同一の製品を生み出すためにブラジルでは、アメリカの労働者が1人のところ、4人を必要としている。ブラジルとアメリカの労働生産性の格差は、かつてなかった水準まで拡大している。
ブラジルとアメリカの労働生産性の格差が、過去に例のないほど大きく開いている。ある製品を生産する時にアメリカでわずか1人の労働者で達成できるところ、ブラジルでは4人の手を煩わす。両国の労働生産性の格差に注目すると、20年前に工業化に着手した1950年代以降で、最悪の水準だ。さらに悪いことにブラジルを取り巻く状況は悲観的だ。解決すべき無数のボトルネックが存在する上に、歴史的に見て過去に例を見ない不況に見舞われているという事情がある中、短中期的にこの状況を克服しようとする対策が何ら見られないのだ。
ゼツリオ・バルガス財団ブラジル経済研究所(IBRI/FGV)のフェルナンド・ヴェローゾ研究員がまとめたカンファレンスボードによると、2015年末時点で、ブラジル人労働者の生産性が2万9,583ドルだったのに対して、アメリカ人労働者の生産性は11万8,826ドルだった。ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンの言葉を借りれば、「生産性は全てではないが、長期的に見ると、それがほぼ全てだ」。実際のところ、労働生産性はある国が生み出す富、そして、その社会の生活水準を決定する形質に直接的に関係している。
1980年まで、ブラジルの労働生産性は、競合国と現在のように大きな開きはなく、こんにちでは世界最高の労働生産性を誇るアメリカとは、その差を縮小しつつあった。「1930年から1970年にかけてブラジルの労働生産性は、工業化のプロセス、つまり現在の中国が歩んでいるのと同様に、農村の労働者が工場労働者に転換することで容易に引き上げることができた」と、応用経済研究院(Ipea)のフェルナンダ・デ・ネグリ理事は話す。
ブラジルとアメリカの労働生産性が最も近づいたのは1980年で、当時は2人のブラジル人労働者の生産性が、アメリカ人労働者1人弱に等しかった。だがこれ以降、差が縮まりつつあった両国の状況は逆転、ブラジルはこれまで以上に後退し続けている。貿易の自由化によりブラジル企業は生産性をある程度は向上させたが、国際競争に対する準備を整えていなかった様々な企業の破綻という高い代償を支払った。「産業分野では、例えば、1997年まで労働生産性は非常に大きく向上しており、我々はその一部は市場の開放によるものだと受け止めている。貿易の自由化はブラジル企業がより良い製品を生産する後押しをしたが、同時に、より非効率な企業を駆逐した」と、IBRI/FGVの研究者レジス・ボネリ氏は言う。
現在、ブラジル経済は極めて厳しい状況に直面している。熟練度の低い労働者に加えて、高率で複雑な税制、過度に煩雑な官僚制、劣悪なインフラ事情などのいわゆるブラジル・コストと呼ばれる国内企業にのしかかる悪夢が原因となり、製造業は、生産性向上が困難な状況に置かれている。
十分な鉄道網もなく、不安定な高速道路事情によって、工場内で達成した効率の向上は、物流コストによって吸収されてしまう。例えば、11か国に進出している多国籍企業のWEGは、これが意味するところを十分に理解している。「アメリカなら、トラックは1日当たり400km移動できる。ところがブラジルでは、わずか45kmなのだ」と、同社のアンドレー・ルイス・ロドリゲス最高経営責任者(CEO)は言う。所要期間の遅れは事業の進捗の遅れにつながるため、企業に対して罰金が科されるのも同然だと同CEOは強調する。
投資問題
こうした問題の一部は、過去数年にわたって投資が低調だった結果だ。例えば2016年第1四半期の場合、総固定資本形成(GFCF)はGDP比16.9%だったが、中国がほぼ50%、インドが33%なのと比較すると見劣りする。「投資がわずかということは、生産性が低く、雇用も資本もわずかということを意味する。企業が近代的な設備に投資しないのであれば、労働力の熟練化だけでは効率を向上させるのに不十分だ」と、Iediのエコノミスト、ラファエル・ファグンデス・カグニン氏は言う。
同氏によるとその根拠は、国内の高金利(現時点で年利14.25%)だ。これが、生産の増強と効率の改善を後押しするプロジェクトの足かせになる。「生産に振り向けられるべき資金が、金融市場に漏出している」と、同氏は指摘する。
BASFのエドゥアルド・ルデュック農薬事業部上級副社長によると、ブラジルにおける投資の低さは、予測可能性の欠如と、この国の方向性を示す連邦政府の計画不足によるものである。「当社はこれまで多額の投資をしてきたが、より良い条件が整っていれば、さらに多くの資金を投入していたことだろう。他の国々との資金獲得競争で、我々は度々敗北してきた」と言う。
だが、このような対外的な障害だけでなく、国内にも問題がある。そのひとつは、数十年前と同様にビジネスを展開し続ける、多くの企業が抱える時代遅れの経営だ。教育調査研究所(Insper)のコーディネーター、ナエルシオ・メネゼス・フィーリョ氏によると、ブラジルでは経営面で近代的な慣行を採用し企業モデルを向上させる経営者が不足しているのだ。
ブラジルの生産性をめぐる状況は、他の国々と比較した場合、さらに絶望的なものだ。現在、中国でさえ、ブラジルに追いつきそうな勢いだ。2016年に中国の労働者1人が生産する富は、2万5,198ドルに達する見込み。サンパウロ州工業連盟(Fiesp)のジョゼー・リカルド・ロリス理事は、「我が国は年を追う毎に退行しており、これはすなわち、我が国の脱工業化プロセスの結果として生じている」と言う。(2016年7月17日付けエスタード紙)









