,000万トン以上と飛躍的に増加、セラードで生産される農作物も大豆にとどまらず、トウモロコシ、野菜、果物、畜産物、綿花、コーヒーなどに広がっている。また、営農形態も多様化し、熱帯地域での持続的農業に関する知見が蓄積され、セラード開発の成果は「農学史上20世紀最大の偉業」、あるいは「奇跡」と評価されていると説明した。
ロベルト・ロドリゲス元農務大臣は、日本人移住者はブラジルでの蔬菜・果物・養鶏拡大の多大な貢献を行い、また農業組合を導入、セラード開発の経験を基にモザンビーク北部に位置するナカラ回廊で進めている日本並びにブラジル、モザンビークの三角協力による熱帯サバンナ農業開発(プロサバンナ)は世界の食料の安全供給に貢献しており、2020年までに穀物などの生産は20%増加が予定、ブラジルの手付かずの耕作栽培面積が大きいために40%増産が可能であるが、ヨーロッパ連合は僅かに4%、北米は15%、オセアニアは17%しか増産できないと説明、農産物の輸出を増やすためにはインフラ整備が必要であり、また過去13年間にはFTA/EPAの締結は皆無であり、道路並びに港湾、鉄道などのロジスティックプランはすでにできているが、早急な投資が必要であり、日伯は協力して世界の食料の安全供給に貢献できると結んだ。
味の素ブラジルの西井孝明社長はブラジルでは各種アミノ酸を製造販売しており、設立は1956年で初めは味の素を輸入販売、ブラジル国内にはサンパウロ州に4工場を構えており、2013年の売上は2億レアルで国内販売は全体の40%、また日本では古くから料理に昆布だしが使われてきたが、昆布に含まれる成分においしさの元があると、経験的に知られてこれに注目した東京帝国大学の池田菊苗教授は昆布だしの味の正体を明らかにする研究を開始、そして1908年に昆布からグルタミン酸を取り出すことに成功。グルタミン酸が昆布だしの主成分であることを発見して、その味を「うま味」と命名、「うま味」を使えば減塩効果につながり、また「うま味」は日本食の基本であり、減塩できるのでブラジルに貢献できると説明した。
また西井孝明社長は、食品部門のビジネス障害となっている輸入機械の手続きの簡素化や食品加工業向けの優遇税の導入などこれらのテーマを今回のセミナーで是非検討してほしいと強調した。
前川製作所の片岡氏は、「日本のテクノロジーによる食品ビジネスへのソル―ション」について、日本の前川製作所は1924年に設立、33カ国に3,300人に従業員を擁しており、ブラジルではサンパウロ州アルジャ市に工場があり、鶏肉加工機械TORIDASや HANDAS-R 、TAKIDASを年間400台生産、同社は食品加工業団地の特別エコノミーゾーンの設立や両国の共同スポンサーシップを含む工業団地の設置の企画を提案している。
SAKATA SEED SUDAMERICA社のネルソン・タジリ氏は、「ブラジルにおける農業・食品工業の開発」と題して、コアビジネスとして蔬菜や花卉の種の研究、生産、製品化、種の遺伝子改良を行っており、1913年に横浜市で会社設立、ブラジルは1994年にサンパウロ州ブラガンサ・パウリスタ市に設立、世界では38グループ企業で2,000人の従業員を擁しており、ブラジル支社の従業員は280人、主な種子は蔬菜類、特にブロッコリー、トマト、レタスなどについて説明した。
日立ブラジルの金田行孝副社長並びに三井物産の佐伯エリカ氏は、「リモートセンサーテクノロジ―使用による効率的な農業」と題して、日立並びに三井物産はグル―バルパートナーシップを締結して農業ビジネス分野で高度なテクノロジーを用いた効率的な農業生産開発をブラジル国内で手掛けて試験栽培を行っており、規模の大きいブラジル農業にとっては非常に効果があり、現在は耕作地全体の2%から3%であるが、最終的には80%まで引き上げる可能性がある。
日本では衛星を使用した作物の成長、土壌の乾燥度や湿度をチェック、ブラジルでは試験的に大豆栽培で成長具合をチェックして肥料の散布、土壌に適した種子の選択、コスト削減などのノウハウの蓄積を行っていると説明した。
ブラジル動物蛋白質協会(ABPA)のリカルド・サンチン副会長は、「ブラジル製豚肉並びに鶏肉」について、ブラジル動物蛋白質協会には132社が加盟、鶏肉は年間1231万トンを生産、そのうち389万トンは155カ国に輸出ブラジルは砂糖並びにコーヒー、オレンジユース、大豆、エタノール、牛肉の輸出は世界1位、鳥肉並びにターキー、トウモロコシは2位、豚肉は4位、鳥インフルエンザはよくコントロールされており、南部地域を中心に生産、豚肉の生産はサンタ・カタリーナ州が23.1%でトップ、南大河州は18%、パラナ州は15.3%、ミナス州は13.7%、昨年の豚肉輸出は14億ドルで70カ国に輸出してマーケットシェアは8.0%で世界4位、豚肉の生産は中国が54.9%でトップ、ヨーロッパ連合は22.3%、米国は10.5%、ブラジルは3.3%、世界の豚肉輸入国は日本が122万トン、ロシアは87万トン、メキシコは78万トン、中国は77万トン、米国は40万トン、ブラジルの谷区生産は過去10年間で30.8%増加の343万トン、ブラジルの豚肉消費は過去10年間で38%増加の291万トン、今年10カ月間の日本向け豚肉輸出は3000トンで今後大幅に増加すると予想、今年のブラジルの鶏卵生産は前年比7.2%増加の372億ユニット、今年10カ月間のブラジルの鳥肉輸出はサウジアラビアが16.3%でトップ、ヨーロッパ連合並びに日本はそれぞれ10.4%で2位、香港は8.0%、アラブ首長連邦国は6.4%、中国は5.7%と食肉のポテンシャルについて説明した。
NH Foodsの西裏 昌弘社長は、中国の食品会社「上海福喜食品」が使用期限が切れた鶏肉や床に落としたパテを拾って製造し販売していたとされる報道を受け、同社と取引をしていた日本マクドナルド、ファミリーマートの2社は、同社の製造した製品の販売を中止した影響などを受けて、2014年の日本の鶏肉の輸入はタイからの輸入が急増しており、ブラジルからの日本向けブロイラー輸出の簡素化、インフルエンザ発生に関するガイドライン、和牛入について和牛のガイドラインの作成を要請した。
ヤンマー・ブラジルの北原健二社長は同社のミッションの説明、1912年創設で売上は65億ドル、従業員は1万6,000人、7分野で幅広く事業を展開、ブラジルでは16馬力から70馬力のトラクターを生産していることなどを説明した。
第3セッションの物流の改善では、初めに梅田邦夫大使は「穀物輸送に関する日伯のジョイント・カンファレンス」について、日本はブラジルから大豆並びに鶏肉、トウモロコシ、コーヒー豆、たばこ、エタノール、オレンジジュース、綿花など穀物や食肉など大きく依存しており、日伯はセラード地域開発で40年以上に亘って協力関係にあり、日本はファイナンスや農業技術供与で大いに貢献、日伯は穀倉地帯のマット・グロッソ州やMAPITOBA地域で生産される穀物を北部地域からの輸送回廊の開発が非常に重要になってきており、安倍総理来伯時の8月1日の日伯サミットカンファレンスでは穀物輸出で協力していくことを決定したことなどを説明した。
三井物産の藤井晋介社長は、ブラジルはコーヒー、オレンジジュース、砂糖の輸出では世界トップで耕地可能面積は4倍であるが、沿岸部から離れた内陸部にあり、南緯16度を挟んで南北にそれぞれ50%ずつあるものの、北部の輸出量は13%、距離が長くトラック輸送に頼ってコスト高の南部は87%であるために、輸送コストの安い北部からの輸出拡大のために鉄道・水上輸送のインフラ整備を早急に進める必要があると説明した。
三井物産は資源大手ヴァーレ社の一般貨物輸送事業を行うVLI社に出資して主に鉄道輸送に投資、今後5年間に90億ドルを投資して鉄道輸送を拡大、今回の会合は安倍総理の来伯時にロジスティック改善で合意したために開催されたと説明した。
三井住友銀行の大谷 隆明社長は、「ブラジルに於けるインフラ改善協力」について、輸送インフラの改善ができればブラジルの国内総生産伸び率を押し上げることが可能となるが、主にトラック輸送でコストが益々上昇してきており、また外貨規制やローカルコンテンツなど問題が多く投資を阻害されており、ブラジルではレアル建ての投資を余儀なくされるので為替リスクが大きく、また金利の高いために、2013年のインフラ投資の52%は社会経済開発銀行(BNDES)であり、インフラ投資には外資使用が必要であるために、民間外資銀行を活用できるように規制変更を要請した。
大統領府港湾担当のチアゴ・バーロス事務局次長は、「新港湾令-結果と問題点」について1年前に施行された新港湾法では投資拡大と競争奨励でコスト削減を図り、民間ベースの34投資計画が承認、北部地域の港湾開発の拡大、中西部地域の穀物輸送の新ルートの整備に大型投資が予定されていると説明した。
国家水上輸送庁(Antaq)のアダルベルト・トカルスキ取締役は、「ブラジル水上輸送」について、ブラジルには大きな河川があり、ソリモンエス河、サンフランシスコ河、トカンチンス-アラグアイア河、パラナ-チエテ河などほとんど活用されていないために、2013年は僅かに803万トンの輸送に留まっているが、今後の水上輸送の開発が進めばコスト削減や未開地域での農産物や穀物の増産に結びつくと説明した。
農務省インフラ・ロジスティック担当のカルロス・アルベルト・ヌーネス氏は南部諸州で盛んであった穀物栽培は過去30年間でセラード地域に移動したにも関わらず、サントス港やパラナグア港から輸出しているために非常にコストが高く、欧米に距離的に近い北部地域からの輸送でコストを削減する必要があると説明、今年はパラー州ミリチバ港の輸出は400万トンにとどまると予想されているが、2020年には3,000万トンが予想されていると説明した。
藤井晋介会頭はカクテルの乾杯の音頭の時に、会議所活動として新たに機能強化委員会を設立して10月から5ワーキンググループで精力的に会合を開催してビジネス障害となっているものをピックアップ、また会員数は370社を突破して記録を更新、また日本進出企業も1990年代のピークを超えて記録を更新していることを報告した。
O vice-ministro de Assuntos Internacionais do Ministério da Agricultura, Florestas e Pescas do Japão, Hisao Harihara e o ministro da Agricultura, Pecuária e Abastecimento, Neri Geller, no 1º Diálogo Brasil – Japão sobre Agricultura e Gêneros Alimentícios (Foto: Carlos Silva / MAPA)
O evento contou com um fórum de discussão dos setores público e privado de ambos os países. (Foto: Carlos Silva / MAPA)
“O principal é investir em modais ferroviários e rodoviários do Centro-Oeste do Brasil, que é referência mundial na produção de alimentos”, disse o ministro Neri Geller. (Foto: Carlos Silva / MAPA)
Durante o evento, Geller e Harihara assinaram uma nota de intenções, com o objetivo de ampliar a parceria entre Brasil e Japão na área de agricultura, principalmente na área de infraestrutura e logística. (Foto: Carlos Silva / MAPA)
Neri Geller e Hisao Harihara se cumprimentam após a assinatura da nota de intenções. (Foto: Carlos Silva / MAPA)