今後数か月にわたってブラジルに明るい話題が届く可能性はないものの、政界の新たな合意と国会における財政調整の承認で最悪の事態は回避できそうだ。
ブラジル経済は井戸の底を打ったのだろうか? いつ、回復に向かい始めるのだろうか? 仮にわが国が投資適格を失った場合、為替と経済の成長ペースにどのような打撃を与えるのか、想定される有力なシナリオはどのようなものだろうか? 先行きが不透明な現在の情勢を受け、多くのブラジル人が抱えるこのような疑問に答えるため、銀行とコンサルティング会社が、様々な指数と変数から経済活動と消費活動の動向を予測する統計モデルの開発に努めている。コンサルティング会社テンデンシアスのエコノミスト、ジュアン・ジェンセン氏とチアゴ・クラード氏が生み出したシミュレーターは、我が国の信用格付けが2016年上半期に引き下げられた場合に影響が「どのように」そして「どこまで」及ぶのかを把握できる。状況を、具体的な数字によって観察することが可能なのだ。そこで現状から予測するに、2016年にはドル為替相場が1ドル=4.50レアルに達し、インフレは引き続き高い水準で推移、金利はさらに上昇し、我が国はもう1年、リセッションに見舞われる。
この結果を導き出すために、エコノミストは、最新の計量経済学的分析ツールに頼った。これは、中央銀行の専門家が構築し、同銀行理事会が景気の方向性を分析しブラジル経済基本金利(Selic)の利率を判断するのに使用する、「ベイジアン的アプローチによる確率解析モデル(StochasticAnalyticalModelwithaBayesianApproach)」、つまり略してサンバ(Samba)として知られるシミュレーターを応用したものである。テンデンシアスの経済シミュレーターの場合、連邦政府が2週間前に発表した2018年までの財政目標の見直しのような具体的な状況をもとに、様々な変数をはじき出すことができるモデルになっている。こうして、輸出額の拡大といったポジティブな数字から財政目標の下落といったネガティブなものも含めた経済への様々な影響をシミュレーションできる。実際のところ、こうした変化は既に、経済指標の悪化として反映されている。新たに大きな事件が発生しない場合、2015年末のドル為替相場は、1ドル=3.50レアル近辺になる見込みだ。従来の予測では、年末に想定されるドル為替相場は3.15レアルだった。また2015年の国内総生産(GDP)をシミュレーションすると、予想はこれまで-1.46%だったものが、-1.93%に悪化した。
景気が即座に上向くというシナリオは、存在しない。最善のシナリオは、2015年7月以前の変数、言い換えると、財政目標を見直す以前、そして、大統領と国会の関係が悪化する以前の状態に戻ることである。テンデンシアスの経営パートナー、ジュアン・ジェンセン氏は、「この楽観的なシナリオは、連邦政府とブラジル民主運動党(PMDB)、そして野党が、極めて重要な支出削減と連邦政府の歳入拡大に向けた対策を導入することで合意した場合に限られる」という。このシナリオでは、GDP成長率は2015年に-1.5%を記録するが、2016年に入ると0.8%を達成し、わずかではあるが成長軌道に復帰する。そして2017年には成長率は2.3%に伸びるだろう。インフレは減速して許容範囲内の5.4%にとどまる見込みだ。これは、既に分かっているように、好況に対する高揚感をブラジル人に呼び起こすようなものではないが、エコノミストの予想の中では、これは最も明るい見通しなのだ(第3のシナリオを参照のこと)。
中庸のシナリオは、ブラジルの信用格付が投資適格を維持するものの、公的財政のリバランスに向けて連邦政府が希望するような対策を導入可能なように政治状況が改善しない場合である(第2のシナリオを参照のこと)。このケースでは、2015年のGDP成長率は-1.9%と落ち込みが拡大し、2016年の成長率も0.35%で事実上のゼロ成長だ。ジェンセン氏は、「見通しはこの1か月の間に急速に悪化している。財政調整が遠のき、物価の上昇圧力が2018年まで長期的に高い状態を維持し、GDP成長率に下方修正がさらに加えられるリスクも拡大する」と言う。同氏によると、「投資適格を維持したとしても、低成長率と通貨の切り下げによって、景気の足取りは悪化する」のだ。
ブラジルが投資適格から転落することは、ブラジル経済に深刻な影響を与え、2016年もマイナス成長を繰り返すことになるだろう(第1のシナリオを参照のこと)。ブラジルが2年連続でマイナス成長を記録するのは、1930年の恐慌以降で初めてのことになる。テンデンシアスの予測に従えば、最悪のシナリオにおいて為替相場が4.50レアルへとドル安レアル高が加速することで、輸入品の価格を通してインフレも悪化する。
ブラジルは1996年から現在のものも含めて6度のリセッションを経験しており、クレディ・スイスの経済スタッフがこのほど、これらのデータを分析した。そこから導き出された答えは、今回の不況が回復までに過去のどの不況よりも時間を要し、最長の不況になりそうだというものである。ブラジルが2014年第1四半期の経済水準に復帰するのは、2016年よりも先になる。換言すれば、それは経済危機から回復するのに11四半期が必要になるということだ。過去の5度のリセッションでブラジル経済が回復までに要した期間は、最長のものでも6四半期だった。
「分析した過去の5度のリセッションの内4度は、対外競争力の強化という身を切るショック療法で適応、乗り越えた。わずかに1度のリセッション(2008年)のみ、税制優遇措置や金融緩和といった国内需要の掘り起こしによって克服したのである」と、クレディ・スイスのチーフエコノミスト、ニルソン・テイシェイラはレポートしている。だがこの手法は、公会計を再調整しインフレ統制の必要に迫られている現状を考慮すれば、採用できる可能性が極めて小さな選択肢だ。
公開討論においては、財政リバランスに向けた対策が発揮する効果を疑問視する声が相次いだ。しかし実際のところ、2015年のリセッションの大きな要因がペトロブラスを舞台にした贈収賄スキャンダルだったことを、テンデンシアスの計算は示している。様々なプロジェクトの凍結を受けて同石油公社の投資は2015年に30%という規模で大きく縮小し、その影響は、様々な経済活動に負の相乗効果となって波及した。スキャンダルに関与したとしてラヴァ・ジャット作戦で捜査対象になったゼネコン各社が資金難に陥ったことで、インフラ投資は15%落ち込む見込みだ。これらすべてを合わせると、ラヴァ・ジャット作戦が2015年のGDP成長率に与えた負の影響は、1.9ポイント分にも相当する。別の言い方をするならば、仮にペトロブラスを舞台にした汚職スキャンダルがなければ、リセッションを回避できていたということだ。国民が支払うこのコストは、直接的にも間接的にも、政府が責任を負うべきものである。(2015年8月5日ヴェージャ誌掲載)








