実施日:2017年3月9日(木)10時~11時30分
場所:ブラジル財務省 2階 @ブラジリア
参加者:
日本側:日本大使館:星野芳隆公使、小林和昭参事官、伊藤哲郎参事官、ブラジル日本商工会議所:粟屋聡政策対話委員会委員長(双日ブラジル)、芦刈宏司〃副委員長(ブラジル三井物産)、櫻井淳〃副委員長(ブラジル三菱商事)、二宮康史〃副委員長(ジェトロサンパウロ)、柳本安紀〃委員(双日ブラジル)、平田藤義事務局長、吉田章則調査員
ブラジル側:MOF:エリバルド・ゴメス国際局次長(経済金融機関・国際協力担当)、ロナルド・メジナ連邦歳入局次長(税関・国際関係担当)、ジオゴ・コエーリョ大臣官房国際担当補佐官
会合概要:
(星野公使)佐藤大使とエステバン国際局長が会合でカマラの提言書(AGIR)について述べており、また財務省はブラジル経済の核であるため、本日は粟屋政策対話委員長一行にお越し頂き課税と労働に関する提言を発表頂くための会合を設定。
(粟屋委員長)カマラでは、ブラジルコストを軽減、産業競争力強化し、海外投資を増加させ日伯間のビジネス機会を増やす為に、政策対話委員会を設立、その下に5つのWGを構成。合計48項目の提言項目を取りまとめ、初めはその中から5つの優先項目を選び、ブラジル政府との政策対話活動を行ない成果も出てきている。今後は、課税と労働の本丸項目に関して政策対話をしていきたい。課税分野の提言内容には、ICMS税の抜本的改革、OECDルールに準拠した移転価格税制、税制の簡素化と納税者の保護などがある。また、労働分野では、現在国会に提案されている労働改正案を高く評価。また雇用を確保する為にもパフォーマンスに沿った給料の交渉ができるような改善も必要だと訴えている。
(平田事務局長)税の種類が50-60種類あると言われており複雑だ。ICMS税は税率が州毎に決められ州間Guerra Fiscal(税金戦争)を生み出しており、課題が大きい。また外資企業の進出を妨げているのは移転価格税制であると考える。というのもOECDガイドラインに準拠していない。2009年-2010年には、法令改正の議論をしたこともあったが国際標準ではないこと、APA(事前承認制度)もできないこと、想定マージン率が高いことなど課題は尽きない。2007年に、当時のマンテガ大臣に提言書を送ったが何の反応も得られなかった。その後、財務省の収税局からの要請もあって日本企業にアンケートをとり実態のマージン率を調査報告、実態のマージンは5%、10%と極めて小さかった。デジカメや光学機器もまだ40%となっており、改善が十分ではない。年末に発表された労働法改正法案について話すと、組合との交渉ができることで、毎年3-4百万件提出されているといわれている労働裁判が減少することを期待している。
(エリバルド・ゴメス氏)日本に非常に好意をもっているが、日伯経済関係は控えめのように感じており他国企業はもっとアグレッシブである。18年間の国際局勤務で、初めて日本のカマラミッションが訪問し具体的な提案をしてくれている。また労働法や税制がビジネス環境に与える影響についても認識はしており、政府として解決に向けて努力をしているが、民主主義国家でもあり、国会を通して国民の意見を反映するプロセス等あり時間がかかる。財務省としては、企業の経理業務を軽減する税制の簡素化に力を入れている。財務省として誇りに思っているのはIRPF徴税システム。サイトにデータを入力するだけで税務申告できるシステムは他国にはない。これをいい例に、他の複雑な課税の徴税に関しても簡素化していきたい。ICMS税は州毎に違い、問題解決への進展は遅いであろうが、PIS税については、税収インパクトも小さく他の税より簡潔なこともあり改革が進んでいる。PIS税の改革を筆頭に学び改善をしながら、他税の簡素化を進めていきたい。
(ロナルド・メジナ氏)RFBは、技術面から行政面まで簡素化に向けて努力をしており、IRPFと同じように、SPEDやNF-Eがある。より多くの会計書類・データのデジタル化を進めることで、行政管理の簡素化が進み、また納税者の法的保護が守られ、政府側と納税者側両方の裨益に繋がると考える。その他の税に関しても他政府機関とも協力しながら簡素化を進めている。多数の税制改正案が国会に提案されるが、政治的な混乱もあり、審議から外れることがある。年金改革、労働改革、税制改革が国会で議論となるが、今年中に税制改革までを進展させることは難しいとアナリストは見ている。税の簡素化と納税者の法的保護は我々の役目であり、PIS税やCOFINS税等多くの税の存在、累積課税と非累積課税の混在、クレジット残などは、我々徴税する側にとっても地獄だ。多くの企業が困惑していることも認識しており、納税者も徴税側も互いに不満が溜まっている環境は望ましくない。移転価格税制の課題は我々も認識はしている。ブラジル特有の制度からOECDモデルに移行することはかなりラディカルな変革になる。もうひとつの課題として、RFBとして今まで企業と事前合意をしたことがないということだ。RFBの文化というべきか、事前に交渉をすることは基本的に認められておらずそういう意味でもラディカルな変更は難しい。この会合のように日本側からの要望を聞くのは重要で、その改善策を考え出すのも政府の役目である。先ずは何が問題であるかを協議し、小さな改善だとしても実現性のあるものから考えていきたい。
(平田)移転価格税制の改善は海外投資家の注目を引くことが目的。OECDルールに準拠していれば、日本企業もわかりやすいしブラジルに進出しやすい。ブラジルの制度は特有で非常にわかり難いとの意見がある。日本企業は中国に27000社、タイには2000数百社、マレーシアにも2000社位進出している。それに対しブラジルには700社(在伯大使館情報)である。OECDルールに準拠しているメキシコなどは進出企業が近年急激に増加しており900社を越えてきている。
(エリバルド氏)これは、大使館の方へのメッセージかと思うが、日本企業の進出が少ないのはインフラ投資が要因だと感じている。ブラジル政府のアジェンダにインフラ整備とインフラ投資があり、日本の支援や進出に期待したい。
(粟屋)ブラジル政府はPPI案件を打ち出し改善が見られる。空港案件で為替リスク保護メカニズムを導入している。インフラ事業は長期投資だ。またBNDESの関与も減少していることもあり、海外投資家から資金を調達する必要性がでてきている。その際に問題視されるのが為替リスクだ。日本企業のインフラ事業への進出も大事と理解した。
(ジオゴ・コエーリョ氏)このような対話の場を通して議論することが大切であり今後も継続できるよう望む。新政府になって間もないが、現政府は構造改革に飢えている。世銀総裁との会合でDoing Business Indexのランキングを上げる議論がなされたが、それは今日の提言にあるような改革や制度整備を積み重ねることを意味する。それには政治支援が必要だし国会における調整なども必要になる。財務省としては要望はよく理解しており支援していきたい。
(粟屋)委員会のレベルになるのか、テーマを絞ってワーキンググループまで落としたレベルになるのか、まだわからないが今後も継続して、政策対話を継続していくことにする。
開会の挨拶(星野公使)
財務省担当官(左から、ゴメス氏、コエーリョ氏、メジナ氏)
会場の様子
全体写真(fotos: Akinori Yoshida/CCIJB)